Chapter11 治癒術 (3)
「さすがに昨日おとといは怪我があるからということで、完全に休息だけでしたが。
今日から治癒術の習得訓練開始です。
・・・。
治癒術で怪我する、って嫌だな」
「前言ったとおり、収束魔力は最小限ね。
じゃあ、やってみて」
まあこれで怪我が早く治るんなら、やってみるか。
ベットの上で上体を起こした状態で、両手を前に突き出す。
可能な限り少なめの魔力量で。
魔導のコアを左手の前に。
封魔のコアを右手の前に。
まずはこんな感じ?
魔導と封魔、どちらが左手でどちらが右手が良いかは、ノムは何も言及していなかったのでどうでもよさそうだ。
「そこからコアを近づけてみて」
ノムの指示を受け、コアの合成を開始する。
暴発が怖いので、そーっと。
私の制御指示通りに2コアの間隔が近づいていく。
ぬ!?
これは・・・。
「きてる!きてる!」
近づければ近づけるほど、2コアの反発力が増える。
応じて、制御に必要な集中力が増加していく。
そして、求められる集中力が、私の許容範囲を超えたとき。
「あぐっ!」
暴発、
は免れたが。
左手のコアのは上を通って右に、
右手のコアのは下を通って左に流れていった。
「難しいよ、これ」
「最初はそんなもの。
上に行きそうになったら上から、下に行きそうになったら下から抑えるの」
そりゃあそうだが。
もう少し楽な、裏技的ななんかはないのかね。
「他にコツって無いの」
「うーん
じゃあ、収束法を変えてみようか」
「収束法を変えるの?」
「今のエレナの収束法は、前方に両手を突き出して収束する前方双掌収束。
これを祈祷収束に変える。
祈るように両手を胸の前に持ってきて合わせて、その前で収束を行うの」
言われた通りにやって見る。
「こんなんでいいの?」
「そう。
収束は体に近ければ近いほど簡単になる。
また収束する魔力量も少ないから、術者とコアが近くてもあまり危険ではない。
それに、収束合成した魔力を自分に向けて使用するから、近い方が都合が良い。
だから、この収束法が適している」
とりあえず試してみるかといった軽いノリで、指示通りの姿勢を取る。
うまくいくことを祈りつつ、新しい収束方法で治癒術発動を再試行する。
結果は・・・。
「あー・・・」
2つのコアは、海流のようにぶつかって流れていった。
「変わらない?」
「いや。
さっきよりはやりやすい」
「時間はたくさんある。
焦らず取り組めば、ちゃんとできるようになるから。
根気強くやっていくしかない」
自然と、3点収束や合成術の習得の苦労が思い起こされる。
体調の不完全性からしても、さらに苦労しそうな。
そんな予感がひしひしと。
なんかダメそう。
怪我のせいで、悲観的になっているみたいです。
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