2つ目の街
ラビリンスアース。俺のダンジョンに帰って来たわけだが、この2週間ほど留守にしたおかげで発展が滞っていて、さらには開拓の戦力が大きく損失し、子ども中心の開拓村みたいになってしまっていた。ギルド所属の冒険者といっても若い連中ばかりで、年食った連中は皆、王国兵として徴集される。
「いくらなんでもティーンズ中心で開拓を進めるのは難儀だなあ」
「ハルト様もティーンズでしょうに」
「そういやそうだった」
子ども大人は無視してもとにかく人手が足りていない。もともとアイアンスライムのダンジョンを10階層という比較的手応えのある大きさにしていまっているから、鉄鉱石の原産量は担保されてはいたが、そちらに人員を割き続ければ、他が進まなくなってしまう。少人数で進められることがあればいいのだがな。とはいえ食い扶持が減っているから収支は黒字にはなりそうだ。それに運搬に当てる人数もだいぶ減らせることができるだろう。
「そういやレベルがあがってカタログで何か購入できないかな?」
「それよりゴールデンスライムを補充した方がいいのでは?」
「やっべ」
高難易度ダンジョンのゴールデンスライムが最近出会えなくなっていると王国兵たちに噂が立っていたらしい。とにかくそっちを補充して、残りのMPで何かしないとな。
「運搬とか楽になればいいんだがな…。だとすると馬車か?荷車を王国兵が押していたが、野生生物が少ないなら牧場で馬育ててみるのもいいのかもしれない」
馬刺しとか食べたことないけど、一応食料にもなりそうだし。
「時間がかかりますよ」
「だよなあ…。まてよ?野生馬っているのか?」
「いるかもしれませんが懐くかは定かではありませんよ」
「そっちからも考えてみるか」
カタログからは野生生物は基本的に買えないんだよな。モンスターは買えるんだけど。増やしたくないし。
「おとなし目の力持ちなモンスターとかどうですか?」
「結局モンスターだろ?」
「偏見は良くないですよ」
「そんな都合のいいモンスターなんているのかよ」
「ペガサスとかどうですか?」
「ペガサスか…」
ペガサス:必要MP500。
「高いけど、絶妙に買えないこともないなあ。でも外に出すにも戸惑いそうなんだがな。…あ、ノームはどうだ?」
「ダメですね。ノームは金銀にがめついので運搬には向かないかと」
「モンスターに守銭奴とかいるのかよ」
「良さげなのはレプラコーンがいますが、彼らはノームの対極に位置しますので運搬物を取ったりはしませんが非力です」
「ことごとく噛み合わないなあ…、やっぱり野生馬捕まえた方が早いんじゃね?」
「時間かかりますよ」
「そうなんだけど…」
ペガサスか…、聞こえはいいよな。前世じゃ結構神聖なイメージがあるが、こっちじゃモンスター扱い。モンスターを使うのはかなり抵抗があるからなあ。でも人出が圧倒的に足りないしなあ…。
うーん…。
「悩んでますね。あまり舟漕ぎしてると椅子から転げ落ちますよ」
「どうしたもんかな」
「聞こえてないですね」
やはりペガサスか、一度モンスター牧場でもやってみてから判断するのもアリかもしれない。クレア王女にバレたらぶちギレられそうだがな。
「ハルトはいるか!?」
「へ!?ぐはっ!?」
痛え…。
突然背後から大声で呼ばれたからバランス崩して後頭部を強打した。
「大丈夫か?」
「…大丈夫に見えるか?」
「俺のせいではないと思うぞ」
「…それで、何の用ですか?」
「いやー、王国兵がいなくなって採掘量はあまり減っていないんだな」
「耳が早いようで」
「いや、ひと目見りゃわかるだろ」
突然の来客してきた商人のロイドだが、どうやら王国兵がいなくなった異変にさっそく打算的な思考が湧いて来たのか定かではないが、ろくなことを考えていなさそうではある。
「終焉の街に鉄鉱石を卸すのは俺がやってもいいのか?」
「ああ、むしろこっちから頼むわ」
「それで、これからここはどうなるんだ?」
「とりあえず、勇者一行が最難関ダンジョンに挑むまではゆっくりするさ」
「なるほどな、チャンスが来てるのにピンチも来てるのか」
察しが早くて助かる。
俺は表立って終焉の街に干渉できない状況だ。もし干渉すれば勇者と接触することになり、そこに教会が関わってくるとこのダンジョンの存続の危機、並びに俺の命の危機ということになりかねない。
「だが、今終焉の街には、境界の街からの人の流入が起きてるぞ」
「もう来てたか」
「たったひと月で境界の街は一気に苦境に立たされているからな」
「じゃあ、帰りには人の運搬を頼むわ」
「何かするのか?」
「姫様に怒られるかもしれないが、手をこまぬくよりは失敗しても取り返しが効くならやろうかなと」
「第一王女を怒らせるのかよ。俺は退散していいか?」
「お前も共犯者だよ、けっけっけ」
「悪魔かよ」
「ダンジョンマスター様だよ」
「あ、はい」
モンスターの野生化には最新の注意を払わないとな。
ロイドが退室して、冒険者諸君に話をつけに行き、ギルドマスターのエリスと交渉を開始したのを部屋から眺めながら、次の一手を考える。
「何人くらいいるのでしょうね?終焉の街に来ている人は」
「さあな、だが、鉱山街出身ならそれらしき場所を用意しようと思ってる」
「2つ目ですか?」
「ああ、まだこの入り口の駐屯地の発展もままならないが、2つ目の街を作る立地は確保してあるし、街が2つある方が経済は回ると思うからな」
「少しずつ国になりつつありますね。うまくいけばですが」
国、ねえ。まだ実感はないんだけどなあ。
「そうすると街同士の繋がりはペガサスを主に使うと?」
「ああ、俺が頭良ければ電車とか使えたかもしれないけどな」
「MPが無限ならできますよ」
「確かに、でも素材から電車作って走らせれば今のMP量でもできるだろう?」
「そうですね。それ相応の知識があれば」
「ない」
「知ってますよ」
「なら、俺の力量の範疇でやれることを考えないとな」
ワイズちゃんがポカンとした顔をしている。
「ひょっとしてハルト様の偽物ですか?」
「本物だよ!ハルトくんですよ!俺はいたって真面目だから!」
「嘘おっしゃい」
「むしろどんな見方されてんだ!?」




