マッド2
「マッド2よりマッド1、任務開始」
『了解』
オペレーション。
平衡感覚と空間認識能力を買われて、この組織に入った。
「マッド3、マッド1が任務開始します。推移を見てください」
マッド3からの連絡はない。マッド3スパイ。潜入中。
「どうだ、はじまったか」
マッド4。
「もうすぐマッド2が突入するところです」
マッドという組織には、闇の部分がない。後ろ暗い部分もない。いたって、普通の組織系統。ただ、集まっている人員は、驚異的な者ばかりだった。今となりで戦闘の成り行きを見守っているマッド4シールドは、セキュリティから実際の盾を使った戦闘術まで防御全般をすべてこなせる。
「おい、もう始まってるんじゃないだろうな」
ボス。長身の女性。
マッドの人材は、現場やスカウトを通してボスが引き入れる。この人間が実質的に組織を作ったから、ボスと呼ばれていた。
たまたま、その最初の隊員が、自分だった。
目を隠してもまっすぐ歩ける。クレーンゲームで狙った景品は一度で必ず取れる。それしか取り柄がなかったが、ボスはそれが凄いことだと疑っていない。よく、分からなかった。生まれたときからそうなだけだ。いたって、普通。
だが、ボスの人材に関する能力は、マッド2から見ても凄いものだった。
もともと、ふたりの組織だった。お互いに幼馴染で、普通に進学して、普通に卒業した。勿論、その都度なにかと闘ったり大きな敵を倒しながら。そっちと並行していたため、ボスも自分も、学力として上昇したのは卒業してからだった。
彼女は英語が出来なかったため、なんとなくかっこいい言葉として「マッド」を名乗った。彼女がマッド1、自分がマッド2。現在のマッド1が加入するとき、彼女はマッド1の名前を渡してボスを名乗りはじめた。なんとなくかっこいいという、いつも通りの理由。そのうち、フィクサーとでも名乗るのかもしれない。マッド1の名前も、たまたま名前に一が付いていたという、吹けば消えるような理由だった。加入順は、マッド3の方が速い。マッド3とマッド4、5&6とR7、マッド1の順になる。ボスを名乗っているが、階級は同じの横割組織。各自が任務を持ってきて、面白そうだったら乗る。それだけだ。
「お、闘うぞこれ」
「いいねぇ熱いねぇ」
どうやら、マッド1とマッド3が闘いそうになっているらしい。
「なにやってるんですか。止めますよ」
オペレーションのスイッチ。マッド4が邪魔をする。
「いやいやいや。これは見どころだから。マッドの男性隊員最強はどっちだ」
「ボス」
「いいじゃないの。マッド1の実力を見てみようよ」
そうですか。
「たぶん、闘わないと思いますけど」
「え、なんでよ」
「だって意味ないじゃないですか」
「そうなの?」
「いや、攻撃のことはよく分かんないですけど、やり合うと思うんだけどな」
お互い、対峙したまま終わった。
「ほらね」
「マッド1、任務終了です」
『了解。マッド3に、鉄パイプから拳銃と伝えておいてくれ』
「わかりました」
通信を切り替える。
「マッド3、任務報告を」
『こちらマッド3、任務完了。ドラッグの高純度精製工場は制圧した』
「マッド2了解。団員への聴取結果は」
『ダメだ。骨の髄までシャブられて、歯の根も合わない。殺したほうがいいか?』
「マッド1が殺さなかったものに関しては、放っておいてください」
『了解』
「マッド1から伝言です。鉄パイプから拳銃。以上です」
『なるほど。考えることは同じか。こっちも担当投げから拳銃だった』
「伝えますか」
『いや、明日あたり接触して自分から伝えるよ』
やはり、闘っていたらしい。
『それよりボス、このドラッグ工場どうすんの』
隣のボス。ヘッドセットを持つ。
「いつも通り5&6に報告はするんだけど、今回はR7が欲しがってるからそっち経由で機動隊行きかな。なんか、製薬工場が何たらって」
『わかった。アルナにはこっちからも報告飛ばしとく』
「おねがい」
『じゃ、久々に帰りまーす』
通信が切れた。