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柚宮君は私の太陽

 

 帰りたい、その思いだけを胸に7時間半。

ようやく定時の6時になった。


今日は推しグループのアルバム発売日。

仕事なんてやってる暇はない。早く退社してCDショップへGO!!


私は瞬息で帰り支度をする。


清水しみずさん。ちょっと残って……」


「すみません。今日は無理です。お疲れさまでした」

課長の残業依頼を素早く断り、タイムカードを押して、さようなら。


CDショップに向かい予約特典付きのアルバムをゲットし大急ぎで家に帰る。

ポストにはネット購入限定特典の付いた同じアルバムが届いてあって思わずニヤける。


「ただいまー」


やっぱり家が一番落ち着く。


 1年前……残業続きで自分の人生に虚しさを感じていたとき

偶然見たアニメのキャラクターに心を奪われてしまった。


 元々はアイドル育成ゲームが原作で

アニメを見た、その日のにゲームを始め、プレイしていくうちに底なし沼から

抜け出せない……抜け出したく無くなってしまった。


早速開封して私の推し、こと柚宮玲弥ゆずみやれいや君のイラスト色紙。


「はぁ、かっこいい」


 幸せに浸りながらつぶやく。

柚宮君に出会いは私は変わった。

灰色だった世界が色づき、生きる意味が見つかった。


 仕事から帰ってお酒を飲みながらボーとテレビを流し見る生活が

アニメDVDを見ながらゲームにログイン。

SNSにファンアカウント持って柚宮君の格好良さ、可愛さ、尊さをつぶやいている。

早速ログイン。


【N.S☆柚宮君推し】

『スターチャームのアルバム買うために聞くために仕事マッハで終わらせた。』


【ある☆柚くん最愛】 

『それなです。

仕事なんてやってる場合じゃねぇ!!』


【N.S☆柚宮君推し】

『ほんとです。普段頑張って仕事してるんだから今日は良いですよ。』


【ある☆柚くん最愛】

『(´・ω・)(・ω・`)ネー

N.Sさん今度あるスターチャームライブの参戦予定でしたよね!

ライブ終わりにカラオケで柚くんへの愛を語り合いませんか!?』




 あるさんはSNSで一番仲よくしてもらっているが、まだ会ったことはない。

どうしよう。会ってうまく話せるか心配だ。

でもせっかく誘われたし、いろいろ語り合いたい。


「よし、行ってみよう」

 あるさんに返信と




【N.S☆柚宮君推し】

『いいですよ!語り合いましょう(^-^)』


【ある☆柚くん最愛】

『わーい!楽しみです(*^▽^*)』




「私って変わったなー」


 無趣味でほどんと家から出ず、休日は疲れ果てて寝ているだけの生活が

現在はイベント参戦、ライブ参戦と忙しくなった。

以前は、ほぼノーメイクでも服も2、3年全く買っていなくても

体型が変わって服がピチピチでも全く気にしなかった。


 そんな生活が変わったのは、勇気を出して申し込んだイベント初参戦日の朝

鏡を見て私は愕然とした。

しわがくっきり浮かんだ覇気のない顔

身体はだらしなくたるみお腹がぽっこり出ていた。


 メイクの仕方もわからない。

仕事には下地とファンデーションだけだからマスカラもアイシャドウもない。

そして、着ていく服がない。

どれもこれも、神聖なライブ会場にそぐわないダサい服の数々。




 今まで、それが普通で疑問すら浮かばなかった常識が一気に崩れて

世界が180℃回転したような感覚に陥った。

幸い、イベントは夕方だったので大急ぎで服と化粧品を買いに走った。


それからは、いつイベントやライブがあってもいいように身だしなみに気を付けるようになった。

ダイエットにも励みこの半年で5kg痩せた。


「素晴らしかった!最高」

 アルバムを聞き終えて、語彙力のない感想を言う。



「ハピネスチャージしたし明日も仕事頑張ろう!」





「清水先輩、ホント変わりましたよね!」


「彼氏でも出来たんですかぁ」


「そんなんじゃないって」

 

 お昼休憩中、後輩二人に詰め寄られる。

 良い子たちなんだけどちょっと口が軽いので適当に話をかわさなくては


「えー最近すごくきれいになったって部署中の話題ですよ」


「彼氏じゃなくて好きな人が出来たとかぁ?」


 うう……当たらずとも遠からず。

そう、私は柚宮君に夢中なの。

でも恋ではない。

なんというか希望の光をてらしく照らしくれる太陽のような存在だ。


「いや、こ婚活でもしようかなぁって思って」


 好きな芸能人やバンドとかでごまかそうと思ったけど誰だと詮索されそうなので

婚活でお茶を濁した。


「そうなんです。頑張ってください。」


「今の先輩なら絶対に成功しますよぉ」


「あはは。頑張るよ。さぁお昼休み終わるよ」





 昨日は断ってしまったので今日は45分ほど残業。

「はー終わった。長かった」

 もう7時だ。さっさと帰ろう。



「あの、清水さん。今日開いてますか」


 声を掛けてきたのは1年後輩で爽やかな好青年の綾塚あやつか君だ。



「えっと、どうして」


「少し悩みがあって話を聞いて欲しいんです。」


 えらく急だな。でも後輩が悩んでるのだから先輩として力になりたい。


「いいよ。私に力になれることがあるなら」


「会社では言いづらいので、飲みながらでも大丈夫ですか」


「え?ええ、大丈夫。」


「では今から行きましょう」


 帰し仕度をして二人で退社する。

もうこの会社に7年間勤めているけど後輩とサシ飲みするのは初めてだ。

綾塚君に案内された場所は会社から歩いて10分ほどにあるBARだった。


「こんなところにBARなんてあったんだ」


「そうなんですよ、落ち着いたムードの良いところなんです」


 席に着きお酒を飲みながら世間話や仕事のことなどで盛り上がった。


「あ、そういえば相談したいことってなんなの」

いろんな話は楽しいがそろそろ本題を聞いてみる。


「それが……社内の娘に告白されて、どうしたらいいのかと」


 恋愛相談なの。私じゃ無理だよ。ほかにもっと適役が


「えっと、綾塚君はその娘のこと好きなの」


「……」

 目を伏せて黙る



「うーん。嫌いじゃなければ、とりあえず付き合ってみるのも

ありなんじゃないのかな。」

 

私はほとんどない恋愛に対しの知識を絞り出して言ってみた。


「俺は……その……」


「あ、ごめんね。いいアドバイスできなくて」


 綾塚君は目をあげて真剣な顔で私をじっと見つめ口を開けた。


「俺が好きなのは清水さんです」


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