Chapter18 武具収束奥義 (6)
【** エレナ視点 **】
「勝者、赤、エレナ!!」
勝利のアナウンスを受け、闘技場観客席の盛り上がりは最高潮へ移行。
その高潮の中にいる青髪少女へ勝利を自ら伝えたくて、高く右手を突き上げた。
それに対し彼女は、拍手で返してくれる。
遠距離コミュニケーションが成立したのち。
私は、アリウスの元へと駆け寄る。
「アリウス!
大丈夫っすか?!」
加減の余裕なく、全力を持って解き放った法陣魔術。
アリウスの魔術防御力は高い方だと考えているが。
そんな彼を気絶させてしまう程の威力があったのだ。
彼はうつ伏せで地に倒れこんでいる。
救護班の人が駆け寄ってくるのが横目で見える。
しかし、彼から漏れる魔力、漏出魔力が、彼はまだ死んでいないことを占めていており。
体がピクリと動いたかと思うと。
握りこぶしを作り、その拳で全力で地面を押して、ゆっくりと体を起こし、片膝を地についた。
「っつ・・・。
大丈夫だ」
今はまったくもって大丈夫そうには見えないが、治癒術をかけてもらえば数日中には回復するだろう。
並みの魔術師ならば全治何とか、のところ。
元の魔法防御力の高さもあるが、プラスして、雷を浴びる瞬間にその防御力を魔術で増補していた。
そんな気がする。
「なんかすいません。
自分でやっておきながらですけど」
「法陣魔術なんて、いつ覚えたんだ」
「いや、最近」
「間合いさえ取っておけば・・・。
そう思って油断した。
俺も、まだ、未熟だ」
彼は俯く。
どちらが勝ってもおかしくない試合であった。
悲観する必要性は全くない。
彼の力は、間違いなく本物だ。
「俺のことは気にするな」
「いや、なりますって、さすがに」
「大丈夫ですか?
救護を行いますので」
「エレナちゃん、超ー素敵だったよー。
よかったら、今度お茶しない?」
「こら、アシュター。
仕事しろ」
「うーっす」
アシュターを含めた救護班の人が来てくれた。
彼らの技量は、本日、観客席から何度も見せてもらっている。
後は、彼らに任せよう。
「エレナ、いいから戻れ。
決勝まで、体を休めろ。
次の相手は、強い」
「そうっすね。
ごめんなさい。
また今度、話しましょう」
「俺と?」
「アシュター!」
「それじゃ」
*****
「1時間の休憩を挟んでの決勝になります。
5分前までに、東側の入場門へお越しください」
「わかりました」
係員さんからの説明を受け。
さて、ノムのところにでも行こうかな。
「ぬ!」
「って、ノム!
いたの!?」
振り返った瞬間に青髪。
下階まで降りてきてくれていた。
お出迎え感謝です。
少しの間、見つめ合い。
その後、彼女は、ゆっくりと私に近づき。
そして私の体を、その双腕で包み込む。
「えっ?」
突然の抱擁。
体がぽかぽかと温かい。
じんわりと、癒されていく感じ。
すごく、落ち着く。
ノムの体温で温かい。
それだけではない。
「ヒーリング、かけといたから」
「おー、ありがとう。
体、少し楽になったかも」
アリウスから受けた魔導の矢の痛みも、かなり和らいだ。
「法陣魔術、使っちゃった」
頭を掻きながら、申し訳なさそうに報告した。
「いいんじゃない?
でも、これで、エレナも間違いなく有名人」
「おおっ!」
「すべての対戦相手から細かくデータを取られる。
相手が、最初から全力で臨んでくるようになる」
「最悪だね」
「でも、勝ちたかったんだよね。
だからしょうがない」
「まあねー」
私の上を飛んでいた、2人の魔術師達。
その存在を乗り越えて。
私は2段、高い位置に登ったように思う。
そして。
残るステップは、あと1段。
「もう、腕輪とかどうでもいいから」
ノムは、『どうでもいい』とかいいながら、笑みを見せてくれる。
「棄権しろって?
まあ、ここまできたら、もう引くつもりないけどね」
「そうじゃない。
勝っても、負けてもいいから。
私に近づいてるとこ、見せて。
見たいから」
「おうっ!」
*****
ずっとノムに守られてばかりだった私。
考えてみれば、昔から。
ずっとそうだったな。
早く、もっと、強くなって・・・
ノムの、隣に並びたい!
「エレナさん、時間です」
「行くかっ!」
*****
相手は既に待ち構えていた。
セリス。
赤黒い色の長髪。
ダークブラウンのロングコート。
短い丈のショートパンツ。
黒色網々のオーバーニーストッキング。
100人に聞けば100人が美女と答えるであろう、端正な顔立ち。
紫色の瞳。
私を貫く鋭い視線に、神秘的な何かを感じ取る。
私の容姿確認が完了し、お互いの視線が再度交わった後、彼女は口を開く。
「お願いしたいことがある」
「なんですか?」
「棄権して」
「断ったら」
「そう。
なら・・・。
死んでも、向こうで文句を言わないで」
強烈な宣告。
それが冗談ではないことは、私にも伝わっている。
私と彼女は、しばし見つめ合う。
・・・
きれいな人だなー。
彼女の表情の冷たさが、氷の華を思わせて。
怖いとか、なんかそんな気持ちが、上書きされて消えてしまった、のかもしれない。
「文句は、言わないっすよ。
死なないんで」
「そう」
説得を諦めた彼女にスイッチが入り。
武器の雷斧が、バチバチと音を立てた。
始まる。
「本選決勝・・・。
はじめっ!!」
*****




