偵察開始
「なるほどダンジョン経営のために外の世界を参考にしたいと」
なんでこれだけを説明するのに小一時間も要しているのかね。
「ですが、今は私たちの都合もあります」
「その都合って前に聞いた通りのことか?」
「ええ、この地の調査権を王国が独占するためのものですわ」
「そのために王国の兵を使ってダンジョンの先行調査を行わせると」
「はい」
外の世界の利権とかはわからないが、王国も一枚岩じゃないんだろう。だが、それならなんでダンジョンの入り口なんかで待っているのか。弟の冒険者一行の片割れに見つかると思うがな。
「見つかっても良いですよ。このダンジョンは若いみたいですし、すぐに姿形が変化、そして入り口に小さくはない本来のダンジョンのようなものが形成され侵入者を拒んでいます。それはダーリンが侵入者を警戒している現れです。すぐに見つかることもなく、見つかってもその間にダンジョンの入り口には王国兵が来ているでしょう」
「そうか、計画通りなら俺が気にすることでもないな。それとダーリンはやめてくれ、呼び方はハルトでいい」
「あら、もう名前呼びを許していただけるのですか?」
「どちらかといえばダーリンの方がハードル高くね!?」
絶対頭のネジどこかに吹き飛んでるよ、この姫さん。
シャキッて音が耳元でするなあ。
姫様はとても聡明であります。
「ならば、よし」
「俺、別に何も言ってないだろ」
「顔に書いてあるぞ」
「書いてねえわ!」
俺のテレパシーってそういえばコントロール不可だったっけ?聞こえてたりするのかな?
「私にだけ聞こえていますね。そして私が伝達していますよ」
「ワイズちゃん!?余計なことしないで!?そして顔に書いてあるってなんだよ」
ワイズちゃん限定で垂れ流しなのね。
「それはそうと私たちは見つかるまではこの場で待機しておきたいのですよ」
「そうか、でも強いアリアさんがいながら行方不明になるのってまずくないか?アリアさんの立場がないような」
「…」
「…」
「…そうですね」
おい。
「そこは痛いところですが、すでにアリアには了承をいただいております」
「そうなんだ」
神妙に頷いている。うん、黙っていればすごく様になるんだよなあ。
「アリアはあくまでも私の護衛、つまり私が自由にダンジョンを探索してもそれを止める権利は国から与えられていない。私に危険さえなければ行動を制御することはできませんので、すべて私の独断で裁定されるというわけです。このダンジョンは安全でしょう?」
「ソウデスネ…、ワア、スバラシキカナ」
「若干ゴリ押し気味ですが、どうにかなるでしょう」
「いいのかよ」
そしてアリアさんも神妙に頷かなくていいから。
「読みを外したか…、外の世界観れると思ったんだけどなあ。あいつらが来るまで待つか」
「この場に留まってはダーリンの方がまずいでしょう」
「ダーリン呼びは顕在なのかよ。そうか、確かに俺がここにいたら王女を攫った犯人扱いになるなあ」
「もうなっているのでは?」
「まだ証拠がないからセーフ」
「生き証人ならここにいますけど?」
「思いっきり不正じゃねえか、いつ俺が王女を攫ったよ!?」
外の街は是が非にでも見ておきたいのだがな。そのための護衛としてレベル300のアリアさんを借りたかったがどうするか。俺はレベル3だしなあ。
「でもそろそろ見つかっても問題ないかしら?早ければ近くの町からでも1日でこの地に辿り着けるでしょう」
「もう帰りますか?」
「ええ、将来の旦那様のわがままくらい聞いて差し上げなければ」
外堀というかもう内堀まで入って来てるだろ。というか問題ないなら最初からそう言ってくれ。
「それでは終焉の街に向かいましょう」
「タイムを要求する」
「なんでしょう?」
「今なんて言った?」
「街に向かいましょうと?」
「いやいや、その街の名前だよ」
「終焉の街ですが?」
「いやいやいや、それ本当に街の名前かよ!?」
「由緒正しき我が国の街の一つですわ」
「完璧にやべえところに立ってる街だろうが」
「昔はやばいところに作られた街でしたよ。今はただの名残です」
「あ、そうですか」
近所の街の名前が終焉とかすでに外に行く意欲が削がれたわ。
「ほら、ハルト様行きますよ」
「テレパシー聞こえてるよね!?」
「意気地なしは嫌いです」
「即行こう、すぐ行こう」
「あ、コア隠しておきましょう」
「前回使ったところには案山子立てた場所だし、ちょっと場所変えるか」
王子連中とすれ違ったあげく、破壊されたら終わりだしな。
入り口のダンジョンを抜ける。といってもただの迷路みたいなものだ。しかも簡単という。
「本来ならモンスターとか配置するのですよ」
「だろうな」
前歩く2人が聞き耳立てているから話しづらい。聞かれても仕方ないのだけども。
「入り口が狭ければ攻め込まれる心配も少ないだろ。それだけで街の守りは鉄壁よ」
「そうでしょう。ただ、世の中には少人数、もしくはたった1人で街を軽々と滅ぼすほどの力を持った存在もいますよ」
目の前のアリアさんとかな。あと勇者。勇者がいれば魔王もいるのだろうか?
ワイズちゃんと話していると前を歩いていたお姫様が振り返る。
「ダーリンはどんなダンジョンを作るの?詳しく聞きたいなあ」
「目が笑っていませんよ、怖いわ」
「あらやだ、ダーリン冗談が上手ね」
「痛い、レベル3を叩くときは軽く叩いて。…モンスターで溢れかえる、みたいなことをしないために外の街を視察しに行くのですよ」
「そうですか」
「魅力あるダンジョンにしますよ」
「ふふっ、その言葉信じますね。やはり私たちは相性いいかもしれませんよ?」
そんなウィンクにやられるか。
お腹の中が真っ黒だぜ。
「それ伝えてもいいですか?」
「やめてくれます!?」
冗談を拳で返却してくる王女だぞ。顔が3倍に腫れ上がるから。
ほとんど迷わないダンジョンなだけあってすぐに出口へと到着したが、出口付近には王子一行と何人かのいかにも王国兵の方々が倒れていた。
「死屍累々なんだけど…」




