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Chapter17 法陣魔術 (3)

 ノムから法陣魔術習得の許可をもらった私は、再び北東部の緑の丘にやってきた。

 ただし、今回は荷物が多い。

 この場所に拠点を置き、泊りがけで習得訓練を行うのだ。

 つまりは野宿。

 9ヶ月ぶりに旅の荷物を引っ張りだし、久しく忘れていたサバイバルの知識を思い出した。


「雨降ってきたらどうしよう」


「今日は降らない」


「まあ、今日は、ね。

 とにかく、がんばるっきゃないか」


 数日で習得できるとは思っていない。

 だからこそ、少しの時間も惜しい。

 私は早速、修行の準備に取り掛かった。


「んじゃ、全属性一通りやってみて」


「了解」


 魔導術から、順々に。

 魔法陣を描き、そこに魔力を流していく。

 魔法陣の描画に関しては、事前準備の甲斐あり問題なし。

 しかし、魔法陣内に魔力を流しても、魔力が収束されている感じがしない。

 1回魔術を試みるだけで、ありったけの魔力を消費してしまう。

 魔法を放っていないのに、魔力があっという間になくなる。

 魔力を捨ててる、とも表現できる。


 自然魔力治癒力による自動回復をゆっくりと待ちながら、次の属性を試していく。

 しかし、どの属性でも、結果は同じであった。


 最後、雷の法陣魔術も失敗。

 想像以上の苦戦。

 魔力枯渇からくる疲労感で、私は限界を迎えていた。


「あかん」


「んー、でも法陣はちゃんと描けるようになってるね。

 すごい、すごい」


 ノムは小さく手を叩きながら、労いの言葉をかけてくれる。


「結構、がんばったからね」


「どの属性がやりやすかった」


「雷術、アークスパークかな。

 やっぱり得意属性なだけはあるよ。

 魔力消費は激しいけど、これが最適解な気がする」


 些細な違いではあるのだが、雷術のときが一番魔力を収束できているような気がした。


「んじゃ、アークスパークを習得する方向で」


「その前に、休憩させて。

 しんどい」






*****






<<バギギギギギバギギッギ!!!!>>


 空間を切り裂くような炸裂音が響き渡る。

 生成された青い稲妻が暴龍のように暴れまわる。

 その龍に一度捕まれば、身動きを封じられ、そのまま身を焼かれるだろう。

 これが、雷術の秘奥。

 アークスパークだ。


「うん、まあ結構、いい感じ」


「そりゃあ。

 ノム先生が発動しているからね」


 ノムがお手本としてアークスパークを見せてくれたのだ。

 残念、私ではありませんでした。


「私も、ただ見てるだけじゃつまらない。

 せっかくこんな街から離れたとこまで来たんだから。

 法陣魔術の訓練なんて、なかなかできないし。

 私も一緒に練習する」


 休憩後、私はアークスパークに数回挑戦した。

 が、変化なし。

 辺りを見渡すと、もう日も暮れかけていた。

 夕日に照らされる丘陵も美しい。

 オレンジ色のまんまるを視界の中心に置き、私は癒しを求める。

 そして、深くため息をついた。


「はぁ・・・。

 やっぱり、一日じゃあ無理かー」


「それが普通」


 野宿決定。

 私達は、晩御飯の準備に取り掛かった。






*****






 アークスパーク、チャレンジ開始から1週間が経過。


 ・・・


 残念。

 持ってきていた食料が底を尽きました。


「どうしようか」


「んじゃ、街に帰る」


「まあそうだよね。

 ごめんねノム。

 なんかこんなのにつき合わせちゃって」


「大丈夫。

 これもこれで、結構楽しい」


 私が修行をしている間、ノム先生は自分も魔法の練習をしたり、持ってきていた本を読みふけったり、散歩したり、食べられるものを探しに行ったり、私を適当に応援したりしていた。

 あまり苦になっていないようで安心した。


「ありがとう、ノム。

 でも、希望がない、わけでもないんだよね。

 少しづつ、進歩している」


 この1週間で、私は魔法陣に魔力が収束されてきている感覚をつかんでいた。

 まだ、完璧にはほど遠いが。

 しかし問題は収束ではなく、『放出』にある。

 収束後の魔力を放出しようとしても、うんともすんとも言わないのだ。

 『エレナはアークスパークの魔法を唱えた、しかし何も起こらなかった』、状態だ。

 この感じからすると、習得まで後2ヶ月はかかるであろう。

 1回の遠征で1週間なので、あと7回ここに来ないといけない計算。

 なんとか、楽ができる裏道はないのかしら?


「前から思ってたんだけどさ。

 私の描いた魔法陣に、ノムの魔力を流すとどうなるの?」


「どうにもならない。

 私の魔力を、エレナは操作できない」


「なんで?」


「魔力が従属情報を持つから。

 私が生成した魔力には、『私のもの』という所有情報が書き込まれている。

 その魔力をエレナが操作しようとしても、所有者が異なるという理由で操作対象にはならない。

 エレナの魔力は、エレナしか操作できない」


「ぬぅん」


 私の描いた魔法陣に、ノムの魔力を流し、私が放出動作を行うことで、魔力的に楽をしようという(たくら)みは、もろくも砕け散った。

 『地道に正攻法でいくしかない』という結論に納得したところで、私たちはウォードシティーへ帰還した。






*****






 法陣魔術習得開始から、2週間経過。

 収束動作に関してはおよそ完璧。

 放出動作に関してはわずかに魔力が反応を示すようになっていた。


 3週間が経過。

 放出動作により、微弱ではあるが雷の魔力が音を立てるようになってきた。


 4週間が経過。

 法陣の部分部分で、単点収束レベルの雷が発生するようになった。


 5週間経過。

 法陣のおよそ全体で雷が炸裂。


 そして、6週間目、最終日。

 一晩しっかりと睡眠を取り、魔力を最大回復。

 次の1回の試行に、今までの全てを注ぎ込む。


「エレナ。

 改めてポイントを復唱しながら、ゆっくり、集中してやってみて」


「うぃっす」


 多く息を吸い込み、深く吐き出す。

 武器の槍を高く掲げ、精神統一を行う。


「まずは、魔法陣描画。

 魔術光を操作し、青い光で魔法陣を描く。

 大きさは直径5メートル程度。

 描画完了を確認し、魔力、プレエーテルをこの中に流していく。

 魔法陣全体に魔力が行き渡るように」


 魔法陣の上の空間が青く輝きだす。

 その視覚情報から、収束動作が正常であることを確認できる。

 さあ、私が持つすべての魔力。

 この魔法陣に集まりなさい。


「今までで一番いい感じ」


 収束完了。

 美しく輝く魔法陣は、暴発寸前なほどの魔力で満ちている。

 あまり長くは保てない。

 さあ、最後に放出だ。

 

「プレエーテルの属性変換と放出動作を同時に行い、魔法を発動する」


 魔術成功に祈りを込めて。

 今、私のすべての経験を。

 この1撃に!


「アークスパーク!!」


 高らかに、その魔術名を叫ぶ。

 瞬間、魔法陣が青い光を拡散させる。

 バギバギッという炸裂音を響かせて、(あお)の稲妻が(あふ)れ出す。

 その稲妻は、美しくも恐ろしい蒼の華。

 空間中を支配して。

 埋め尽くして。

 雷の監獄。

 内部からは、決して逃れられない。

 

 発動される魔法を、襲ってくる魔力圧に耐えて観察しながら、様々な思考が湧いて出てきた。


 ・・・


 そして。

 青の火花は儚く消えて。

 まるで、夢の中にいるような。

 そんな気持ちから覚醒し。


 奥底から沸き起こる興奮は。

 伝えたい彼女へ向けて。

 

「できたーーーーー!!」


 彼女に駆け寄り、強く抱きしめる。

 自分の抱く感謝の念を、言葉以外の方法で伝えようと。


「すごく良かった」


 短い祝福を耳元で囁き、彼女も軽く抱きしめ返してくれる。


「ありがとう。

 ノムのおかげだよ」


「そうだね。

 でも、エレナも頑張った」


 その優しい声に心が落ち着く。

 そっと目を閉じると、過去の出来事が思い出された。


 長いような、短いような。


 つらかったような、楽しかったような。


 複数の感情が交錯し。


 ・・・


 これが『最後の』魔術であることが。

 とても惜しく感じられ。


 ・・・

 

 しばしの抱擁のあと彼女から離れると、私は提案する。


「ノムにお礼がしたいから、何か欲しい物があれば言って。

 プレゼントするからさ」


「むー、どうしよう・・・」


「かたたたき券とか?」


「なにそれ」


 私の適当な冗談の後、ノムは思考を巡らせ始めた。

 何が出るかな。

 何が出るかな。

 何が出るかな。

 テレレレン。


「そうだ」


「なになに?」


「じゃあ、『蓮華(れんげ)の腕輪』がいい」


「『蓮華の腕輪』・・・ってどこに売ってるの?

 あんまり高いと買えないかもだけど」


「売ってない」


「んじゃあ、どこで手に入るの?」


「・・・。

 闘技場。

 闘技場、Bランクトーナメント」

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