Chapter22 (6)
「いやーーーーーー。
さすがに死んだと思った」
「無茶しすぎ」
優しい彼女の表情、声。
再び、それに会うことができた。
「うーん、でも最後はやっぱりノムに助けられちゃったね。
ノムー、大好きだよー。
ありがとう、ぎゅーっ」
私はノムを抱きしめる。
どうして死を免れたか、わからないが、とにかく。
彼女に命を救われて、私は今、生きている。
「私は、エレナの先生なんだから、あたりまえ。
・・・。
でも。
それも今日で終わり」
ノムは私から離れると、背中を向け、そして語りだした。
「私の生徒は今日で卒業。
でも、私は。
もっと、エレナと一緒にいたいから」
「ノム」
「先生じゃなくなっても、絶対にあなたのこと守るから。
エレナのこと。
好きだから」
*****
「今度こそ、街を出るのね」
「はい、東のほうに行こうかなーって。
ノムと一緒に」
ついに私達は、この街を去る。
別れの言葉を伝えるため、私はエルノアの元を訪ねた。
「そう。
私達もそろそろ離れようと思ってるわ」
「エルノア、ごめんね。
セリスのこと」
「やはり、まだ魔力定着の影響があるみたいだから、様子を見たほうがいいわね。
だから、セリスのことは私に任せて。
大丈夫、3ヶ月ほどあれば十分によくなるわ。
それまで一緒にいるだけ。
それを、今回の報酬ということにしてちょうだい」
「ありがとうございます」
セリスの精神と体を飲み込まんとしていた雷帝ガドリアスの魔力は、魔力輪廻へと還っていった。
しかし彼女には、まだその影響が残っているようであった。
そこで私は、エルノアにセリスの面倒を見てもらうことにした。
彼女ほどの魔力技能を持つ人間であれば、安心して任せることができる。
「で、報酬の魔導書って。
探していた本物でした?」
「偽物でした」
「げっ!
なんか、すいません」
「いいのよ、気にしないで」
「セリスのこと、よろしくお願いします」
「ええ、いつかまた会いましょう」
*****
「エレナ」
「ごめんなさい。
ランダイン、消しちゃいました」
「そうね
これで私の目的は、達成されないまま、消滅してしまった」
セリスはそう呟くと、橋の下に流れる小川を見つめた。
目的を失い、喪失感に包まれているようだ。
しかし、その寂しげな表情は、徐々に消えていく。
「でも。
エレナは、私のことは気にしなくていいから。
もう大丈夫だから。
それより、あなたは大丈夫なの?
あんな無茶をして」
「いや、無茶しようとしてたのはセリスもじゃないですか」
セリスが私を気遣ってくれる。
強大なる雷の魔力に精神を飲み込まれていた彼女も、徐々にその本来の感情を取り戻していくのだろう。
「そうね。
死ぬはずだったのに、一度生き延びてしまった。
この一度の生。
あなたにあげる」
「え!?」
「貸しを作るのは嫌だから。
あなたのこと、一度だけ命をかけて守ってあげる。
でも、今、私にそんな力はない。
だからいつか・・・。
それまで、死なないで。
約束して」
「ってことは、セリスも、っすよ」
「わかった」
初めて見る彼女の笑顔。
私は彼女から、最高の報酬をもらったのだ。
*****
ランダイン戦の傷も疲労も回復した。
荷物の準備も整った。
一緒に山越えをするギルド会員のメンバーへの挨拶も済ませた。
今、私達は出発する。
「最初は、どこ行くんだっけ?」
「まず中央山脈を越えて東世界へ。
それから南方のグランドホールとマリーベルの聖地に寄り道する。
それから海を渡り、目指す最終目的地はクレセンティア」
目指すは遥か彼方の地、クレセンティア。
目的地は定まった。
「いよーーーーっし!!
出発だ!」
「行こう!」
東に見える巨大な山脈群に向け、大きな声を響かせて。
その最初の一歩を踏み出した。
こうして私は。
魔術師の修行を終えました。
長くて短い、濃密な1年の冒険談。
でも、これは始まりでした。
ノムと2人で歩む、長い旅の物語の。
primary wizard ............end




