王国兵のお仕事
ひとまず、ダンジョンの有用性はある程度確認できたが、もう1つの問題の人材の確保はできそうにない。終焉の街の人間は日々の生活で忙しく、街の拡張が最優先事項であり、それに付随する利益が出るものがあれば、人材はある程度受け取ることはできるかもしれないが、それでも数に限りはあるわけで、俺の希望のいく人数を集めることは叶わないだろう。
何故かな。長考しても視線が外れない。
「あのー、そんなに見つめないでいただけます?」
「えー?見つめていませんよぉ」
自称幼女の猫なで声に鳥肌が立ったわ。
「45のババアが何をいう」
「ドワーフの見た目の年齢なら、人間としてはむしろ若いわ!」
「人間からすればもう妙齢どころかババア入りレベルだ」
王女がギルドマスターの注意を受け持ってくれるおかげで話しやすくなる。ドワーフだったんか。
「いきなり国はできないな。開拓村がせいぜいだろう。そこで鉄鉱石を集めさせようかと思っている」
「開拓村か、必要になるのは職のないものや冒険者くらいだぞ」
「冒険者か、利権は王女に渡しておきたいのだがな」
「お?惚れた女にアピールか?」
「アリアさんって結構色恋沙汰好きですね…」
「その辺の話を根掘り葉掘り聞いてもいいのだがな。それ以上に気になることはある」
「気になること?」
「鉄鉱石を取れる場所なんてあるのか?」
「ああ、それなら…、ひとつだけ考えがあるので」
「そうか、それならよい」
アリアさんって案外自分の領域をわきまえるタイプなんだな。ズカズカと踏み入ってくる腹黒姫や幼女もどきとは違う。
話を戻して考えてみるが、王国所属の人間を使って開拓させるには人数も足りないだろうし、何よりそういった仕事には慣れていない可能性もある。アリアさんが自分の領域をわきまえるタイプなら、俺が要求している内容はその領域を超えた仕事を持ってきていることになる。広義的には王国のためになるだろうから問題ないかもしれないが、王国兵を雇って生産職に仕えさせるわけにもいくまい。
王国に権利は渡して起きたいが、必要になってくるのは冒険者か。
「治安維持の名文としてはありか…」
「さっきから何をぼやいているのですか?」
「ん?いやちょっとな…」
「そんなの働かせておけばいいのですよ。名文は国のためです」
「ワイズちゃん酷すぎる!?」
「後でお姫様に聞いてみたらどうです?」
「そんなもんなのかな?」
王国兵をそのまま働かせられるならそれでいいのだけど…。
市長から食事に誘ってもらい涙を流しながら果物生活とおさらばしたのも束の間、すぐにダンジョンに戻ってくることとなった。
「何故王女までいるんですか?」
「ダーリンを1人にしておけないわ」
「ワイズちゃんいるので大丈———いってー!」
「あら、どうかされましたか?」
厚底ブーツで足の甲踏み抜かれたぞ!?レベル3をもう少し労われや。
「さてと、おはよう諸君とでも言えばいいのかな?」
「三下に一流の悪役のセリフは似合わないですね」
「外野のワイズちゃんうるさいよ!」
「さて、王国兵の諸君、こちらに座す方をどちらと心得る?」
「第一王女ですね」
「締まらんやろうが!」
「早く本題に入ってください」
ワイズちゃんマジ辛辣。
さて、俺たちの前には昏睡状態から目が覚めた王国兵たちがいる。そして俺の背後には姫とその最強の従者が佇んでいるわけだ。寝起きドッキリレベルで酷い状況だな。同情するわ。
「君たちには名誉ある仕事を紹介してやろう。お姫様のお墨付きだ」
「自己紹介から始めた方がよろしいですよ」
「ごほん、私は君たちの奥に控えるダンジョンの主人、ダンジョンマスターのハルトだ。そしてノースランドの第一王女とは…、えっと…」
「ダーリンです!」
「ダーリンじゃないです。知り合いです」
「あら、私の初めてを———」
「どれだよ!いい加減なこと言わないでくれます?…ごほん、話が脱線した。まあつまりだ。儲け話があって姫様がそれに乗っかりたいから、お前ら仕事しろって」
適当ですね、とワイズちゃんからお叱りを受けるが、そんなこと言ったってなあ。最近まで高校生だったんだよ。カリスマ性も足りないんだよ。
「ハルト様の能力の低さのせいでは?」
「いつにも増して辛辣!?」
これからは多少なりとも頑張るから。
「それで私たちは何をすればいいのでしょう?」
「隊長飲み込み早っ!?」
「いえ、それが仕事であれば」
「スライム退治」
「え?スライムですか?」
「あと運搬や」
入り口のダンジョンから一番近いダンジョン区画がある。そこに鉄鉱石を食べさせたスライムを放ちまくる。拠点ができるころには立派な鉄鉱系のスライムがうようよするダンジョンになるだろう。そして戦闘が起これば俺の経験値もがっぽがっぽ稼げるぜ。
「狡いですね」
「賢いと言いなさい」
「ずる賢いですね」
「ならば良し」
「それでいいんですか…」
あとは訝しんでいる王子の説得かあ…。面倒だなあ。




