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ダンジョンの国の王様  作者: てるいち
街づくり
31/79

初めてのダンジョン

「そういえばハルトが他人のダンジョンに入るのは初めてだったな」

「ですね。正直ダンジョンと言われてもイメージがわかないですよ」

「少なくともお前さんが作った二つのダンジョンのうち、一般的なダンジョンはアイアンスライムの出現する塔の方だな」

「あ、やっぱりそっちか」


 ギミック満載のトラップだらけで殺意が高いダンジョンってのは稀なのね。どちらかといえばRPGのようなダンジョンが主流と。


「でも勇者とかアリアさんはもうその次元じゃないし、砦にいた兵たちも相当な手練れですよね?どちらかといえば高難易度のダンジョンをクリアしていくのかと思っていましたが」

「そうだな。今から潜るダンジョンも難しくはないだろう。ただ、もしかするとハルトのパワーアップも兼ねられるかもしれない」


 パワーアップってステータス上昇の実だったっけ?


「かなり貴重なドロップアイテムではあるが、ハルトを強くしておかないと私たちにとっても不利益だからな」

「そーっすか…」


 なんか凹むわ。


「種族柄だから仕方ないだろうがな。もちろんアースラビリンスを鉄壁のダンジョンにするならハルト自身を強くする必要はないがな」

「それは俺がやりたいことと違いますからね」


 ずっと引きこもってなんのために生きていくのかわからないダンジョンマスターなんてやっていられない。生きていくなら有意義に優雅に暮らしたいものだ。そのために必要なのは経済の循環。そしてそれらすべてから少しずつ税を集める王様というわけだな。

 はっ!?


「いや、王様にはならないぞ」

「いきなりなんだ?クレア様と結婚するのか?」

「その手には乗らん!」


 だがなあ、楽して税金で贅沢三昧したいってのは俺の行動原理の根底に存在しているわけで、そのために今苦労しているわけだしなあ…。


「うーん…」

「くだらないことで悩んでいますね」

「そもそもダンジョンマスターになった時点で俺の人生敗北だったのでは?」

「今更気付きますか」

「辛辣っ!?」


 というか、この3人で大丈夫かいな?俺は戦力0としてワイズちゃんも大して強くはないだろ。いくら俺と違って成長するとはいえ、最近レベル16になったばかりやぞ。


「種族チュートリアル妖精って成長率が凄まじく高いんですよ。全種族最強です」

「へー、それで今どれくらい?」

「人間換算ではレベル50ほどの力量はあるかと」

「3倍はずるやん」


 俺の周りだけめちゃくちゃ強いんだが!?


「っと、着いたな。ここだ」

「ただの洞窟に見えますな」

「お前のダンジョンもそうだろうに」


 そういやそうだった。


「入るぞ」

「心の準備が!」

「そんなものは必要ない」

「酷いっ!?」


 首根っこを掴まれながらダンジョンに踏み入る。というか連れ込まれる。中は薄暗く、明かりもないような洞窟だ。


「暗視ゴーグル的なやついる?」

「一応松明が焚かれていますよ」

「あ、ほんとだ。って間隔遠すぎて基本的に真っ暗やんけ」

「普通のダンジョンはこうですから」


 明かりつけてる俺ってもしやかなり良心的なダンジョンマスターなのでは?


「殺意ばかり詰め込んだダンジョン作っておいてよく言いますね」

「口には出していません!テレパシーです!」

「はやくコントロールしてください。うるさいんですよ」


 成長しないのでね。

 げしげしとご褒美の蹴りをくらいながら中を進んでいく。モンスターの影らしきものは一切見えない。


「モンスター出てこないですね」

「スタンピードを起こしているからな。まだモンスターの数が回復していないのだろう。さっさとダンジョンマスターのところまで行くぞ」

「ダンジョン壊すので?」

「ああ、スタンピードを起こしたダンジョンは危険性が高いだろうからな。国の規定で即刻破壊を推奨している」


 世界の人口が少ないから各地のダンジョンすべてに管理が行き届かないのだろうな。それにしても初めて会う他のダンジョンマスターが倒されるところを目にするのか。なんか複雑。


「罠も特にない。モンスター主流のダンジョンだな」

「それも増えすぎて排出してスタンピードになったからもぬけの殻と」

「そうなるだろうな」


 おそらく最深部にもう着いてしまった。重厚な扉に遮られた先にダンジョンマスターがいるのだろう。


「なんかデジャブ」

「行くぞ」


 重厚な扉が開かれる。

 中は巨大な空間になっており、中央に大剣を背負う巨大な影が座っていた。


「ハルト様とえらい違いですね」

「言わなくていいから!?ショックなんですけど!?管制室期待したんですけど!?」


 おかしいだろ。なんだあの屈強そうな見た目は、ダンジョンマスターって成長しないんじゃないの!?


「あれはキングエイプだな」

「ゴリラっぽいけど違うんだな」

「ゴリラは動物だ。奴は魔物だ」


 違いがわかりません。強いて言うなら防具着込んで大剣をもっているくらいだな。

 ははは、全然違うやん。

 っていうか人間じゃないんだな…。


「ところでお目当のステータス上昇の実って?」

「ダンジョンマスターなら高確率でドロップする」


 初耳です。


「強いな。ワイズだと苦戦するから私が行こう」

「お願いします」


 ワイズちゃんが傷つくのは許せんからな。アリアさん頼みますぞ。


「参る!」


 グオォォォ!!


 キングエイプが立ち上がり、雄叫びをあげると周囲に小さな影が複数現れる。


「ちっ、少しはモンスターが復活していたか」

「ちっちゃいお猿さんとか出るかと思ったらゴブリンとかコボルトだな」

「ワイズ、ハルトは頼むぞ!」


 そういってアリアさんはキングエイプに突撃するが、キングエイプはアリアさんの力量を理解しているのか、仲間を盾にアリアさんの一撃を掻い潜り、こちらに向かって剣を投擲してきた。


「別に俺たちバックじゃねえから!?」


 飛んでくる剣をなんとか躱す。

 魔法使いとか弓使いじゃないからね!?後衛職から叩くのは基本だけども!

 なんか死なばもろとも感でこっちに突っ込んできやがる!?


「死を察していますね」

「アリアさんが強すぎたせいやろ!?」


 先行部隊のゴブリンとコボルトたち4匹ほどをワイズちゃんが倒し、急速に近づいてくるキングエイプのもう1つの剣を受け止める。チェーンソーの刃の動きが止まる。


「くっ!?重いですね…」

「グアァァァ!?」


 一瞬でも止まればアリアさんの追撃が入り、背中に剣が突き刺さるが、キングエイプはまだ死んではいない。最後の一撃を左手に仕込まれた短剣を抜くのが見えたためか、俺は勝手に体が動いた。


「グッ!?アァ…」

「はあ、はあ、はあ…」


 一回攻撃するだけ、戦闘時間にして10秒もない。俺は脱力していた。実力に不相応な装備の剣をキングエイプの頭蓋に突き刺したまま、抜くことすらままならない。


「はあ…、っ……。ふぅ、俺は…、弱いな…」

「いえ、助かりました。ありがとうございます」


 ワイズちゃんが剣を抜いてくれた。


「すまない。手間取ってしまった」

「大丈夫ですよ」

「力量を見誤った。まさか100を超えていたとは思わなかった。だが、ハルトがラストアタックを決めたからな。これなら当然ドロップ品はハルトのものだ。有無は言わん」


 キングエイプの体が発光し、光に包まれ小さくなっていく。そしてその光が手のひらに乗るサイズまで小さくなると俺の方に向かい、そして俺の体に入り込んできた。


「え?」

「………これは?」


 俺はもちろん、ワイズちゃんもアリアさんも何が起きたのかわからなかった。とにかく俺の中にキングエイプ、いや、他のダンジョンマスターの何かが入り込んできたのは確かだろう。


「…どういうことだ?」

「私のデータにもありません」


 ワイズちゃんがわからないとなると相当だな。


「もしかしたらパワーアップしたかも?」

「ですが、その確認はダンジョンコアでしかできませんね」

「そうだったな。あ、ドロップ品も落ちているぞ」


 これは、ステータスアップの実だろうか?


「力の実だな。食べればレベル1つ分の力の上昇が見込める。私もすでに30ほどは食べている」


 レベル以外のところでも強いんですね。小さいからぱくっと一口で食べてみるが、いまいち変化がない。味もほとんどしなかったし。


「うーん…」

「変化はわからないものだ。戻った時に確認してみよう」

「そうですね」

「それにしても…」


 先ほどの不可解な現象にアリアさんがまたしても考え込む。


「ダンジョンのことはもちろん、解明は進んで入るが、完璧に理解できているわけではない。それはもちろんダンジョンマスターについてもだ。どういった存在がダンジョンマスターに選ばれるのかとかも事実わかっていない。私もダンジョンマスターで人間のハルトは初めて見るしな。基本的には魔物がダンジョンマスターになる」


 俺も異世界の人間だから例の範疇には漏れるが、人間のダンジョンマスターの最初に事例と言われても首を傾げてしまうだろうな。


「そして、ダンジョンマスターがダンジョンマスターを倒したら、何が起こるかなんてのは一切わかっていない。そんなこと冷静に考えれば今が初めての現象かもしれないからな。私自身もハルトがダンジョンマスターだということも忘れていたくらいだ」

「一応ダンマスです」

「ああ、そうだな」


 俺がダンジョンマスターを倒すことにもしかしたら何か意味があるのかもしれない。

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