Chapter17 【魔術補足】 特殊な法陣魔術
「ノムー、本ありがとう」
先日の法陣魔術の講義の際、私はノムが自身で綴ったノートを見せてもらった。
そこには法陣魔術のデザインのみならず、魔術に関する様々な事柄が書かれており、今魔術を学んでいる私からするとお宝本であった。
さっそくこれをレンタルし、朝から晩まで読みふけったのである。
「有用だった?」
「やっぱり、ノムすごいね!
知らないこと、いっぱい書いてあったし。
ただ、今の私の知識では理解不能なことも多かったから、また間を空けて、後日再度見せてもらえるとうれしいかも」
「ぬ」
「でさ、法陣魔術の話なんだけど。
私が教わった6つの法陣魔術の他にも、いろんな種類の法陣魔術があるみたいだね」
「そのとおり。
6属性の基本法陣は、みんな円形の『円法陣』だけど。
その他にも、四方法陣、六方法陣、八方法陣など多角法陣というのもある。
人によって、円法陣よりも多角法陣のほうが使いやすかったりするらしい」
「ノムのノートにも四角い魔法陣が載ってたよね」
「また、神聖術の法陣魔術、グランドクロスでは『十字法陣』と呼ばれるものを用いる」
「十字法陣?」
「十字型の法陣。
でも、ただデザインが十字なだけではない。
その十字の中心に術者が立つ。
術者自身に魔力を収束し、術者を魔術発動の中心にして術が実現される」
「死ぬって」
まったく持って意味不明。
自分に対して魔法を放つようなものであり、自殺行為そのものだ。
「そう思うでしょ。
私だって、今でも不思議。
でも実際に、それを私は使っている」
「どういう理屈なの?」
「私も完全に理解はしていない。
ただ、『従属情報の強さ』が関係するらしい。
自分に収束される魔力が、従属情報により自分という対象を認識し、攻撃の対象から外してくれる。
ただ単に豊富な魔力を持つだけでなく、従属情報の緻密制御ができて、初めて実現できる」
「従属情報かー」
「そこまでのリスクを負って実現されるこの魔術は、それに見合う以上の、絶大なる威力を誇る。
私が使える術の中で、最も高威力な魔術。
普通の人間に対して使ったら、消えちゃうと思う」
「消えちゃうって何だよ!」
「だから、エレナも速く私のグランドクロスを受け止められるようになって」
「私を消す気か」
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