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ダンジョンの国の王様  作者: てるいち
チュートリアル
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凡人乙

 ふざけてやがる。

 ただひたすらに凡人の人生だった。成績も並み、友達もいるにはいるが親友みたいに仲のいい関係を築いたやつはいない、もちろん恋人もいない、強いていうなら運が良かった。

 席替えで当時好きだった子と隣になったり、120円のジュースを150円で買ったら130円のおつりが出てきたり、クラス委員とかいう面倒な仕事の役をじゃんけんで逃れたり、クジで2等を当てたり、それが海外旅行券で家族と旅行に行き、旅行先のカジノで1万円を2万円にしたり、10連ガチャで確率1%のSSRを5枚抜きしたり、サッカー観戦に初めていったらハットトリックを生で見たり。他にも色々あったが、とにかく運はよかった。

 ただ、その運の良かった人生も実は人並みだったらしい。今まで何かと運が良かったのを帳消しにするほどの運の悪い出来事にあった。

 隕石に潰された。


「どんな確率だよ。で、どうして俺は生きているんだ」


 周りを見回すと太陽の方角に森、そしてそれ以外の方角には本当に遠くに山が見えるくらいで辺りは草原だ。地平線の先に山が見えるが、おそらく梺はここからは見えていない。


「マジでどこだここ?天国ですか?」

『マスタリーシステム起動いたします』

「ふぁ!?なんだ!?」

『マスター、フジノハルト登録完了。初めまして私はナビゲーションシステムのワイズと申します』

「ワ、ワイズ…?」

『はい、なんでしょう?』


 いや、なんでしょう、はこっちのセリフだ。どういうことだ。この状況、俺は死んだんじゃなかったのか。隕石衝突だぞ。しかも身の丈を大きく超えるものを直撃だ。あれ、直径30mくらいあったぞ。…待てよ。ナビゲーションシステムとか言っていたな。もしかしてこいつ、いわゆる神様転生小説とかで出てくるサポートキャラ的な存在か?チュートリアルなのか?だとしたら何か知っていても不思議じゃない。


「ワイズは何か知っているのか」

『何かとは?』

「俺がここにいる理由とか」

『ハルト様がここにいる理由はワイズにはわかりません』

「わからないんかい!」

『私はナビゲーションシステムです』


 聞いたわ!

 なんだこの頭に響く謎の声は…、コミュニケーションは可能だが、俺の知りたいことは知らないらしい。チュートリアルの名折れだぜ。


「ここは天国か?」

『ここはラビリンスアース、ダンジョンです』

「は?」

『ダンジョンです』

「ダンジョンって何?」

『ダンジョンとは、自然発生したマナのなかで一定以上の密度を持つと爆発する現象、通称マナバーストによる空間干渉作用によってできる亜空間のことです』

「7割わかんなかった」

『マスターはアホですね』

「うるせえよ」


 ダンジョンっていうのはアレだろう。ファンタジー小説とかRPGとかに出てくるダンジョンなのだろう。だが、ダンジョンというには世界が違いすぎるというか。普通に空あるし、亜空間と言っていたが、太陽すらある亜空間って、もはや宇宙規模じゃねえか。


「ここ、本当にダンジョンか?」

『マスターの理解力の低さにワイズは失望を隠しきれません』

「なんで声に出してんだよ」

『声には出していません、テレパシーです』

「あ、そうですか」

『なぜマスターはテレパシーを使わないのでしょう?』

「…は?」

『なぜマスターはテレパシーを使わないのでしょう?』

「いや、聞こえなかったとかじゃねえから。テレパシーなんて使えねえよ。こちとら生粋の日本人だぞ!」

『マスター情報アップデート、テレパシーの使えない人種、日本人種』

「日本人は別に種じゃねえから、日本の国の人間だから」

『日本はテレパシーすら使えない人種の集まりでよろしいでしょうか』

「癇に触るナビゲーターだな、おい!」

『聞こえませんね』

「聞こえてるじゃねえか!」


 テレパシーってなんだよ。心の中で言葉を発せば相手に伝わるのか?

 ワイズのばーか。


『マスターは客観力を鍛えた方がいいですよ。マスターの方がばかです』

「お前ずっと俺の心の声聞こえてんじゃねえか!」




 ワイズ曰く、南の森に拠点があるらしく、その方向に向かえとのこと。


「拠点ってどんなところなんだ?」

『テレパシーを使わないのですか?』

「むずかしいんだよ」


 テレパシーとは考えている事柄を抽出して魔力に乗せて発するとのことらしい。どういうわけか俺は勝手にできるらしく、逆に言えば制御ができない。勝手にテレパシー状態になって勝手に思考を発信しているらしい。


『マスターのテレパシーは考えていること全部聞こえるので気持ち悪いです』

「ど直球すぎるだろ!もうちょっと包み隠せ!」

『ならマスターの思考を包み隠してください』


 無理やねん。


『頑張ってくださいね。うるさいので』


 辛辣すぎね?


『普通です』


 普通とは?

 ところで、拠点で俺は何したらいいんだ?


『ハルト様はダンジョンマスターです』

「へえー」


 ダンジョンマスター?


「ダンジョンマスター!?」

『はい』

「ダンジョンマスターってあのダンジョンマスターか?」

『どのダンジョンマスターでしょうか?』

「いわゆる冒険者を鬼畜責めして、スライムで窒息させたり、大量の王国兵を落とし穴にはめたり、ダンジョンコアとかいうものを破壊されたら死んでしまうというアレか!?」

『やけに詳しいですね。ナビーゲーションシステム必要ありませんか?必要ないですね。それでは失礼し———』

「待って待って!まだダンジョンのこととかわからないから、ちょっと待ってー!」


 何勝手にログアウトしようとしてんねん。説明なしだとすぐお陀仏になってまうやろ。


『ハルト様エセ関西弁は好まれませんよ』

「お前絶対日本知ってるだろ!」




 ここか。

 森の中に地下へとつながるであろう。変な金属の建造物を発見したが、こんなド自然の中でなんでここだけ人工物なのか。景観重視でせめて木造建築にしておけや。


『それだと冒険者が見落とす可能性があります』

「見落とした方がええやろ。俺は最深部に辿りつかれたら死んでしまうんだぞ」

『最深部ですか?』

「あれ?ダンジョンコアみたいなものが最深部にあるんじゃねえの?」

『ダンジョンコアならあなたが起きた場所にありますよ』

「は?」

『あのとき後ろにダンジョンコアありましたよ』

「ふざけんなボケー!」


 はあ、はあ、はあ。マジ余計な労働をしたわ。ありえん。


『お疲れ様です』

「マジにふざけ倒して死に至れや、くそワイズ」

「酷いことを言いますね」

「へ?」


 謎の建造物の入り口が開いて中から超絶美少女が現れた。


「初めまして私がワイズと申します」

「結婚しよ」

「死んでください、マスター」

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