Chapter19 特殊武器・特殊魔法 (2)
「死霊術師、か」
翌日。
朝のうちにそれを伝えた。
重要な話は早めにしておく必要がある。
これを受け、ノムは深い熟考状態に突入した。
「ノムのオーラサーチでもわからない?」
「エルノアが気をつけろと言うくらいだから、魔力はかなり強いはずだけど。
今のところ、判断がつかない」
「そっか」
「魔力的な動きがあれば、それを感じるはず」
「とにかく、気をつけることしかできないか」
エルノアも『今のところ動きはない』と言っていた。
今の私達にできることは、小さな異変を見逃さないこと。
それだけだ。
「ところで」
「む?」
「これっ!
もらってきたよー」
テッテレー!
天に掲げたそれは、トーナメントの優勝賞品、蓮華の腕輪。
ルーン、及び炎の華と雪の結晶の模様が刻まれた美しく光る白銀の腕輪。
朝一番に闘技場行ってもらってきたのだ。
ノムの反応も上々。
ほんのりと驚きの表情が見て取れる。
「ほんとに。
なんとかかんとかプレゼントできたよ」
「エレナ。
ありがと」
珍しく述べられた素直な謝礼の言葉。
そして聖女のような微笑み。
喜んでもらえたようで、なにより。
かわいい笑顔を見れたことで、私の苦労は報われた。
*****
「せっかくだし、今からさっそく使ってみようかな」
そんなノムの提案で、街外れの平原にやってきた。
彼女は、先日買った斧も持ってきていた。
ブラックブラッド。
そのような名前を持つ長戦斧は、文字通り赤黒い血のような色をしている。
炎の魔術の制御を補助する魔導武具だ。
「これも使ってみる」
「ノム、武器を杖から斧に変えるつもりだったりするの?」
「他の武器の方が使いやすければ、あるかもしれない。
とにかく腕輪から使ってみる」
「腕輪に魔力を収束させるの?
でも、そんなことしたら、腕もげちゃうよね。
使い方わかるの?」
「わかんない。
最初は、あんまり魔力を出ださないでやってみる。
んじゃ、ダイアブレイクで」
両の手首に白銀の腕輪を装着したノム。
杖は地面に置き、前に突き出した両の掌から、封魔の魔力を放出し、水色のコアが生成される。
そのコアの出来栄えをしげしげと観察したのち、放出動作を行った。
小さな氷塊がキラキラと砕け散る。
「どう?」
「ちょっと、待って」
そういうとノムは腕輪を外し、再度封魔の魔力の収束を始めた。
放出まで行うと、実験結果が発表される。
「腕輪があったほうが、魔力収束時に体内から体外へ魔力を流しやすい気がする。
魔力効率がアップする」
「おお!
使えるんじゃないの!」
「でも、杖のほうが断然使いやすい」
「さようですか」
落胆の結論が導き出された。
しょぼーん・・・
「この腕輪の能力が私の杖より低いものあるけど。
何よりも、私がこの腕輪を真の意味で使いこなせていないというのが大きい。
装備するだけで魔力効率は上がるけど、それだけではサブアクセサリーとしての役割でしかない。
腕輪の本当の能力を引き出せてはいない。
腕輪自身に魔力を収束させることもできるかもしれない。
しかし、使いこなすには訓練が必要。
あと。
なんとなく、私に合ってないような気がする。
エレナ、私って何の武器が合ってると思う?」
「ノムは何の武器を持ったって、かわいいよ」
「見た目のことは、聞いてない」
「武器って何があったっけ?
槍、斧、大剣、刀、杖以外で」
「他にも、いろいろあるけど、まず最初に挙げたいのは、『弓』。
槍、斧、大剣、刀、杖に続く第6の武器と言われる。
使ってる人も結構たくさんいる」
「弓かー」
「魔術との相性も良い。
特に、光術との相性は抜群。
弓闘士の戦闘スタイルは、初心者は矢に魔力を収束させて放出っていうのが多い。
このとき、基本的に矢は使い捨て」
「まあ、矢の使い回しはできないよね」
「でも、矢を使わないで、シュート系の放出魔術を魔法の矢として使用する戦闘スタイルもある。
弓の持つの魔力増幅効果と魔力制御補助効果が得られるから、通常の魔術使用よりも高効率。
そして最終的には、基本は魔法の矢で攻撃して、強力な攻撃を実現するために実物の魔導工学的な細工が施された矢を使うという戦闘スタイルとなる」
「本物の矢の本数が少なくてすむなら、1本にそれだけのコストを掛けられるよね」
杖と同じく後衛向けの武具。
遠距離から一方的に攻撃できる利点は計り知れない。
「弓の次にポピュラーな武器は?」
「うーん。
弓の次となると、マイナーなものになってくるかな。
列挙すると・・・
普通の剣、短剣、腕輪、ガントレット、グリモワール、弩、棒、メイス、魔石、印譜、鞭、薙刀、大鎌。
エトセトラ」
「いろいろあるね」
「というよりも。
それ自体が殺傷能力を持たなくても、魔力が宿っていれば武器になる。
グリモワールがその典型だけど。
つまり、どんなものだって武器になる。
魔力の宿ったぬいぐるみが、凶悪な魔力を持っていた、みたいな話もある」
「建物とか?」
「動物とか」
「人とか」
半分冗談のつもりで言った言葉。
それをノムは否定しない。
非道な禁呪は確かに存在しているのだろう。
湧き起こる畏怖の念。
想像することもためらわれる。
そんな気持ちを察したのか、ノムが話題を変えてくれる。
「魔力が宿った武器を、降魔武具、魔武具と言う。
逆に、魔力を制御しやすいように魔導加工された武具を、魔導武具と言う」
「魔剣とか魔槍って言われるのとか、まさに前者だよね」
「武器に魔力を宿すというのは、世界有数の魔導技工士ですら難しい」
「魔剣っていうのは現代の技術で造れるものじゃない、っていうよね」
「つまり、古代に現代の技術をしのぐ技術、文明が存在した。
その証拠になりうるものかもしれない」
「神話の中では、魔剣を贈り物として上納する、みたいな描写がでてくるけど。
もしかするとそんな神秘的な過去があったのかもしれないね」
「ぬ」
武具の話が終わると、ノムは腕輪を外し、赤黒い長戦斧を装備した。
「腕輪は、このくらいでいいかな。
次、斧使ってみる。
んじゃあ、まあ、適当に」
『ちょっと散歩行ってくる』程度のノリで準備に入るノム。
「メガ・ヴォルト・ストライク!!」
<<バヂバヂバババッバババッバババッバババッ!!>>
繰り出された、雷の武具収束奥義。
それは雷姫セリスと比べ、全くもって遜色はない。
圧倒的再現力。
「いきなり武具収束奥義かよ!」
「うーん、セリスみたいにはいかないか」
「いや、いい勝負してたって!
っていうかノム、斧、合うんじゃない!?」
「やっぱ、やめる」
「なんで」
「見た目がダメ」
「なら最初からやめときなよ」




