表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/94

Chapter18 【魔術補足】 従属情報と空間魔力収束

「エレナ、何の本読んでるの?」


 私は読んでいた本を閉じ、改めてそのタイトルを確認する。


「『基礎魔術原理』だって。

 魔法の基本原理を説明する内容、みたいな」


「エレナもだんだん、難しい内容が理解できるようになってきたみたいだね」


「でもこの本には、今までノムに教えてもらった範囲の内容しか書いてないけどね。

 まあ、復習、みたいな」


「具体的にはどんな内容?」


「『魔術はどうやって実現されるのか』、について書かれてる。

 まず、この世界の空間中には、およそどんな場所にも、プレエーテルが存在している。

 ちなみにプレエーテルは、物体でなく、気体でもない。

 『エネルギー体』って言われている。

 触れることのできないエネルギー。

 接触不能、攻撃不能なエネルギー、と表現されたりする」


 ノムは特に不思議な顔はせず、わずかに頭を縦に揺すっている。


「魔術師はプレエーテルを体内に取り入れる。

 体内でプレエーテルは『魔力』に変換されて蓄積される。

 魔術を使うときは、その魔力を再びプレエーテルに変換する。

 そこから、例えばエーテルの魔術を使うとしたら、エーテル変換でプレエーテルをエーテルに変換する。

 攻撃魔法としての役目を終えたエーテルは、再びプレエーテルの状態に戻って、空間中に拡散してゆく。

 こんな感じで、プレエーテルが体内で魔力になって、体外でエーテルになって、最後にまたプレエーテルに戻るサイクルを『魔力輪廻(りんね)』っていう。

 ・・・。

 ・・・。

 もしかして今、私、ノムに『魔術』を教えた!?」


「今の話は、全部知ってたけどね」


「さようですか。

 ・・・。

 でも、ということは。

 私が今説明したことは、間違ってない、ってことだよね」


「魔術の原理については厳密には解明されていないから、絶対とは言えないけど。

 おそらく、今の説明で正しい」


「はい!

 先生、ここで質問があります」


「ぬ」


「何で一回わざわざ体内に魔力を蓄積しないといけないの?

 空間中にプレエーテルがあるんなら、それを使って魔術を実現すればいいんじゃないのかね?」


「じゃあ、やってみたら?」


「え、あれ?

 どうやってやればいいんだろ?

 全然イメージできない」


 体内の魔力は私の意思に従って、その姿形を変化させてくれる。

 しかし、空間中の魔力に向けて『動け』と念じても、『イエス・マム』とは言ってはくれない。

 空間中の魔力に対するアクセス制限がある状態。

 コミュニケーション能力の欠如。


「エレナが魔術を実現するとき、体内に蓄積された魔力は、比較的思うとおりに操作できるよね」


「うん」


「でも空間中の魔力は操作できない。

 それは魔力が『従属情報』を持つから、と言われている」


「従属情報?」


「体内への魔力の蓄積は無意識的に行われるけど、このときに魔力自体に『この魔力は私のものです』という情報が、自動的、無意識的に書き込まれる。

 そして自身の従属情報を持った魔力、つまりプレエーテルは、操作することができる。

 でも空間中の魔力は、従属情報を持っていないから操作することはできない。

 さらに従属情報は、攻撃後、つまりエーテルがプレエーテルに戻るときに消滅してしまう。

 攻撃後のプレエーテルは、空間中のプレーテルと同じように従属情報をもたない状態となり、空間中に戻ってゆく。

 だから、魔術使用後に空間中に残ったプレエーテルを、直接再利用することはできない。


「そうなんだ」


「再利用するには、従属情報を書き込む目的で、術者体内に魔力を蓄積させる必要がある。

 故に、空間中の魔力を使って魔術を使い放題、っていうことはできない。

 ちなみに、余談だけど。

 収束、放出、制御を行うときには、魔力に対して収束情報、放出情報、制御情報という情報を書き込む。

 これらの収束情報、放出情報、制御情報、及び従属情報を合わせて『情報構成子』と呼ぶ。

 一方で、その情報を書き込む対象である魔力、プレエーテル、エーテル、アンチエーテルのことを『魔導構成子』と呼ぶ。

 以上、余談でした」


「なるほどねぇ」


 体内に取り込める魔力には限界がある。

 結果的に人間の成せる魔術にも限界があるのだ。

 なんでもかんでもできるわけではない。

 

「が、しかし。

 この話には続きがあるの」


「ぬぇ?」


「『空間中の魔力を収束できない』、と思われていたのは最近までであって、実は空間中の魔力を直接収束する方法があることがわかってきた。

 それが『空間魔力収束』。


「空間魔力収束?」


「空間中のプレエーテルを体内に蓄えずに、そのまま使用する魔術実現法。

 従属情報の仮説が正しいのなら理屈は簡単で、空間中の魔力は術者の従属情報を持たないから操作できない。

 ならば、従属情報を持たせればよい」


「そんなことできるの!?」


「実際、私もちょっと前にできるようになった。

 でも、習得はかなり大変。

 最初は、収束できる魔力量も微々たるものだったから、本当に従属情報が書き換わっているか、っていう判断ができなかったから。

 実際今も、どうやって実現しているかをうまく伝えられない。

 それに収束できる魔力量も微小でしかない」


「『無限の魔力』みたいにはならない?」


「それは無理そう。

 空間魔力の従属情報書き換えは、体内に蓄積して書き換える方法よりも遅い。

 現状では、魔力収束に時間がかかる。

 どこまで上達するかは、これからの訓練次第と思われる」


「そっか」


「でも空間魔力収束を使えれば、体内の魔力をほぼ消費しないで魔法を使える。

 体内の魔力を使い切っても魔術を使用できる」


「それって、MP(マジックポイント)が増えた、とも言えるよね」


「さらに従属させた空間魔力を自身の体付近に持っていけば、体付近に吸収しやすい魔力が集まって、結果的に魔力の自然回復力を高めることができるらしい。

 これを『空間魔力吸収』という」


「つまり、魔力を意識的に回復できるってことじゃんか!

 すごい!」


「まあ、回復できる魔力は、最初は微々たるものだけどね」


 ノムでも習得に苦労する技術ではあるが、それを習得したときのリターンは大きそうだ。

 今度から練習してみようと思います。


「また、さらに効率的に空間魔力を収束させる方法が存在する。

 それが『強制従属』。

 これは空間中の魔力の従属情報を書き換えずに、自身の魔力で空間魔力を押さえつけて制御できるようにする技能」


「・・・」


「強制従属に使用しやすい魔力の種類が存在する。

 それが残留魔力。

 例えば、比較的大きな魔力を持った魔術師が亡くなったとき、情報を多く持った魔力が空間中に残される。

 これが残留魔力となる。

 この残留魔力を用いた魔術を何って言うか、わかる?」


「知らない」


「黒魔術。

 つまりは闇魔術。

 残留魔力を使用し続け、特にその魔力を空間魔力吸収し続けると、術者の人格がだんだん変化してくる。

 魔力に精神を侵食される、とも言う。

 多くの場合、多量の魔力を残留させる魔術師は、あんまり良い魔術師でないことが多いの。

 だから、黒魔力、つまり残留魔力を用いる人間の人格は悪しきほうに流れてゆく。

 と言われている」


「だから、マリーベル教会で禁止されているんだね」


「結論。

 強制従属には手を出さないこと。

 まあ、普通は出来ないけどね」


「でも、エルノアはできるのね」


「そういうこと。

 黒魔術を使ったからといって、必ず人格に支障をきたすって訳ではないみたい。

 使い方とか、術者の免疫とかも関係する」


「うーん、まあ使わないに越した事はないかな」






*****

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=721491859&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ