市長の援助
冒険者ギルドの人員の子供たちが加わったことで、アイアンスライム狩りの雑用に充てていた人員を自由に使えるようになった。
「これが攻略用のダンジョンというわけか」
新設のダンジョンを作ってくれと言われて1週間で作り上げた。俺自身のレベルが14まで上がったこともあり色々なものを購入できるようになったのも大きい。
金50g
スライム
ダンジョン整備
ダンジョンボス(ガルーダ)
これらに1週間のMPのほとんどを持っていかれた。
まだ黄金スライムを定期的に出現させる黄金スライムスポットには手が出せない。常にスライムを購入し、金を与えて黄金スライムに変化させる。飢えると他のものを食べて違う種族になってしまうから、新鮮さが大事になってくる。
黄金スライムを1体作るのに金50gが想像以上に重たい。自由に使えるMPがまた減ってしまった。合計で510MPも持っていかれる。
この黄金スライムが今回新しく作ったダンジョンの目玉商品となる。だが、簡単に金が手に入らないように色々と細工をさせてもらった。ついでにいえばボス部屋も用意したが、その先に黄金スライムがいるとは限らない。3日に1回程度にはボス部屋の奥に黄金スライムを配置しようとは思っている。ボスもまだスポット作れないからカタログ購入である。
「俺のMPが枯れる」
「ダージリン・ティーはまだですか?」
「もうMPないぞ」
「ハルト様は汗水垂らして働く私に労働の対価を払わないと?」
「チェーンソーはやめて!」
ついでに300MPを持っていかれてる。MPが1000超えてスポットという無限の供給源を手に入れてなおMPが枯れるとはこれ如何に?
「ダーリン、愛しの妻にはプレゼントはないのですか?」
「労働してからいえや」
「ちょっとはしていますよ」
「どのへん?」
「えーっと、お茶汲み?」
「5人分しかしていないじゃないか」
「あ、アイアンスライム倒していますわ」
「すぐ帰ってきたじゃないか」
「部下に労いの言葉を…」
「まあ、それが姫様っぽい労働か」
「あら、ならば報酬があってもいいのでは?」
「いの一番に家が与えられている姫様がこれ以上何を欲しがるので?」
「ダーリンのいじわる!」
「欲しがりもいい加減にしてくれ…」
姫という存在はわがままというイメージはあったが、クレア王女はそれでもあまりわがままは言わないタイプだった。だが、長い間ここに束縛されるとやることに新鮮さがないために飽きて、何かを欲しがるようになってしまった。ダンジョン制作にも最初は意欲があったが、ずっと地味な壁作りに飽きてしまっていた。
「娯楽なんて全然ないからなあ…」
娯楽はやるべきことが終わってからだ。まずは食糧事情をある意味で輸入状態の現状を打破しなければならない。そのための手段を終焉の街のギルドマスターのエリスに頼んでいる。任せろとだけ残して終焉の街に帰っていったが、本当に任せて大丈夫だっただろうか。
で、姫様は部下に丸太を立たせて何やっているんですかね?
「何してんですか?」
「ん?ダーリンの木像でも作ろうかなと」
「暇すぎて変な特技出してきやがったな!?」
「はっ!!!」
剣筋がかろうじて見えるだけで、みるみるうちに丸太が削られ、人型の像になっていく。
「できましたわ」
「うん、できたな」
「完璧ですわね」
「むしろこのモブ顔王子に似てね?」
「おかしいですわね。昔カイトが小さかった頃に喜ばせるために何度もやったせいかしら、癖になっているのかしら」
「こういうときなんて声変えればいいのかわからないんだが…?すごいですね?完璧ですね?」
「あら、完璧な私は魅力的でしょう?結婚式はいつにする?」
「会話のキャッチボールしような」
「でも、私のことについて避けること多くないですか?」
それは…。
「あまりハルト様をいじめないでくださいね」
「あら、いじめていませんわよ」
「私に関する事情が簡単に解決されてしまったせいで、クレアにそっけない態度を取っていたのを気にしているのです」
「あら、あの新世界の神になる的な時のことかしら?」
ぎゃあああああ。あれは一時の気の迷いだったんだ。ああでもしないとワイズちゃんが帰ってこないと思っていたんだ。仕方ない、仕方ないんだあああああ。あんな中二病的な行動を取るつもりは一切なかったんだあああああ。
「悶絶していますわね」
「黒歴史は消えませんから」
「私は気にしませんのに」
「ハルト様は気にするのですよ」
「確かにあのときは何かに取り憑かれているような状態でしたが」
「むしろ自分自身に取り憑かれていたのでしょう」
冷静に分析しないで!
今日の諸々の問題を解決しながら、開拓地を開発。といってもようやく個々の家と食糧事情が落ち着いてきたところだ。もちろん出費はすさまじく、鉄鉱石の売買だけではもちろんやれていない。王国兵は王国から給料もらっているからな。今稼いでる分は食料と冒険者に払っている。それにすべての稼ぎを持っていかれている。王国兵をこちら視点でタダ働きさせているから持っているわけで、本来なら破綻しているような状況だ。
「おーい、ハルトー、ハルトはおるかー?」
「エリス」
「お主の愛しのエリスちゃんだぞ」
「ん?」
「首をかしげるではない!ほれ、お主の欲していた人材を連れてきたぞ」
「市長じゃねえか」
聞くに市長はもともと農業関連の組合に所属しており、市長になってからは猟友会に関する仕事もしていたらしい。ダンジョン産の大量の鉄鉱石の輸出で市長の仕事に余裕が生まれ、副市長に終焉の街を任せてこっちにきたらしい。まあ、市長にもダンジョンマスターだろうということはわかっていたらしい。
「このような場所ならむしろ市民をこちらに移したいくらいですよ」
「ダンジョンの中ってのはあまり信用ならないのでは?」
「それなら先ほどきいたセーフティーゾンを視覚化できれば安心できるでしょう」
「なるほど、それでも1人、いや1個体の俺にすべてを任せるのは危険だろう。普通なら安心はできないはずです」
「ハルトくんは客観的に自分を卑下する癖があるようですね。…少し暗い部分になるだろうが、ダンジョンマスターを伏せればあるいは———」
———はっ。
もう4時間も話し込んでしまった。だが、色々と参考になる話が多かった。
「市長、もうかなり時間が…」
「あれ?外はまだ明るいですが」
「ここは外と時間軸がずれていますので」
「そうなのか…」
「外はもう夕刻ですよ」
「どおりで腹が減る」
「あまりいい食事は提供できませんが、果物類であれば誇れるものは多いですよ」
「お?果物か…、高級品ではないか」
「高級品?」
「果物に割く敷地面積は終焉の街にはないので、高価であまり買うことはできませんよ」
「ふむ」
「ふっ」
これは儲け話になりそうで。
「明後日には小麦の種を運ばせましょう」
「こっちは植林をしておきましょう」
「忙しくなりそうですね」
「いやー、忙し忙し」
俺たちはガシッと握手をした。
「もう男どもの談義は終わったか?」
「まったく、王女を前にずっと会話をしているなど」
しまった。
ご機嫌とりに時間がかかりそうだなあ…。




