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Chapter11 治癒術 (4)

 8日目。

 治癒術習得は思うようにいっていない。

 が、体のほうは快方に向かっている。


「そろそろ、収束する魔力量を増やしてもいいかな」


 本日4回目の魔術発動が失敗に終わったあと、先生が突然提案する。

 でも。

 うーん、ちょっと不安。


「大丈夫かな?」


「少しずつ増やせば大丈夫。

 魔力量が多く、魔力球が大きいほうが制御しやすい」


 まあ確かに。

 魔力球が大きいほうが2属性の魔力球が接する面積が増えて、やりやすそうだ。

 それに、今日まで何回も治癒術発動を失敗しているが、さほど危険なことは一度もなかった。

 提案に対して納得したことを示すため、ノムを見つめてコクコクと相槌を打った。

 私の意思を確認すると、ノムはさらに続ける。


「あと、『魔導術と封魔術を合わせる』と考えないで、『早く怪我を治したい』と念じながらやってみて」


「そんなんでいいの?」


 ノムらしくない、突然の何かえらく非科学的な説明に戸惑ってしまう。


「どうやら治癒術は、ただ単純に魔導術と封魔術を合成するだけではないみたい。

 プレエーテルを収束する時点で、通常とは異なる現象が無意識的に起きてるかもしれない。

 魔導術と封魔術を収束するんじゃなくて、治癒術を収束するようにイメージするのが良い」


「『神よ、私の怪我を治したまえ~』みたいなイメージ?

 そんなんで怪我が治ったら、医者もヒーラーも要らないんじゃない」


 先日のノムの指示で、胸の前で手を組む祈祷収束という収束法を取っている。

 そんなポーズで祈るのだから、そう思うのも仕方ない。


「いや、祈るだけじゃだめだから。

 でも、そういうイメージも悪くない。

 これ以降教えていく強力な魔術では、強くイメージを持つことが重要。

 少し大げさにイメージしたほうが、うまくいくこともある」


 想像力が鍵となる、ということなのだな。

 なるほど。

 では、さっそくより具体的、かつ没入度の高いイメージを創造していこう。


「神よりも、聖者マリーベルのほうがいいかな。

 でも私、マリーベル教信者でもヴァルナ教信者でもないしなー」


「そこはどうでもいいから」


「じゃあ、大天使ガブリエルとか、豊穣神フレイとか、愛の女神ヴィーナスとか。

 どれがいいかなー。

 えーい、じゃあもう全員でいいや!

 おー!!すごい豪華だ!」


「ばーか★」






*****






「私の中に、大天使ガブリエル様が降臨した!」


「してないから」


 習得開始から14日目。

 イメージすることの大切さを説かれた私は。

 自分の怪我を治癒してくれる神様をイメージをすることに没頭していた。

 なんか楽しくなってきました。


「ガブリエルって、どんな天使かわかってるの?」


 ノムが呆れまじりの冷笑で質問する。


 個人的なことだが、私は神話が好きなのだ。

 子供の頃から、そういう本をよく読んでいた。

 その本のいくつかには、挿絵が入っていたのです。


「思い出して描いてみるね」


 お絵描きを開始する。

 魔導学のノートに。


 『魔導学のノート(これ)に描くなよ』という表情が横目で見えた気がしたが無視する。

 はい、完成です。


「確か、こんな感じ」


 できあがった傑作をノムに見せる。


「美化しすぎ」


「だってせっかく来てくれるんなら綺麗でかわいいほうがいいじゃん!

 回復力が断然違う!

 心の回復力が!!」


「落書きしよー」


 私が力説している間に、ノムが魔導学のノートを奪い取る。

 さっき、『ノートに落書きするなよ』という表情に見えたの、『私にも描かせろ』という表情の間違いだったみたい。

 油断も(すき)もない。

 ノムがガブリエル様の顔にペンを入れる直前で、再度ノートを奪い返す。


「やめろって、力作なのに」


「とられた」


 生まれて初めて、子供を叱る親の気持ちになった。

 ノムはほのかに残念そうな顔をしている。

 ・・・。

 かわいいから許す。

 気持ちが落ち着いたところで、1つの案が湧いた。


「ノムこれ持ってて」


 奪い返したノートをノムに返す。


 すぐに落書きしそうな素振りを見せる青髪。

 今度はペンを奪い、かつ眼力で無言のプレッシャーを掛ける。


「それ、こっちに広げて見せて。

 その絵があるほうがイメージしやすい気がするから」


「そんなものかな?

 まあ、それでエレナがやりやすいなら」


 いろいろとノムを納得させられたようで。

 彼女は大天使様が描かれたペ-ジを開いて、それをこちらに向けてくれる。

 私から見ると、ちょうどノートでノムの顔が隠れるような形となる。


「それじゃ、やってみるね」


 『怪我を治したい』と念じる。

 同時に、魔導、封魔の2つのコアを作成。

 交差した手の前で、これらを合わせていく。

 手のひらで掴める程度の大きさの2球は、強く反発し合い、火花を散らす。


 早く怪我を治したい。

 早く怪我を治して、闘技場に戻りたい。

 闘技場で修行をして、もっと強くなりたい。

 もっと強くなったら・・・。


 自身で描いた大天使の絵を見つめ、湧き上がる雑念を消去。

 魔力合成に集中する。

 天使様。

 どうか。

 奇跡を起こして、ください!


「合ってきてる」


 ノムが言葉を発したと同時に、合成の反発力が一気に弱まる。

 そして、コアの衝突による火花が視認できなくなり、同時に2つのコアが吸い込まれるように1つになる。


「安定した?

 安定した!

 できた!できた!!」


 合成されたコアの青白く美しい光が、治癒術成功の興奮を増幅する。

 これも全て、大天使様のご加護があったからに違いない。

 私、祝福されてるの。

 無宗教者だけど。

 一通り歓喜すると、静寂が訪れる。


「んで、この魔力球をどうすればいいの?」


 ここからのことを聞いていなかった。

 ガブリエル様越しの先生に質問をすると、ガブリエル様がノム様に変化した。


「ここからの魔力放出方法で、効果が少し違ってくるの。

 体の異常のあるところに集中して魔力を当てるとフィジカルキュア。

 麻痺や局所的な怪我などの体の異常を治したりできる。

 身体中にまんべんなく魔力を広げると、リカバリプラス。

 対象の自然治癒力を上昇させる」


「ふんふん」


「今回はリカバリプラスをやってみよう。

 エレナの体全体に魔力を広げてみて」


 魔力を自分にぶつけるという行為に抵抗はあるが。


「やってみるよ。

 ほいっ、とね」


 魔力をいつもと逆の方向、かつできるだけ拡散するように解放する。

 シャワーを浴びるような感覚。

 ・・・。

 は、あまり湧き起こらず。

 強い日光に晒されたような熱も、蜂に刺されたような痛みも感じない。


 ・・・


 ・・・・・・


「なんにも。

 起きませんが」


「起きてる」


「起きてません」


「自然治癒力が強くなってる」


「強くなってません」


「自然治癒力が強くなってる。

 とんでもなくちょっとだけ」


「とんでもなくちょっとだけ、かよ!」


「ガヴリエルじゃなくて、ごっついおっさんが降臨したのかも」


「気持ち悪いからやめて」


 一瞬想像しそうになったが、全力でイメージをかき消す。

 変なイメージが固着して、治癒術使えなくなったらどうすんだよ。


「冗談。

 絶対的な魔力量が少なかっただけ。

 魔力量を増やしていけば、効果を実感できるようになる。

 治癒術の習得訓練はこれで完了。

 闘技場の次のランクをクリアしたら、次のステップに進むから」


 あぁ、またいつもの生活に戻るのか。

 長いような短いような休息期間だった。

 しみじみ。


「先生、最後に質問いいですか」


「なに?」


「私の描いたガブリエル様に(ひげ)が生えてますが、何故ですか?」


「ガヴリエルに、ごっついおっさんが降臨したから」






*****

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