Chapter19 【魔術補足】特殊魔法
「今までノムに、魔術に関するいろんなことを教わったよね」
「ぬ」
「二翼魔術、四元素魔術。
三点収束、六点収束。
多属性合成魔術。
治癒術、防衛術。
召喚魔術、幻術。
神聖術、闇魔術。
そして、法陣魔術。
こんなにやってたんだなー。
魔導学のノート、もうちょっとで最後のページだし」
「私が教えたのは、各項目の基礎的な導入部だけだから。
応用にあたる部分とか、その他の細かいものを含めれば、教えられることはまだいっぱいあるけどね」
「魔導学のノート、2冊目作らないとなー。
そういえば。
属性って、教わったのは6属性だけど、その他の属性ってないの?」
「ない、と言われている。
封魔術は別として、魔導、炎、風、雷、光は、この世界に存在するエネルギーの形態に対応する。
エネルギーの形態が別に存在するなら、別属性が存在するかもしれない。
でも、今現在の科学では、その存在は確認されていない。
ちなみに、この世界のあらゆる物体には重力が加わっているけど、魔術では重力の操作はできない。
魔導術と雷術の合成術は擬似加重魔術とも言われて、攻撃対象に重圧を与えることができるけど、厳密にはこれは重力ではない。
ただし、魔導術と封魔術の合成である治癒構成子や、黒魔力で実現される魔術を7つ目以上の属性としてカウントするケースはある。
でもこの2つは基本6属性と並列に並ぶものではない」
「うーん。
結局、『属性は6つ』なんだね」
「三魔女の時代には、雪、月、華の3属性、その後の一時期には擬似12属性とか、神話などでは炎、氷、雷、風、光、闇の6属性だったり。
その時代時代で、基本の属性数は変わってきたけど。
それらの属性っていうのは、現在の6属性を応用して実現されているだけであり、そういう意味では二翼、四元素の6属性というのは、古来から変わっていないと言える。
例えば雪術も、実際は封魔術で実現される氷術。
氷のように見えるけど、封魔属性なの」
「本物の氷で攻撃はできないの?」
「通常は、空間中に魔法を実現できる程度の氷、つまり水が存在しない。
存在しないものは魔術として扱えない。
実現不可能と考えられている術、秘術の創造術に対応してしまう。
一方、もしも空間中に水がたくさん存在するとしても、その水を用いて攻撃を実現した場合は『操作術』という範疇となる。
つまり氷という『物体』を術で『操作』している状態になる」
「『操作』、ってどうやるの?」
「物体を操作する方法には、基本的には2種類ある。
1つは風術を用いる場合。
風術は空気の運動のエネルギーを発生させる。
うまく空気の圧力を操れば、物体を移動させたりできる。
ただし。
精密に動かすのは、とんでもなく難しい」
「じゃあさ。
封魔術で空間中に存在する水蒸気のエネルギーを急激に下げて氷を生成して、それをハイウインドで吹き飛ばせば、リアル・ブリザードが実現できるよね」
「ブリザードは封魔術と風術の合成術として存在する。
本物の氷ではないけれど、わざわざ水蒸気を凍らせるより、こっちのほうが断然効率的」
「さようですか」
「物体を動かすもう1つの方法は、魔導術と封魔術の反発力や、魔導術、封魔術と物質特性の作用を利用する方法。
これはエーテルゴーレムを動かす仕組みに利用されていて、魔導工学的な技術として確立されている。
ゴーレム側の機構がしっかりしていれば、比較的簡単に動かせる。
そのかわり、魔導術、封魔術と反応する物体しか動かせない」
「ふーん。
他に私がまだ教わってない魔法って何かあるかな」
「あとは、攻撃・防衛の範疇に入らない魔術とか。
暗いときにあたりを照らす光術の『グローライト』、火種がないとき炎術で薪に火をつけたり、封魔術で物体のエネルギーを奪って冷やしたりとか」
「風術をうまく使えば、団扇の代わりになって涼しいとか」
「それはやめたほうがいい
風術中にはエーテルのエネルギーが少量含まれるから、怪我をするまではなくても髪の毛が痛んだりする」
「残念」
「これから、エレナが見ることになる魔術は、今までに教えたこと、もしくはそれを応用したものであり、そうでないものはほぼ間違いなく存在しない。
魔術戦で重要なことは、相手の攻撃パターンを読むこと。
相手が見たことのない魔術を使ってきても、それはほぼ必ず理論的に理解できるものだから。
その魔術はどういう仕組みで実現されているのかを正しく理解できれば、相手の特性がわかる。
そして、相手の攻撃を完全に理解し見切れれば、勝利はエレナにやってくる」
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