Chapter17 法陣魔術 (2)
「今月は、魔術強化月間とします」
宿へ戻ってきた後、ノムがそう宣言した。
疑う余地なく、私はまだ法陣魔術を習得可能な魔力レベルに達していない。
そこで、先生との面談を行い、結果、魔術の鍛錬に集中する期間を設けることにした。
次の日、私はさっそく闘技場の次ランク、B3にエントリー。
このランクは以前ノムと一緒に観戦した、武具店店主イモルタがエントリーしたランクであり、相手モンスターの面は割れている。
1戦目、槍を操る灰色の人獣、アッシュコボルド。
2戦目、巨大な黒い蛇の魔物、グロウスネーク。
3戦目、赤い体毛を持つ狼、レッドクリミナル。
4戦目、風術を操る死霊、メイジ。
5戦目、物理攻撃も魔術攻撃もで可能な魔物、レッサーデーモン。
事前に立てた対策どおりに事が運び、問題なくクリアすることができた。
次の日、続いて闘技場の次ランク、B2にエントリー。
1戦目、槍を自在に操る金色の人獣、エンゼルコボルド。
2戦目、見た目によらないパワーとスピードを持つ白いモグラの魔獣、パコタロス。
3戦目、さらに続いて赤いモグラの魔獣、ギガパコタロス。
4戦目、雷の魔力の結晶、雷の魔術を使う精霊、ヴォルト。
そして5戦目。
現れたのは、先日ノムが操作した、青色塗装のエーテルゴーレム。
このときは、闘技場ステージの外側で操作を行なっていたが、本日は本来の持ち場、北門上部に陣取って操作を行うはず。
故に、操作者が誰なのかを確認はできない。
しかし、操作者はアシュターではなくシエルであると予測した。
動き始めたゴーレムの動きを見ての判断である。
ただ、先日の戦闘時と比較すると、若干手加減されている気がした。
なんか癪。
まあ、闘技場のランクに合わせてレベルを調整しているのであろう。
そんなこんなで無事撃破。
そして私は次の日から、魔力を強化するためにランクB3とB2へのエントリーを繰り返す。
また空いた時間で魔術光で魔法陣を描く練習を行った。
1週間程闘技場へのエントリーを繰り返すと、お財布事情がたいへんほっこりしてきた。
検討の結果、私はそのお金を『エレメント』につぎ込むことに。
理由は2つ。
1つ目の理由は、エレメントは武器のように荷物にならず収納持ち運びが容易なので、今後の旅にも持って回りやすく、またお金が欲しいときにはこれらを売ってしまえばよい。
宝石でもあるエレメントは、資産運用法として最適であったのだ。
最初に、封魔のエレメントであるレアクリスタルを15,000$で購入。
立て続けに、炎のエレメントであるフレアエレメントを30,000$で、
光のエレメントである翡翠を70,000$で、
魔導のエレメントであるダークレギオンを100,000$で、
風のエレメントである蒼碧の宝珠を300,000$で購入。
内に秘めた私の収集欲が爆発し、大散財する結果となってしまった。
2つ目の理由は、ズバリ新術習得だ。
私は、今習得可能であろう新術の習得条件をノムに教えてもらっていた。
覚えたい術の属性を重点強化するため、エレメントが必要であったのだ。
まず習得すべきは基本六点収束魔術。
炎の六点収束魔術であるハイバーストは既に習得済み。
魔導、封魔、光、風、雷の六点収束魔術は未習得だった。
魔導の六点収束、ハイエーテルは、通称デモンシザーズ。
習得条件は『魔導Lv22、収束Lv19、放出Lv20』。
悪魔の爪のような巨大な魔導属性の刃が空間を切り裂く魔術だ。
封魔の六点収束、ハイダイアブレイクは、通称ハイフリーズ。
習得条件は『封魔Lv23、収束Lv23、放出L23、制御Lv23』。
巨大な氷塊が砕け散る、見た目も美しい魔術だ。
光の六点収束、ハイレイは、通称ブロードレーザー。
習得条件は『光Lv22、放出Lv21』。
極太のレーザーを放出し、空間を焼き尽くす魔術だ。
風の六点収束、ハイウィンド。
習得条件は『風Lv21、収束Lv19、放出Lv24』。
空間全域に風の刃を発生させる、超広範囲攻撃魔術だ。
雷の六点収束、ハイスパーク。
習得条件は『雷Lv23、収束Lv23、放出L20、制御Lv25』。
実現には高い魔術制御技能が求められる、超高火力魔術だ。
六点の基本魔術を習得後、さらに応用的な魔術に取り掛かる。
風風雷の三点合成魔術、スパークウェイブ。
習得条件は『風Lv23、雷Lv21、放出Lv23』。
攻撃力は劣るが、広範囲に雷の魔力を拡散し攻撃することができる。
また、風風風雷雷雷の六点で収束することでさらに強力になる。
炎の応用三点収束魔術、ファイアサークル。
習得条件は『炎Lv18、収束Lv16、放出Lv16、制御Lv16』。
術者の周囲に炎の輪を発生させる。
敵から自分を隔離することができるので、防衛用魔術としても有用だ。
また、六点で収束することでさらに強力になる。
炎と封魔の混合術、双龍波。
習得条件は『炎Lv23、封魔Lv23、放出Lv25、制御Lv22』。
炎と封魔の2つのコアを同時に収束。
合成せずに同時放出することで、2匹の龍に見立てた魔術の槍を放つ。
並列収束になり魔力効率は下がるが、相手は炎と封魔の2属性を防御する必要があり、魔術的防衛が難しくなる。
雷の応用六点収束魔術、ヘヴィスイープ。
習得条件は『雷Lv26、放出Lv25、制御Lv23』。
一点収束のライトスイープの強化版。
術者前方に雷の魔力を拡散放出する。
射程は狭いが、攻撃範囲は広い。
魔導と雷の合成魔術、グラヴィティ。
習得条件は『魔Lv25、雷Lv24、収束Lv25、制御Lv23』。
魔導属性は制御力が高いため、より高い制御性を持った雷を生成することができる。
これを広範囲に拡散放出することで、相手の動きを一時的に封じることができる。
ここまでで全属性バランスよく新術習得ができた。
ここからさらに、槍の武具収束術技の習得に乗り出す。
まずは、Cランクトーナメントで相手の風魔術師が使用していた、ウィンドショットをラーニング。
高圧収束した風の槍を放つ、高射程の術技だ。
さらに、私の最も得意な技である雷の術技、サンダーランス。
槍に込めた雷の魔力を、相手に向けて槍のように飛ばす術技だ。
六点収束雷術を習得したことで、この術技をさらに強化することに成功していた。
ウィンドショット程ではないが、雷の術の中では長い射程を持ち、間合いを取って戦いたい場合に非常に有用な術技となっている。
ここまでの術と術技を習得した時点で、魔術強化月間は終了。
並行して行っていた魔術光での魔法陣描画も習得し、充実した一ヶ月となった。
さてさて。
そろそろ、いけそうかな?
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