表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランスロット・ゲート  作者: 机上イリン
1/3

パーシヴァル・テリトリー(上)

アーサーがビフォー車、ガソリン車やハイブリッド車を完全廃棄させると言う声明を出した。


それを聞いて激昂した主人公ガルビアは、アーサーに復讐すべく旅に出る。


まずは自身がいるパーシヴァル・テリトリーの主、パーシヴァルを殺して反抗声明を出そうとするが…?


 アーサーと呼ばれる者がいた。世界を裁定し、全てを司る女がいた。人は崇拝し、知恵を受け取って生きていた。

 一人の老人が話を続ける。

 それを壊したのが今のざまだ。みろよ、周りは綺麗じゃないし何より飯、今日のご飯は肉まみれだ。アーサー統治時代じゃ絶対にそんな事なかったぜ。

 老人の言う通りの光景が広がる。目の前には形容しにくいほど大きいステーキがある。

 でも俺は派手にぶち壊してくれて感謝しているさ、肉は一日200gが限度だったのに今は沢山食える!お前たちも大好きな肉が今日はこんなに沢山食えるんだ!

続きの話は肉を食いながらにしよう。また聞かせてあげるぜ、大英雄【ランスロット・ゲート】の話を。

 彼は孫たちと一緒に飯を食べながら、人間らしい生活を取り戻した、ランスロット・ゲートの話をする。

 世界はいい感じに混戦だ。人間が人間らしい刺激的な生活を送っている。見ているか、ランスロット・ゲート?



 ◇



 ランスロットと言うのは、ブリテン…つまりアーサー王伝説を終わらせた英雄と言っても過言ではないだろう。彼の不倫から終わったと言っていいのだから。

 彼がランスロットの名を名乗ったのは、本当にアーサーを追い詰めた時だけだ。それ以外は普通に別名だった。

 彼の名前はフォルレオン・ガルビア・ゲート。アーサー統治時代末期から再西暦初めのレーサーだった。彼はビフォー車のGT-Rに乗っていた。

 アーサー統治時代からアフター車とビフォー車に分かれていたんだ。アフター車は電気自動車で、今は出回っている大半の車はこれ。スポーツカーだろうがなんだろうが電気だ。入りを話した老人が乗ってるランサーエボリューションXVlもこれに該当する。

 それと比べてガソリンやハイブリッド車がビフォー車。今はもう金持ちしか手に入らない代物で、おまけに家庭用のやつは需要が無いからと全滅した。アーサー統治時代終了後、残ってるというのは…ロードスターがあった程度か。


 そうそう、歴史を語るんだ。主な出来事を教えておこう。あ、ただあまりに語り過ぎると楽しみなくなるから簡単にね。世間一般で語られてる歴史はこれだ。



1、ビフォー車によるレース廃止によるフォルレオン・G・ゲートの蜂起。統治騎士パーシヴァルの死。未完全であったパーシヴァルの部下兼次期統治騎士ローエングリンの強奪。


2、脱出先で巧妙にGT-Rを改造して外装を電気自動車に見せかける。敵の目を欺いて脱出しがてらアーサーの本拠地を目指す。


3、本拠地を目指しつつ統治騎士を破壊する。行く先々で燃料の補給に困る。ローエングリンが覚醒して、ランスロットの手助けをする。


4、本拠地で大暴れ。ランスロット・ゲートはアーサーとの直接対決で打ち勝つ!


 これが大まかな流れね。どう?流石に単純すぎたかな。でもこれくらいでいいんだ。じゃあ早速一番から話して行こう。



 ◇



 フォルレオン・ガルビア・ゲートは一人怒りで唸っていた。何故なら、愛車のレースが消えようとしていたからだ。アーサーとか言うやつが『二酸化炭素を排出する要因であるビフォー車の需要を無くすことで世界の環境を改善する』というからだ。一人レース場の入り口で壁を殴りながら彼は行き場が無い怒りに震えていた。

「畜生…!アーサーなんてやつが居なきゃ俺は…!」

 フラフラしながら車庫へ来た。車には話が通じるとは思えないが、彼は愛車のGT-Rに寄りかかるとずり落ちた。

「聞けよ相棒。俺とお前は世界から用済みって言われたんだ」

 彼は涙ながらにそう言った。空が曇って雨が降ってきた。雨が降ってきて、屋根にあたる音がする。しばらくしたら、水の音がガレージを包む。

 ガルビアは続けた。

「アーサーなんて!アーサーなんて…!」

「…そう思うよなあ。お前も」


 ガルビアは顔を上げた。目の前にはレース場の管理人が居た。

「ガルビア、聞いてけよ。昔話なんだが、アーサーを滅ぼした騎士の話をな」

「アーサーを滅ぼした…アーサー王伝説の?」

「知ってるのか?まあいい。アーサー王に反逆して勝った人物がいる。名前を確か…」

「ランスロット、だろ?」

 不意に口を挟むガルビア。ランスロットのせいでアーサー王が落ちた事は周知の事実だ。

「知ってるじゃないか!そうそう。お前は今ランスロットになるべきじゃないかって思ってる。少なくともお前だけじゃないぜ、ビフォー者が無くなることを望んでないやつは」

「反乱を起こせって事か。分かった」


 こんな時代にすぐ反乱を起こすと言うのは、相当に頭に来ているらしい。

「ははっ…お前相当頭に来ているな?」

「当たり前だ。俺の相棒を殺されてたまるか…!」

「本気になってるな〜?良いだろう、脱出先を用意しておこう。第4区ガラハッド・テリトリーから第5区ケイ・テリトリーに行け。そこに旧友が居る」

「手配は頼みますよ、さて…では景気付けをしなければ。折角だ、隠れ蓑はでかくしよう。」

「何をする気だ?」

「この第3区の統治騎士を殺すんだ。アーサーの眼を欺く為にもな」

「応援しているぞ、ガルビア」


 家に帰って早速準備を始める。対物ライフル…は大きすぎるから、対物を使える単発銃を用意する。

「これでよし…」

 あとは犯行をする機会を待つだけである。



 ◇



  夜になったので家を出る。

 車を走らせて外を見れば光が灯っている。昼とは別の明かりはどこへ行こうとも変わらずだ。彼が向かうのは第3区騎士団院、つまりテリトリー統括所だ。

「ふぃ〜、意外と硬いと言うかそうでも無いかと言うか」

 統括所の地図と、前の入り口を見比べる。裏口から入れば良いから、と側面を見やる。端末には周りの騎士達の位置情報を配信しているから、裏口には誰も居ない事が確認できる。

「人間の位置情報だって無いんだ、随分手薄だ」

 試しに迷ったフリして、裏口に近づく。情報通りに人一人すらいないのだ。間抜けな、と思うがチャンスでもあるので迷わず入る。


 中は非常に中世的だった。いや、近代的なものもあるにはある。だとしても騎士団としての威厳が凄いというか。中央のステンドグラスには、13騎士全員が描かれている。

 赤色のセミロングの女。昨今の創作物を基準に判断するならパーシヴァルはあれだろう。

「そこのお前」

「あっ」

 騎士にバレた。おまけに剣を持ってたので逃げるべく慌てて近くのトイレに駆け込む。

「止まれ!なんだお前は、この近くでは見ない顔だな」

「あはは、あはは…えい!」

 騎士を引きつけてから頭を角にぶつけて気絶させる。兜を室内だからと脱いで手に持っていたのが間違いだったな。

 兜を奪って鎧を剥ぐ。騎士には女しか居ないのは周知の事実だが、それにしたって綺麗すぎる。目が水を得ない澄んだ緑色だ。見た目は可憐で、生気を感じずとも興奮する。

「機械、もしくはオートマタか…?」

 触ったら鼓動が破裂しそうなくらい鳴る。そうなるほどに柔らかい。女神の感触だ、そう思える。

 しかし、本題はこんな下っ端じゃない。統治騎士がターゲットだ。危うく目的を忘れて鑑賞に浸ってしまった。

「危ないな。でも下っ端でこのレベルか。統治騎士とかどうなるんだ…?」

 ガルビアは不思議な気持ちのままトイレを出て、統治騎士が居る部屋へと足を運んだ。


 統治騎士パーシヴァル。第3区パーシヴァル・テリトリーの主である。

 彼女は義理堅く、尚且つ民に目と耳を傾ける主としては最高とも言える人物だ。近場だけとはいえお忍びでお店に入り、おまけに行きつけまで出来るなど。結構人当たりは良い人物かもしれない。

 だからこそガルビアはパーシヴァルを殺す決意をしたのである。温厚な統治騎士を殺す事により、しっかりした反抗の意思を見せる為だ。

「パーシヴァル様、失礼します」

 ガルビアは普通にノックせず入る。しかし、部屋には誰もいない。

「いっぱい食わされた…いや!」

 横から扉の音が聞こえて思わず単発銃を構える。

 そこから出てきたのはパーシヴァル、しかもタオル一枚巻いてるだけで何も来てない、裸足だ。それが何を意味するか、言葉を失って構えたまま動かなくなる。

 下級の騎士でさえあの美しさを誇っているのだ。ではその上の上、アーサー直下の統治騎士ならばどうなる?女神なんてものじゃ無い、ならばなんて形容する?形容ができない。

 全てを凝縮した芸術品を軽々と上回るほどの、美しさ。パーシヴァルはそれを兼ね備えていた。


「あらあら、迷い込んだの?それとも…ふふっ、夜這いかしら、可愛い子」

 声をかけられてやっと気を取り戻すガルビア。声も透き通る、アルプスの水より透き通った声だ。負けじと、声を出す。

「ハデス直々の夜這いだ。頭を差し出してくれお嬢さん、荒くするのは嫌いだ」

 パーシヴァルはやれやれ、と言った様子だ。しかし銃を突きつけられてるにも関わらず、

「困ったわね、今からご飯を食べに行こうと思っていたのに」

 その時、入口から扉が開ける音がする。

「準備ができました。お母様の方も準備は宜しいでしょうか…え?」

「ローエングリン、お母さんは大丈夫よ。そちらの騎士は…いえ、騎士の姿で来ただけで、お父さんよ」

「は?待て待て待て!」

 パーシヴァルに詰め寄ろうとしたら、逆に軽装のまま詰め寄られた。胸の膨らみは見えるから心臓が鳴る。そして内緒話のような感じで「ここは話を合わせて、お願い…?」と言われたら、女だろうがときめいてしまって黙って従うレベルだ。それを男のガルビアが耐えられるはずもない。

「お父さん…お父さん…!会いたかったです、お父さん!」

 おまけにローエングリンにも抱きつかれる始末。こっちも無垢な少女のような香りと柔らかな肌。騎士という人種は一体どうなってるのだろうか。ガルビアには疑問に思うばかりだ。

「はいはい、ローエングリン。お父さんから離れなさい?そろそろ出かけるわよ」

「あ、ご、ごめんなさい…」

「気にする事ない。親は子に抱きつかれるからこそ親なんだ…」

 パーシヴァルもちゃんと着替え終わって、二人の美女に囲まれて裏口から出る。ガルビアは、もう行く事は無いだろうと思ってた繁華街に来ることになった。

 

 ガルビアと統治騎士の母娘。溶けるように、街に馴染んでいったのだった。

 ――第一話 用語解説――



・ビフォー車

 ガソリン車及びハイブリッド車の事を指す。環境に配慮した車をアーサーが開発、用済みかつ劣るものとしてビフォー車と名付けられた。主人公ガルビアが乗るGT-Rはビフォー車である。

 逆にアーサー基準に則り開発された電気自動車をアフター車と言う。


・アーサー

 ガルビアの時代における、世界を合理的に統一して平和を導き維持していた騎士。ランスロット・ゲートは人々が本来持っていた自由を取り戻す為にアーサーを討った。


・テリトリー

 統治騎士(後述)が支配する領域。テリトリーの名前は『(その地域を統治している騎士の名)・テリトリー』となる。主人公ガルビアが居るテリトリーはパーシヴァルが支配しているので『パーシヴァル・テリトリー』となる。テリトリーは他のも含めて14個ある。円卓の騎士は有名なので16人居るとされているが、反アーサーを植え付けるのを避けるため、ランスロットとモルドレッドの統治騎士はおらず、またテリトリーも無い。


・統治騎士

 テリトリーの主。自身に割り振られた土地を守り、また発展させるために全身全霊を尽くす為に動く。様々な統治騎士が居るが、パーシヴァルは温厚。またその娘であるローエングリンも比較的温厚である。


・騎士

 統治騎士の下で動く騎士。下級騎士とも。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ