国家
2つの街づくりが一段落ついた。住居、商業、第一産業がきちんと完成した。基盤は作られたと言っていい。住居はドワーフが来たことで建設速度が上がり、集合住宅と化していた施設から個別の家を与えられるようになった。噂が商人をこの地に運び、店を開く者も現れた。そして第一産業という名のダンジョンの運営も順調だ。農業をやっている住民もいるにはいるが、生産効率はそんなによくはない。
ダンジョンマスターとしての生を受けて半年。ラビリンスアース入口の街はもう500人以上の人口を抱え、もう1つの街も100人を超えたところだ。そろそろ街ではなく国として管理をしていかなければならないだろう。
2つの街を繋ぐ行路はペガサス馬車が鍵となっている逆に言えばこの区間はセーフティーゾーンではないので本来なら危険地帯ではあるが、野生のモンスターなんて存在しないため問題はない。
「もう国づくりに取り掛かる時期かもな」
「そうですね。治安維持も王国兵の少なさが相まって、商人同士のいざこざも増えてきていますし」
「本格的に王様開始か………はあ」
「またクレアを想っているのですか?」
「い、いや想ってねえから」
「すぐわかる嘘をつかないでください。さすがにあれから3ヶ月も連絡がないというのにすぐ思い出すではありませんか」
「わいのテレパシー機能どうなってるん?」
「ひとつの成長もありませんね。ダダ漏れですよ」
相変わらずワイズちゃんに嘘つけないなあ。というか最近紅茶をせびってこないと思ったらあのハーブティーは確か王都産のものじゃなかったか?交易ルートあったっけか?
「最近出店したところで購入しました」
「へー、俺が思い出せないってことはあれだな。記憶のキャパシティー超えてるわ」
「この程度の規模の街ですら1人で管理できないとは新世界の神には到底なれそうにありませんね。…どうしました?」
そいつは俺に効く。
「おーい、邪魔するぞー」
「なんだロイドか、忙しいからパス」
「堂々と嘘つくなよ」
「無断で入って来やがった。せっかくワイズちゃんとイチャイチャしてたのに」
してません、と否定してワイズちゃんが読書に戻る。
「何かあったのか?」
「いや、一応伝えておこうと思ってな。勇者が帰国したとさ」
「マジで3ヶ月も鍛えてたのかよ」
「疑ってたのか?」
「まあ多少は、そんなに時間かかるものなんだな」
「普通レベルはそう簡単に上がらないからな。むしろ3ヶ月で修行を終えるとか化け物側だぞ。勇者の成長速度はやっぱりおかしいぜ。お前もだけど」
「俺は勇者じゃねえぞ」
「魔王派では最速クラスじゃね?」
「俺は結局そっち側なんだな」
半年。その期間特にいい経験値効率をするようなことはしていなかった。だが、やはり物量というものがある。いくらしょぼい経験値だろうと塵も積もれば山となるわけで、俺のレベルは40を越えた。もうMPは3200。絶対に飢え死にしない状態には慣れた。俺の当初の目標的にはここであとはダンジョンを成長させる必要もないのだが、やはり不確定分子が存在する。
教会、勇者、魔王。すべて敵の可能性がある。教会は特にダンジョンを敵視している。勇者はグレーだが、敵に回れば一瞬で劣勢に立たされ最悪は死ぬ。教会とコラボすれば敵側だ。魔王は俺自身が人間に危害を加えることのないダンジョンマスターであるから裏切り者として処される可能性がある。四面楚歌やんけ。味方になりそうなのは出口があるノースランド王国くらいなものだが、仲のよかった姫君と音信不通の状況。まあそれもすぐに改善されるかもしれない。
以上の理由から俺はさらにこのダンジョンを育てていく必要がある。俺の安全のためにだ。
「それで話を戻すが、姫様が王都に戻る前にこっちに寄るかと思ってたんだが、どうやら王都に直行しているらしいぞ」
「ふーん?顔くらい出せし」
「そういう間柄なんだな」
「まあ、多少なりとも」
「まだ結婚は先らしいぜ」
別にそんなこと聞いてないだろ。
「顔に書いてあるんだよ。さっさと告白しねえと取られちまうぞ」
ロイドは言いたい放題言って帰って言った。
「どういうことだし」
「はあ…」
今はそれよりもやることがある。このラビリンスアースにもっとも必要なことだ。
「国を作るぞワイズちゃん」
「はいはい、それで具体的にどうするのですか?」
「さあ?」
「………」
「さ、最初は人出だよな。うん。公務員を雇おう」
「国庫は?」
「そんなのないが?」
「アホですね」
「金を貯める必要があるのか」
「税金を課しましょう」
税金か。地球では働いたこともないのだけれど。だいたい半分くらいだっけか?そんなにきつくしないと国の運営って成り立たないものなのかね?
とりあえず最初は安めにしよう。そして国営の物も作るべきだな。空いている共同住宅を国営にして移住民が家を持つまでは家賃を納めてもらうとか。あとは所得税、それに関税もありなのかな。うーん…。
「なんか税金ってめんどくね?」
「でしたら、はい」
「はいじゃないが」
ワイズちゃんに見せられたカタログを見る。
「なにこの猿でもわかる税金制度って?」
「猿にも劣るハルト様には難しかったですか?」
「久しぶりに辛辣ぅ!?」
読めばいいんだろ読めば!ちくせう!




