謁見
謁見の間。
あれだな。謁見の前にギャグかましているせいで、緊張感とか無縁の存在に成り果てたな。王様と謁見の間で向かい合っているのに無言の時間が流れてしまっている。なにこれ気まずい。
「えー、ごほん。ハルト殿はクレアとは婚姻を結んでいないということでよろしいか?」
「よろしくありませんわ」
「えー…」
王様困ってんぞ。カイト王子曰く、王はクレア王女と俺の婚姻については難色を示していたらしいし、俺が婚姻を断っているなら渡りに船のはずだが、どうやら親子内の上下関係は王はクレア王女よりも下らしい。頑固な王女に頭を悩ませているし、これはもはや王家の問題というよりはただの家族内の喧嘩みたいなものだ。他所でやってくれませんかね?大臣っぽい人たちも互いに目を合わせて困惑しているし。
「前に説明した通りにハルト様は特別な方なのですよ」
公にはダンマスってことバラさない方針なのね。終焉の街の貢献とかこれから得られる利益やらを王に必死にクレア王女は伝えている。
「では、境界の街はどうなのだ?」
その切り返しがある。
俺が自分のダンジョンを発展させつ都合で境界の街が終焉の街に卸していた鉄鉱石の売買ルートを潰している。それに挑発気味に冒険者を利用して境界の街に金を売りつけているからな。俺の目論見はバレているみたいだな。
人材が足りないのなら、1つ街を吸収する。
聞こえ悪くいうなら1つの街を潰す必要があった。
ノースランドには有り余るような人材がない。中世ヨーロッパのような世界観なら完全失業率は5%を切ることはないと思っていたが、それは人類が生態系の頂点ならという話で、モンスターが世界の半分以上を占有しているこの世界では人材が余っていなかった。だから人材をかき集めるためには1つの街の人数分を吸収する必要があった。そして鉱山街は必要不可欠だが、立地上なかなか発展しない国のお荷物状況だった。
「境界の街は彼の土地に吸収されます」
「それはある意味では我が国への…、むぅ」
侵略と言いたいのだろう。
確かに人材を取られ、その場所は正確にはノースランドの土地ではない場所である。一応ダンジョンの利権は国が確保しているとはいえ、ダンジョンの正確な所有権は俺にあるから、不満が一切出ないというわけではない。境界の街の人数も別に少ないわけでもないし。
「うーん…」
「王?」
王の隣に控える宰相が言葉に詰まる王に声をかけるが、なんといえばいいのか王も困惑している。ダンジョンマスターという言葉を使わずにかつ、俺という謎の人物の説明を求められているようで苦悩している。
「彼のことをご存知のようですが、我々にも教えてはいただけないのでしょうか?」
「…我が国に利する人物であるとしか答えられん」
その説明でいいのか?
「それが本当であれば姫との婚姻はありなのでは?」
その説明は間違いだったぞ。
宰相が変なこと言い始めたじゃないか。
「私はクレア王女とは互いに利があっただけです」
「私には婚姻という利がありましたね」
「ノースランドの発展はどこいったし…」
クレア王女はノースランドの発展のため、俺は自分の身を守るため。なんという利己的な考え方なんでしょ。でもクレア王女が婚姻を利己的な考えで言ってるとしたらイーブンだな。
あれ?それなら俺はクレア王女と結婚しなければいかんのか?
いや、俺の要望1つに対してクレア王女は2つ言ってるからな。やはり婚姻は受けなくていいのさ。
「クレアの婚姻はなしだ。ウェストランドのこともある。まずはそちらと折り合いをつけなければならん」
「お父様!ハルト様がもし他国の姫と婚姻なされたら、ノースランドはとんでもない利益の損失になりますわよ!?」
「しばらくはハルト殿も結婚は考えていないだろうに」
王様のいう通りまったく考えていないけどな。第一にダンジョンの入り口はノースランドにあるわけで、他国と親密になることは結構難しい。クレア王女には時間がないというが、今回の一件でウェストランドの王様との婚姻も延期になるだろう。時間は取れるはずだ。姫様の暴走も収まってほしい。
「わかりました…」
「それで、ハルト殿は何か要望があって来たのでは?」
王様に話を振られる。結構フランクな謁見なんだな。
「話したいことは境界の街のことでしたが、どうやら把握されているようなので、一言お詫びを」
「良い、クレアの考えもあるのだろう?」
「ですが、決定したのは私ですので」
「それは意に返さん。だが、彼らへの配慮は国からは行わなんぞ」
「承知しております。すべて引き受けるつもりですので」
「頼むぞ。それと他にも要望か何かがあるのだろう?」
「外交ルートを確保したく」
「むぅ、それはまだならん」
ダメか。王都への輸出ルートは確保できるし、今回の一件でスムーズにはいくだろうが、小出しにするより、自分の主張を1番最初にぶつけるのは交渉としてはやはり失敗だったか。
「まずは王都で頼む」
「それは重々承知しておりますが」
「だろうな…、それで、あと何手ほど考えておる?」
「3つほど」
「国境を閉鎖した方が良いか?」
「それは不満が出るのでは?」
「それもそうだな」
俺が外交ルートの確保に躍起になっているのは王様としても都合が悪いだろう。最終的には俺や俺に関するダンジョンの所有権を餌に多国間で睨み合う構造を取っておきたかったが、それはノースランドの王様としては面白くはない。もちろん今の言葉で俺の狙いにクレア王女も気づいて睨んでくる。
「お父様、やはり私が婚姻すべきかと」
「やむなしかもしれん」
薮突いた気がしてきたわ。
欲を出すものじゃないなあ…。
「ハルト様、後で覚えてなさい」
「三歩歩けば忘れるトリ頭なのでセーフですね」
「叩けば直るのでは?」
そんな昔の家電製品じゃないんだから、ぶん殴られる前に逃げよ。
「なるほど、大方のことは理解できました」
クレア王女は王様とカイト王子以外に俺の事情を知るものはいないと言っていた。だが、なんとなくわかる。王様とは対等に話せたが、あの人には敵わない。クレア王女とそっくりだからすぐにわかった。あの人が王妃だろう。
「この場にいる者に極力情報を流さないのはいいでしょう。ですが、私の推測が正しければ、私個人、ハルト様に興味が湧きました」
超怖いんですけど!?




