開発本格化
俺が管轄するダンジョン、ラビリンスアースはまだその区画の0.01%も開拓していない状況だ。開拓した内容なダンジョンの入り口の軽い整備と、入り口を抜けた先に簡易駐屯所を作成、そして目玉となるアイアンスライムのダンジョンを作った段階である。
まだまだ問題は山積みだ。
「本当にギルドを呼び込むのですか?」
「仕方ないでしょう。街の駐屯兵を減らすわけにもいかないので、今動員できる王国兵にも限りがありますし」
「むぅ…」
俺はこの前ラビリンスアースに訪ねてきた終焉の街のニセロリギルドマスターの力を借りることにしたのだ。このだだっ広い土地を余らせ続けるのも勿体無いし。
「それで?次は何を作るのでしょうか?」
「コストの削減だな」
「コスト?」
「コストといっても色々あるが、まずは食料の運搬に割り当てられている人員を減らさないと、一向に開拓が進まないしな」
「農業でもやるのですか?」
「いや、食料事情はすべてやる。農業、酪農、狩猟だな。海は少し遠いから漁業はまだ先になるけど」
「なるほど」
「あとは水の確保だな。飲料水は比較的近くに湧き水があるから困らないけど、水が豊富ならそれはそれで活用できるし」
水力発電とかしたいな。
「私は歯ごたえのある金儲けできるダンジョンを作るのを提案しよう」
姫様と作戦会議していたが、控えていたアリアさんが静かに告げてきた。
「ダンジョン?」
「ああ、人員が足りず、ギルドに声をかけるのであれば、それをさらに利用するのも手ではないか?」
「なるほどな、終焉の街以外の冒険者が対象か」
「そうだ」
「効果は薄いかもしれないが、やってみる価値もあるな」
「アイアンスライムの雑魚狩りで飽きてきた連中のストレス解消にもなるだろう」
あ、察し。アリアさんもストレス溜まってんだな。
「歯ごたえのあるダンジョンねえ。それなら内容は告げないでおくよ。俺が全力でダンジョン作ってもアリアさんを倒せるようなものはできないから、どうせ危険度は0に等しいでしょ」
「確かに、ネタバレされたダンジョンの攻略なんてつまらないものだ」
「ひょっとしたら命の危険があるかもよ?」
「大丈夫だ。生き埋めになっても、雷に打たれようとも、マグマに突っ込んでも、私は死なない」
化け物じゃねえか。
「隊長達にはネタバレはしておいたほうがいいかもな」
「王子は?」
「王子はそろそろ王都に戻るからダンジョンの作成は間に合わないだろう」
「そうか、あの性格なら挑戦しそうだったけど」
「ネタバレしてやるか」
「王子可哀想だろ…」
と言ってもなあ。俺も食料運搬の仕事もあるし、ダンジョン整備に時間を当てる余裕もない。人を集める効果も薄そうだしなあ。
めっちゃ睨まれる。
やる気ないのバレてるな。うーん…。
「ワイズちゃん」
「なんですか?」
「難しそうなダンジョン作ってみない?」
「嫌ですけど?」
「あ、はい」
「私はチュートリアル妖精であって、ダンジョンマスターではありませんから」
だよねえ。ダメで元々、聞いてみても予想通りの返答しか帰ってこない。
「じゃあ、いつもやってる山菜集め任せてもいい?」
「嫌ですよ。それはハルト様のお仕事でしょう」
「ワイズちゃん無駄飯食らいじゃねえか」
「失礼ですね。私は何も食べなくても大丈夫なのですが?」
「あ、そうでしたね」
「仕方ありません。ダージリン・ティー3杯で請け負いましょう」
ダージリンってアッサムの倍の100MPの高価な方の紅茶じゃねえか。というかなんで倍も違うんだよ!
300MPはなかなかにきつい…。
時間をMPで買うようなものだし仕方ないな。労働には対価を示さねば。
「じゃあ、それでお願いしていい?」
「お任せください。コアお借りしますよ」
「はいよ」
「では」
もう行くのか。日中いっぱいでワイズちゃんでも300人分くらいの材料は集められるだろう。今日にも終焉の街から、ギルドマスターが冒険者を引っ張ってくるだろうし、食料の備蓄足りなくなることはないよな?
「ってコア渡したら、俺がアジトに帰れねえじゃねえか!?」
ワイズちゃんは午後8時半までは帰ってこないし。アジトまではとても徒歩では向かえないし。
「構成だけでも考えておくか」
「うむ、それがいいだろう」
「あんたのせいで悩んでるんだよ!」
午後に入るまでずっとダンジョンの構成を考えていたが、アイアンスライムのような単純性の高いダンジョンしか作ったことのない俺にはうまいダンジョンをつくるセンスはないのかもしれない。
「これじゃあ、ただひたすらに面倒なダンジョンなだけだしなあ。…それに報酬が上手くないといけないわけだし、俺のMPじゃ高価な材料をドロップするモンスターを作成できないし、あわよくば作成できてもスポットを作れないんじゃ意味ないしなあ…」
「先ほどから何をぐちぐちいっておるのじゃ?」
「うわっ!?びっくりした…」
「くっくっく、隠密がうまくいったようじゃの。まったく、そんなダンジョンマスターだと寝首をかかれてすぐ死んでしまうぞ」
「余計なお世話だよ」
第一に俺は戦闘向きじゃないんだ。
「もう着いたのか」
「もうといっても昼じゃぞ。朝一で出たというのに途中の雑魚モンスターどもに手間取ってこのざまじゃ」
「おいおい、大丈夫かよ」
「まあ、アイアンスライムを倒す程度なら使えるじゃろう」
俺は簡易テントとから出て外を見る。
「なるほどな…」
若い。
これだと冒険者ギルドというか学校みたいなものだろう。ドワーフじゃなくて人間だとすれば、一桁の年齢の子もかなりいる。実力のあるものを王国兵にスカウトするって姫様が言っていたしな。まるっきり教育機関じゃねえか。
「種族は?」
「ほぼ人間じゃよ」
「マジか…」
とても労働に耐えられるようなものではないだろうに。一番小さい子だと5歳くらいに見える。
「あの子らも生きるためには必死なのじゃ」
「ああ、ならアイアンスライムの討伐で金を稼げるならそれに越したことはないよな。危険度低いし」
「本来炭鉱夫がやるようなことだが、暗闇の洞窟の中を攻略するわけではないと聞いたぞ」
「ああ、あかりはあるから大丈夫だろう」
「血豆くらいは覚悟してもらうことにするさね」
そういやアイアンスライムってめちゃくちゃ硬かったな。これは武器の調達も視野に入れないとまずいかも知れん。あの子達がすぐ武器を消耗したら鉄鉱石の供給が止まっちまうし。
「ハルト様、なんか加齢臭がしますわ」
「臭覚の衰えた人間ならではの臭いくらい濃い香水の匂いが感じるのう」
「あら、ドワーフに生き物の香りがわかるの?初めて聞いたわ。ドワーフは鉱石の匂いしか判別できない女も男みたいなヒゲモジャ種族でしょうに」
「私のどこを見たらヒゲモジャじゃ!昔の都市伝説じゃろうが、年齢詐称もいい加減にしろバカ姫が!」
「私は19ですわ!」
「あとひと月で20じゃろ!」
「ハ、ハルト様の前で何を!?」
学年は4つも上だったのか。
「その点私はどうだ?このびちびちの肌に触れてみたいとは思わんか?」
ないです。
首を横に振っといた。
「ざまあ!そんなんだから一度も結婚できないのよ。色仕掛けのいの字もわからない恋愛ど素人が」
「人が気にしていることを!」
いや、姫様も素顔がどんどん割れてきて引いているんですけど?




