カタログ
管制室の椅子柔らかいな、いい素材でできているが、なんの素材かわからん。心地良い椅子でぐたーっとしながらワイズちゃんから渡されたカタログを眺める。ダンジョンでアイテムを購入できるとはいうが、カタログにはいろいろなものがあるな。最初のページが食事である。まさかね?
「ワイズちゃん、これご飯?」
「はい、ご飯ですね」
「これ以外のご飯は?」
「採集してくるのはどうでしょう?」
「自給自足かよ」
「そうですよ」
「ダンジョンマスターっていうか、サバイバル始まってる!?」
「ハルト様のMPだと、おにぎりセットが精一杯ですね」
「おにぎりかよ。まあ、食べられるだけマシだが、おかずも欲しいなあ」
「1食分ですが、交換しますか?」
ん?
1食分?
「はい、ハルト様のMPだと1日でおにぎりセット1食分です」
「…死ねと?」
「人が生きていくために必要な衣食住的には食以外あるのでイージーモードですよ」
「現代日本人にはハードモードだわ!」
おにぎりなんか買えねえ。カタログを見るにおにぎりセットは80MPで俺はそれをちょうど1つ分、つまり80MPを持っているということだ。他に買えるコストパフォーマンスのいいものはないのか。
なんか安い項目が大量に並んである項目を発見した。
「分子?」
「素材の項目ですね」
「水平リーベ僕の船名前ある〜」
で、これ何に使うんだ。いや、使えるものだというのはわかる。普通に水素とか酸素とか渡されても、火つけて水にすればいいのか。量が量なら火だるまになるわ。
「俺、化学の授業寝てたからわからん」
「クソ雑魚ナメクジですね」
「でも、これがすごく優良な素材だってことはわかる!どう使うか知らんけど!」
「宝の持ち腐れですね」
「ワイズちゃん!」
「ダメです」
「なんで!?まだ何も言ってないじゃないか!」
「私の知識でお伝えできるのはダンジョンに関する事柄だけでございます」
「制約みたいなものがあるのか」
「はい」
ワイズちゃんを頼りにはできないか。カタログをめくれば化学の教科書なんてあるが、必要MPが1万だとさ。レベル上げればおそらくMPは増えるだろうが、先が長すぎるぞ。今日の飯すら満足に食えないのにどうしろというのだ。
「考えても仕方ないか」
「何をなさるので?」
「ひとまず食えそうなもの探してくるわ」
「探索ですね」
「なんでダンジョンマスターが自分のダンジョン探索するねん…」
ダンジョンの外というか、ダンジョン内にある建物の外に出てみれば、太陽光が眩しい。まじ謎だな。
「何度見てもダンジョンの中とは思えん」
「ほらほら、ぼさっとしていないで行きますよ」
「ロリの尻に敷かれるのもたまらないぜ」
「死にたいの?」
「何も言っていないであります!」
山岳方面は遠いが、森の中にはあまり食べられそうなものがなく、モニターで見たとき果物の木みたいなものを見つけたからその方面に向かう。
ワイズちゃんは食べ物いるのかな?
「私は食べなくても大丈夫ですが、嗜好品は欲しいですね」
「ワイズちゃんもMPで購入するのか?」
「私はナビゲーションシステムなのでダンジョンマスターの能力は持ち合わせておりません」
「となると、俺のMP目当て」
「そうですね」
「何も買えないけど?」
「知ってますよ」
「ええー、買ってあげようかな、どうしようかな?」
「もしも紅茶等をいただけるなら、それなりのお礼はしますよ?」
「是非にわたくしめのMPをご利用くださいませ」
「気持ち悪いです。死んでください」
アホな会話を繰り広げていたが、ふと我に帰る。目的地遠くね?
「遠いですね」
「片道だけで1日くらいかかりそうなんだが」
「ならテレポートで向かいますか?」
「何それ」
「テレポートです」
いや、言いたいことはわかるけど、テレポートって何?そんなもの使えるのか?ダンジョンマスターってアイテム購入しかできないのでは?
「ダンジョンマスターの能力ではなく、ダンジョンコアの能力です」
「そういうの先に言ってくれる!?」
管制室の椅子に置いといたコアを取りに、森の中の拠点に戻るはめになった。
テレポートのリチャージには半日を要するとのこと。確かに無限にテレポートできれば、敵襲から逃げたい放題逃げれるしな。そこんところゲームっぽい。
「みかんかな」
「みかんみたいですね」
テレポート先の山の麓には果実類がたくさんある。他を見ればぶどうもあったり、りんごがあったり、とにかく果物類がたくさん手に入った。桃もあるぞ。果実類は充実しているし、ミツバチが花の周りを飛んでいたり、基本的に自然はあるのな。森とか山とか見えていたから、ひょっとしたら食料の希望があるのではと期待したが、期待通りでなんとか。
「地球をデザインしたダンジョンみたいだな」
「ハルト様の中にある映像がダンジョンに投写されたのです」
「へー」
神様的な超次元的な何かの影響なのだろうか。いまいちダンジョンの仕組みはわからんね。
「ダンジョンとは、自然発生したマナのなかで一定以上の密度を持つと爆発する現象、通称マナバーストによる空間干渉作用によってできる亜空間のことです」
「それ聞いてもわからないんだって」
「マスターの理解力の低さにワイズは涙が止まりません」
「ハンカチ取り出してまで演技すんな」
あれ?そういえば、ここダンジョンなんだよな。
「ダンジョンですね」
「ダンジョンっていったらモンスターとか出てこないのか」
「ハルト様が購入していないのでいるわけありません」
「モンスターもカタログ購入かよ」