始まりは勇者様
よろしくお願いします。
「あぁ! 勇者様ですね!」
最初に聞こえたのはその一声だった。
1人の高校生ぐらいの気弱そうな少年の前にいるドレスを着た――それもまた同じぐらいの年齢の少女が発したその一言を皮切りにしたかのように周りから歓喜の声があがる。
(え、今なんて……)
その少年だけが状況が把握しきれず、混乱している。
「え、あのここは……。さっきまで学校にいて、それで眩しい光に囲まれたかと思ったら」
「勇者様が混乱されるのも無理はありません。ここは王国神殿。言い伝えによると勇者様は別の世界の住人のようです。勇者様は私たちの召喚に応じ、ここに来たのです」
少年は理解したようには見えないが、少し考えるようにして口を開いた。
「えーと、もしこの世界が異世界だとして、僕の居た世界はどうなるの? 家族やクラスメイトには僕が突然姿を消したことになってるんじゃ」
「ご心配には及びません。こちらと向こうの世界は本来交わらないもの。インガリツとやらによって問題なく動き続けると言われています」
(因果律? もしこの子が言ってることが正しいとして一体……。つまるところネット小説にありがちな異世界転移ってやつでいいのかな? でもクラスメイトはいないし、一人だけだと突然消えた僕のことで向こうはパニックなんじゃ……)
そんな彼を尻目に少女はしゃべり始める。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私は第一王女、クリスティーナ・ハフナー。以後お見知りおきを。勇者様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「僕は大戸奈留。高校3年の18歳だ」
「あら、同じ年齢ですね。これからよろしくお願いしますね」
「よろしくね。ところで僕はなんでここに連れてこられたの? できれば元の世界に帰りたいんだけど……」
「申し訳ありません。私には戻り方は知らされておりません……。もしかすると王である父上は知っておられるかもしれません。なぜ連れてこられたかも、父上から説明していただけるかと思いますので移動願えますか?」
そう言って奈留は神殿から出て――王の居る城へ向かった。