Chapter18 武具収束奥義 (2)
闘技場トーナメントBランク、当日。
本日は予選。
2回戦まで行われ、32人の出場者が8人にまで絞られる。
「えーっと、予選のトーナメント表はー、っと」
闘技場の受付でトーナメント表を探す。
一際人が集まっている区画にそれは設置されていた。
アリウス&ミーティアとは、別のブロックでありますように。
聖女マリーベルに祈りを込めて。
A、B、C、D、E、F、G、H。
8つに分けられたブロックを1つづつ確認していく。
アリウス、Aブロック。
セリスさん、Dブロック。
ミーティアさん、Eブロック。
エレナ、Hブロック。
よかった、よかった。
戦力がうまく分散した。
そんで、わたしの1回戦の相手は誰かな~、と。
私の隣に書かれた名前は・・・。
『イモルタ』
・・・。
失礼な話だが。
正直、ちょっとほっとしました。
*****
「また・・・強くなってやがる」
得意の炎術に加え、風術や光術を習得していた武具店店主。
戦略のバリエーションは、数倍倍増されていた。
しかし、それらはあくまで牽制用途。
攻撃威力は高くなく、防衛魔術でいくらでも対応できる。
致命的なのは炎と斧の術技、強化火炎撃のみ。
その点は以前と変わらない。
一方で私は、六属性の六点収束をバランスよく操り、相手の体力ゲージをジワジワと削っていった。
私が扱うほぼすべての魔法が、対人戦初使用。
未知であることの恐怖が作る混乱が、相手の策略を打ち砕いた。
卑屈な笑みをたたえ睨みをきかすイモルタに向けて一礼。
確かな手ごたえを握りしめた掌の中にしまい込み、私はステージを去った。
*****
「エレナ、どうだった?」
2回戦も危なげなく勝利をおさめ、帰宿の途に着こうとした時点。
闘技場の入り口で先生が待っていた。
「ノム、今日は見てくれてなかったの?」
「なんか弱い人が相手みたいだったから。
他のブロックもあって、試合間、結構待ち長そうだったし」
「さようですか」
まあ確かに、大して苦労はしなかったのだが。
ノム先生の予想通りとも言える。
「でも明日は見る。
可能ならば、エレナ対アリウス戦、エレナ対ミーティア戦、両方見たい」
「それ、私にとってはワーストケースだね。
そっちの分岐を回避できるように、今日はマリーベル様にお祈りしてから寝ようかな」
*****
Bランクトーナメント、本選。
本選出場者は8人。
その対戦組み合わせはくじで決定。
そして、トーナメント表が以下のように出来上がった。
Aブロック
セリス vs ガスト
ディルガナ vs フェンデル
Bブロック
ミーティア vs エレナ
アリウス vs コーファ
張り出されたトーナメント表を冷静に見つめ、内容を自分の脳に落とし込む。
なるほど、なるほど。
最悪だ。
ミーティア、アリウス、セリス嬢。
全員あたるし。
「これは面白いかも」
「面白くないし!」
隣で見ていたノムが、お気楽そうに楽しそうな感じ。
日頃ないワクワク感が表情にほんのり浮かぶ。
たのしそうな。
そんなノムの向こう側から、当の対戦相手がやってきて、トーナメント表に視線を向ける。
その確認動作は一瞬で完了し、すぐにその視線は私に送られる。
「エレナ、よろしく~」
私と同じくアリウス、セリス嬢との対戦がほぼ確定しているにも関わらず、彼女はいつもどおりの弱卑猥顔である。
「準決勝がアリウスで、決勝がセリスだからね。
初戦のエレナで油断して削られすぎないように、最初からぶっ飛ばしていくからね」
「あははー。
安全運転の方がいいと思いますよ」
緊張感はまるでなく。
試合前とは思えない落ち着きぶり。
それは視覚情報からだけでなく、オーラサーチを受けての判断である。
改めて、『読みにくい』人物だと感じた。
イモルタとは比較にならない厄介さが、間違いなくそこに存在している。
*****
Aブロックの試合が始まった。
と、思った次の瞬間には試合が終わっていた。
マジで!?
「勝者、赤、セリス!」
私は今、東の入場門の前で待機中。
その門から威風堂々と入場した戦士ガスト氏は、セリス嬢の速攻により一撃で沈められてしまった。
本当に一瞬の事で、状況確認、情報収集が間に合わなかった。
推測するに、雷の魔術だと思われる。
この点、上から観戦しているはずのノムに、後で確認を取りたいところだ。
とにかく、セリス嬢が只者ではないことだけは分かった。
もう少しガスト氏が粘ってくれていたら、敵情報も増えていたのだが。
残念。
ガスト氏が救護班によって場外に搬送されると、すぐに第二試合が始まる。
東西、両門から選手が入場。
西のディルガナ氏は、魔術師。
武器は杖。
遠距離戦にはめっぽう強そうだ。
東のフェンデル氏は、重騎士。
武器は大剣。
近距離戦にはめっぽう強そうだ。
相反する2者。
勝ち進んだのは。
「勝者、赤、ディルガナ!」
魔術師ディルガナ氏が勝利した。
敗因を一言で言えば、フェンデル氏が重すぎたのだ。
勝因を一言で言えば、ディルガナ氏が身軽であったのだ。
敏捷性の差が勝敗を分けた。
結局、フェンデル氏の剣は、一度もディルガナ氏に届かなかった。
さらにディルガナ氏は6属性のバランスも良い。
攻撃のバリエーションの多さがフェンデル氏の思考回路を焼ききったとも言える。
なかなかに厄介な相手だ。
「本戦Bブロック、第一試合出場者の方、お入りください」
「さて、次は私か」
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か・・・。
観客がすごい。
Cランクの比じゃない。
立ち見の人もいるし。
溢れんばかりの観客が、闘技場を埋め尽くし。
割れんばかりの声援が、地面と建物を揺らしていた。
「ミーティアちゃん、がんばってー!」
「ミーティアちゃーん、付き合ってくれー!」
「ミーティアちゃーん、殺っちゃえー」
驚くべきはミーティア人気の高さだ。
私の人気がない、とも言う。
哀愁すごい。
「エレナ!
全力で行くからね」
闘技場受付のお姉さん。
その肩書きは今はなく。
圧倒的な桃色のオーラを放ち、第六感を大きく揺さぶる。
笑顔の威圧。
若干の恐怖。
本当に。
この人に私は勝てるのか。
卑屈が心を支配して。
逃げ出しそうなそのときに。
あの日と同じ、東の入場門の真上。
その絶好のポジションで、青髪少女を見つけた。
プレゼント・・・するからね。
「私も、全力で行きます!
ミーティアさんを倒します!」
決意は固まり、声高々に宣言する。
「上等!!」
「本選Bブロック、第一試合、はじめっ!」
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