Chapter22 (5)
「まだ!
まだ、こんなものではない!
まだ、魔力を吸収できる!
まだ・・・。
まだだぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ランダインが獣のような咆哮をあげる。
その瞬間、失われていた黒の魔力が、闘技場内に再び溢れ出す。
黒の液体、黒の霧。
それが、闘技場を、再度、埋め尽くしていく。
あれだけの雷を浴びておきながら、まだ戦おうとする死霊術師。
信じられないし、信じたくもない。
何が彼をそこまで掻き立てるのか。
黒の魔力に取り付かれた状態では、その答えを知ることはできないだろう。
先ほどの法陣魔術で、魔力を使い果たした私。
しばらくは、威力ある攻撃は放てない。
ここから訪れる防戦を覚悟する。
しかし、ここで事態は一転する。
「なっ!なんだこれは!?」
空間中の黒魔力がざわめいたかと思うと、それはランダインを侵食し始めた。
魔力が・・・暴走している!
「我の体が魔力に飲み込まれてゆく!
違う!
隷属しているのは我だ!
我が全ての魔力を所有しているのだ!
くっ、くるなぁ!
く・・・。
が・・・。
ぐっぁぁぁぁあぁぁああぁxxっぁぁぁぁ!!!」
ランダインが黒の魔力に飲み込まれ、あっという間に闇に埋もれ、消えてしまう。
大いなる咆哮が消えうせると同時に、彼という存在自体も消滅した。
そして、彼の周辺のみではなく、闘技場全体が黒の魔力に包まれていく。
制御を失った魔力が、次々に闘技場ステージから湧き出してくる。
やばい。
一刻も早くここを離れる必要がある。
ガドさん、頼みます!
「私は満足した、礼を言うぞ。
すばらしい器だった。
これで、魔力輪廻に帰ることができる。
さらばだ!」
「いや!待って!
まだ帰らないでぇ!
あとちょっと待って!!」
そんな私の必死の懇願は受け入れられず。
戦いの終わりを確認した雷帝ガドリアスは、魔力輪廻に還って行った。
私の体から魔力が失われる。
それと同時に、尋常ではない痛みと疲労が、私の体を縛り上げた。
「だめだ、体に力入らない。
黒い魔力が・・・体に・・・。
体が重い。
魔力が、吸い取られて。
・・・苦しい・・・。
駄目、かも」
黒の魔力が私の体を包み込んでいく。
私はそれに抗うことはできず。
徐々に意識が薄れていく。
「ごめん・・・。
ノム・・・。
・・・私・・・。
約束・・・。
守れなかった・・・」
「エレナぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
私の叫びが闘技場に木霊する。
目の前に広がる黒の魔力。
私はその現実の理解を急ぐ。
「これは、魔力が充満していてる。
エレナは!
くっ・・・。
充満している魔力が強すぎて、エレナの魔力を見つけられない。
エレナーーーーーーーーーーー!
返事をしてーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
どれだけオーラサーチを試みても、彼女の気配は溢れる黒の魔力にかき消される。
この魔力は瘴気のようなもの。
ただこの場所にいるだけで、人間の体は長くは持たない。
もしエレナがこの魔力の中にいるのならば。
もう一刻の猶予もない。
このままだとまずい。
私は全力で考える。
どうすれば。
エレナがどこにいるのか、わからない。
魔法で、この黒の魔力を吹き飛ばす。
エレナがどこかにいるかもしれないのに?
それに、私の魔力で。
これだけの魔力を吹き飛ばせるの?
それとも、もっと集中してエレナの魔力を。
感知すべき?
それとも。
他に方法はないの?
でも。
ほんとうは。
ほんとうは、わかってる。
私の、今の魔力では、この溢れる魔力には対応できないことを。
私のオーラサーチの能力では、エレナを探し出すことなんて、できないことを。
全て、もう、わかっているのだ。
私は両膝を地面につけ、俯く。
力なく握られた杖が地面にぶつかって、金属音を響かせた。
「でも」
それでも。
「お願い」
だとしても。
「お願い!」
だって。
「お願い!!」
私は。
「お願い、私の魔力!」
エレナが。
「どんな魔法でもいいから!」
エレナのことが。
「私は、どうなってもいいから!」
大好きだから。
「だから!
彼女を!
エレナを、守ってよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」




