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Chapter13 【魔術補足】 幻術

「九尾の妖孤、って聞いてたから、最初は怖かったけど。

 実際は、癒し系だったね」


 紅玲の一件から数日後、改めて炎狐召喚の光景を思い出す。


「もしくは、今はまだ力が弱まっているだけ、という考え方もある」


 なるほど、確かに。

 召喚した紅玲の尾の数は2本であった。

 もしも、この書籍の(つづ)る内容が正しいのなら。

 尾を取り戻すに連れ、凶暴化し、手がつけられなくなるのではないだろうか。

 ・・・。


「力が戻ったら、私食べられたりしないよね」


「こんがり焼けて、ちょうど食べごろ」


「やっぱり本、捨ててこようかな」


 このようなノムの軽いノリから察すると、まだ私が焼死する案件になる可能性は低そうだが。


「でも、かなり鮮明な狐だったよね」


 召喚された妖孤は、炎の魔力で形作られていた。

 しかしその姿は、細部に至るまで再現され、狐であることを十分に視認できた。


「それだけ『意志が強い』魔力が封印されていたってこと。

 魔力が持つ情報の濃度が高いほどに、その魔力が凝縮して生成された塊は。

 まるで、生命が宿ったように。

 生きているかのように」


「逆に、私自身の収束と制御の力で、この幼孤を、巨大な魔獣に『見せかける』ことはできないのかな」


「魔力を自分で造形し、魔獣、魔人の姿を形作る魔法は、『幻術召喚魔術』であると説明したけど。

 今エレナが言っていることは、これに対応する。

 これは『召喚術』という分類よりも、『幻術』という分類に入ると思う」


「幻術かー」


「幻術は、そこには存在しないものを、あたかも存在しているように見せる術。

 基本的には、光術で実現される。

 相手へ到達する視覚情報を光術で操作する。

 また、封魔術との混合術として実現されることもある」


「なんか、よくわからないかなー」


「実践してみせようか」


 そういうとノムは収束を始める。

 祈りを捧げるような、祈祷(きとう)収束の姿勢。

 次第にノムの体が光りを帯び始める。

 光がノムの姿を消してゆき。

 残像が、彼女の左右に揺らめいて。

 左右に2つの像が形成される。


「うおっ!!!

 ノムが2人いる!」


「エレナ、本当の私はどっちでしょう?」


 線対称でポーズをとる2人のノムが、抜き打ちクイズを出してくる。


「目を凝らして真実を見極めんとする。

 ・・・。

 必要もなく」


「左でも右でもなくて、真ん中」


「・・・。

 やっぱり、わかる?」


 2人のノムは残念そうな表情をした直後に消滅し、中間位置から、本物のノムが姿をあらわす。


「なんか、ぼやけてたし」


 作り出された2人のノムの真ん中で、光がユラユラしているのを見落とすことはできなかった。

 2人のノムは(まぼろし)で、本物のノムは光の迷彩効果で姿を消していたのだ。


「幻術は私、あんまり得意じゃないから。

 ぼやけて見えるぐらいにしか実現できない」


 つまらなそうなノムに逆行して、私は大満足なのですが。


「でもすごいよ!

 両側のノムからも魔力を感じたし。

 本当に3人ノムがいるみたいだったよ!」


 先生の求める理想が高すぎるだけで、今のは今ので十分凄い。

 金を取れるレベル。

 見世物的な意味で。


「まあ、本物と同じように見せるのはかなり難しいけど。

 相手の防御のタイミングをずらしたりするのに使われることもある。

 幻術を使う人は多くはないけど。

 そういう魔術もあることだけは覚えておいて」


「そんなことをやってくる相手だったら厄介だなー」

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