市長と不足物資
結局暇してる幼女もどきのギルドマスターがついてくることになり、街の偵察は思うように進まない。見た所、生存範囲拡大計画という仰々しい言い方をするような街の慎重な拡張の仕方をしているが、物資も人材も足りていないみたいだ。王女が強制徴用をしていたとギルマスは言っていたが、どうなんだろうな。
なんか聞きづらいし。
「聞けばいいじゃないですか?」
「そんな簡単に聞ける内容かな?ギルマスも近くにいて大変みたいだし」
背後でやいのやいのやってる。近所迷惑千万だな。
「ところで、これどこに向かっているんだ?屯所の用は終わっただろう?」
「ああ、この街の市長に会いに行くのさ」
「市長に?」
「街の偵察なら一番街を理解している市長に話を通した方が早かろう」
「それはありがたい」
ひょっとしてこの脳筋短気女騎士が一番優秀なのでは?
「何か言ったか?」
「いえ何も?」
「ワイズ殿」
「それは反則だからっ!」
ちょっ、ワイズちゃん言わないでー。逃げるが勝ち!
残念、回り込まれてしまったようだ。
それから街の大通りの真ん中を歩いたが、VIPさながら、道の中に道ができる状態で、本当に護衛一人で大丈夫なのかと心配になるが、やはりアリアさんの実力なら、暗殺等をしようとするような不届き者の一挙手一投足にも反応できるのだろう。何も起きなかったが、周囲への目の配り方が尋常ではなかった。これで気疲れしないただの習慣であるとしたら、この人の間合いはとんでもない距離に違いない。
そんなこんなで何事もなく、街を歩いてそのまま市長がいる役所にたどり着いた。もちろん途中で無理やりひっついて来たギルドマスターも釣れている。王女ということですぐに受付を通され、市長の面会を果たすことになった。まあ、立場上王女の方が上だからどちらかといえば市長が出向く方が自然だろうが、王女の行動力が様式よりも優先されてしまうのだろう。
それにしても市長は若いな。30代前半の男性だ。もしかしたら20代かもしれんな。
「お久しぶりです。終焉の街に入られたと聞いていましたが、挨拶に出向けずに申し訳ありません」
おうおう、なかなかにお堅いねえ。こういう場所じゃ胃が痛くなるんですが。
「私の都合を優先させていただきました。あなたが謝ることではありませんわ」
「ですが———」
どうやらこの手の話は長くなりそうだ。とにかくアリアさんが結構権力持ってそうだし目を向けてみる。すぐに視線を返されジト目にされる。
さっさと本題に入りたいんだがなあ。王女が横を向きながら後ろに鋭い視線をよこしてきた。
そわそわしててさーせん。
「それで本題ですが、この方に現在の終焉の街に不足している物資に関する資料をお見せしてください」
「不足物資に関する資料ですか?」
「えぇ、もしかしたら不足物資に関する通商を結んでいただけるかもしませんわ」
「本当ですか!?」
「もしかしたらですよ」
「す、すみません。今すぐ用意します」
後ろに控えていた秘書、に不足物資の交易ルートや必要分量に関する資料を持ってくるように指示をしていた。
交易ルートね。
資料を一読してみる。
どうやら俺の住んでいた地球とは勝手が違いすぎるみたいだ。山賊とかに妨害されることが過去に起きていたりもしていたが、この世界は隣町に物資を運搬するのもかなりの金額を要するらしい。つまり必要なのは不足物資の調達ではなく、不足物資の速やかで安全な搬送ということになる。これは面倒だなあ。
「ど、どうでしょうか?」
俺のダンジョンからこの街までは4時間くらいの距離にある。近くの村とかはこの終焉の街からは近いが、不足する鉄鉱石の取れる場所はかなり遠い。近場の採掘場は人材不足と取れる場所に問題がある。深いところまで潜る必要があり、1日あたりの採掘量が低すぎる。焼け石に水状態。遠くの採掘場はたくさん取れるが、移動距離は馬車で4日。これは話にならんな。
「なんとかなるかな」
「えぇ!?一体どこから、どんな———」
「待て待て、それ以上はまだ詮索しないでくれ」
まだ、か…。と、目を光らせているギルドマスターの睨みにビビるわ。
やりづれえ。
ダンジョン内の輸送は確かにこの採掘場よりも距離があり時間がかかるだろうが、その道中の危険度はまるで違い、護衛に冒険者を雇わなければならないような状況は発生しない。もちろんここまでの道のりの4時間分はあるし、王国兵もやられたビッグブルーバタフライなんてモンスターも生息していたりする。逆に考えれば、この4時間分の道を比較的安全なものへと整備すればかなり大きな見返りが期待できるだろう。
あとダンジョン入り口にある迷宮も厄介だったりするんだよなあ。物資をうまく運べない可能性もあるからなあ。
「ハルト様が侵入者を恐れた結果ですよ」
「やっぱりそれなのか」
「余計なことを…」
「あれ俺の意思じゃないから!無意識だから!」
…。
ちょっとワイズちゃんと秘密の会話してただけです。奇異の目で見ないで!




