落ち系ダンジョン
視点:レベル300超えの女騎士、アリア
1週間が経ち、ようやく高難易度のダンジョンが完成したらしい。私はそのダンジョンのチェックを行う。最近は物資運搬の護衛だったり、アイアンスライムを倒したり、山菜を収集したり、不満がたまりまくっていた。広大な土地がある分羽を伸ばすことはできるが、手応えのある相手はむしろ物資運搬でたまに遭遇する強敵くらいなものだ。そういう意味ではハルトが管理するこのダンジョンはとても平和な世界なのだろう。野生動物がいることも私たちの世界では珍しい光景になっている。だが、やはり鍛え上げたこの体はエネルギーを持て余している状態だ。
「それで、これがダンジョンか」
「一応言って起きますが、今の俺のもてる力を使って命を取りに行くようなダンジョンですので、気をつけてくださいね」
「心配は無用だぞ」
ハルトは一応という形で心配はしてくれるのだろう。なるほど、ハルトが心配するということは一般人は一撃で死に至るような危険な罠でもあるのだろうな。
さて、一体どういったギミックがあるのだろうか。私基準では一般的な罠など無価値に等しく、初見殺しのようなギミックも大して効きはしない。
「ほう?中は整備されているのか」
ダンジョンというのは大体が洞窟であり、アリの巣のように入り組む。各部屋の仕切りみたいなものはなく、奥へ進めば明かりなしでも基本的には潜れない。閉鎖的な世界に敵と罠が入り組むダンジョンは危険が多いが、ダンジョンは獲物を中に誘き寄せるために高価な報酬が用意されるものだろう。
「さっそく罠か。かかってみるか?」
中央広場のように広い空間で、その先には扉はないが、3箇所の廊下が伸びている。正面と左となぜか右上、道が通じていない謎の道。道というか、あれはもしかしたら出口なのかもしれない。そしてこの中央広場の中央付近すべてが落とし穴になっている。
「探知スキルに引っかからない罠か、これは普通に落ちるな。これは幻影か?」
地面に見える部分を触っても感触がなく、下は見えないほどに深い。飛び降りてみるか。
『空中投影のギミックですね。本来は大穴があいているだけで』
『物理学もさっぱりね』
『私がいて良かったですね』
『さまさまです』
『アリアが飛び降りましたよ、無傷ですね』
『やっぱりあの人参考にならねえだろ。深さ100m超えてんだぞ』
普通なら死ぬ深さだな。戻るのはどうするのだろうか。跳ぶか。
「っ、よし」
『ひとっ跳びですね』
『改めてわかる化け物度合いだぜ』
「なんかハルトに見られている気がする」
『…』
『…』
『…見てるのバレているみたいですよ』
『怖えよ』
さて、道は3箇所、2箇所は普通の廊下で、1箇所は壁に空いた先といったところか。高さは10mほどある場所になぜか廊下が続いている。
「気になるな」
『あっ』
『そういえばこの先って何かあるのですか?』
『ただのアトラクションだけど、まあ、アリアさんには意味ないな。何も意味ないアトラクションよ。ダンジョン作りに飽き飽きして遊園地でも作ろうかと考えてな』
またひとっ飛びして本来の道にはない廊下に出る。奥には個室がある。なにか大きなボールのようなものがある。ボールの中にも小さな照明があり、人が1人入れるくらいの広さがあり、座る場所もある。
「何かのギミックだろうか?罠ではなさそうだが、乗り物を操って進むのだろうか?転がるとしたら酔いそうだな」
結構ガッチリとしたベルトが巻かれている。それを装着すればいいのだろうか。乗り物はあまり得意ではないのだがな。
「よし、このボタンを押せばいいのだな」
ベルトを装着し、ボタンを押したら落ちた。
「ぴゃあああああ!?」
『え?』
『え?』
ボールの下が開き、落っこち、地面にぶつかってそのまま反動で戻ってくる。
『叫び声あげてましたよ?』
『なんでさ?』
『これなんですか?』
『でっかいスーパーボールみたいなものだよ。ほら、帰ってきた』
『へー』
「はあ、はあ、はあ。…ハルト、殺す!」
『なんでだよ!?さっき100m以上の紐なしバンジーやってただろ!?』
『自分で飛び降りるのと、勝手に飛び降ろされるのとの違いですかね?』
『無事なんだからいいじゃん!?一つの遊び要素だよ!?簡単には行けない場所に作っただけなんだよ!?』




