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Chapter14 六点収束魔術 (2)

 1、2、3。

 上三角の三点収束。

 4、5、6。

 そして逆三角の三点収束を合わせる。

 補助収束により蓄積した魔力を6等分し、6つのコアを構成。

 6つのコアが六芒星を描く。


 そこから、さらに魔力を増幅させながら。

 炎術への変換と、6コアの合成を並列で実施する。


 6コアの合成で発生する反発力は、三点収束や三点多属性合成を優に越える。

 なぜここまで、ノムがこの魔術を私に教えなかったのか。

 そんな疑問を少しも感じさせないほどの実現難度。


 それでも。


 それを習得せんとする私も、昔までの私ではない。

 昨日まで、全くと言ってよいほど(まと)まりを持たなかった6つの魔力球が、1回の施行ごとに、一体化していくのを感じる。

 それは、魔力の制御力が上昇したということだけでなく、魔力が語る些細(ささい)な変化を感じ取ることができるようになったということを意味していた。


 6つのコアから感じる魔力。

 それが1つのコアから感じる魔力に変わり。

 炎の魔力球が完成する。

 それは、今まで感じだことのない。

 圧倒的な存在感を持った魔力球。


 これで、意図通りの収束であったのか。

 疑問の解を得るため、ノムを見つめて。

 彼女の笑顔が、その答えを教えてくれる。


 そして、再び前を向く。


「はっ!」


 魔力球放出。

 ワンテンポ挟んで炸裂。

 熱風と轟音を、空間中に撒き散らす。


 私が闘技場初戦で、エーテルゴーレムに対して放った一撃とは比べるまでもなく。

 あの日、初等魔術師(プライマリーウィザード)であった私は。

 ついに今、高等魔術師(ハイウィザード)にランクアップした。


「できました!」


「ぐっと」


「実はただの派手なトライバーストでした、とか言う?」


「6つのコアは、正常に合成されている。

 何より、威力十分」


「想定より早く習得できたかも」


「エレナ、飲み込みが早くなってる」


「でも、これはすごい威力だ。

 私もだいぶん強くなってきたんじゃないでしょうか」


「イモルタくらいなら瞬殺できる」


「まあ、ノムまではまだまだだけどね」


 そんなこんな、いつものやりとり。

 そんな流れを断ち切るように。

 青髪少女が表情を変え、振り向き背中を向ける。


「エレナは・・・。

 たぶん、あと1年くらいしたら。

 私より強くなる」


「ないです」


「エレナのほうがきっと。

 私より。

 もっと上までいける」


「・・・」


「魔術のほうも・・・。

 私が教えられるのも、もう少しだけ。

 きっと1人でもやっていけるから」


 その背中だけでは、彼女の表情まではわからない。

 それでも、私が伝える言葉は変わらない。


「私は。

 その後も、ノムと一緒にいたいな。

 ・・・。

 だめ?」


 彼女は私に魔術を教えてくれる。

 これが当初、私がノムについてきた理由。

 2人で旅をしてきた理由。

 でも。

 もう少し一緒にいたいと。

 そう思ったのでした。


 そんな、私の言葉に対し。


「いいけど」


 彼女は、小さく(つぶや)いた。

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