Chapter10 【魔術補足】 防具
「ノムー」
「どーしたの?」
「そろそろ私も、ちゃんとした防具を買って装備したほうがいいかなー、って思って。
一緒に選んでほしいんだけど」
「防具ならちゃんと装備してるけど」
「いやいや私の服装、ほんとにこんなに軽装ですよ」
「ちゃんとアクセサリを装備している」
「そりゃ、アクセサリはしてるけど。
防具じゃないでしょ」
「そのアクセサリは、ただの装飾品じゃない」
「ぬん?」
「装着者の封魔防壁を強化する、れっきとした防衛能力を持った防具。
メインアクセサリ、とか、レインフォースアクセサリって呼ばれる。
メインアクセサリは、十字架やペンダントの形状であることが多く、首からぶら下げる、体の中心、心臓の近くに持ってくる、というのが一般的。
もちろん、その他の装飾具でも、封魔防壁増強効果を持ったものなら何でも良いけど」
「こんな小さいアクセサリに、ほんとに、そんな能力があるの?
むーん。
やっぱり、鎧とか。
せめて、軽いやつとかでも。
胸当てとかでも、あったほうがいんじゃない?」
「この世界で、鎧という防具は、あまりポピュラーではない。
鎧は物理攻撃に対しては強い防御効果を発揮する。
けれど、魔法攻撃に対しての防御効果はさほど高くない。
魔法攻撃に対する防御効果の高いメインアクセサリを装備することのほうが重要。
魔法防御効果に限定すれば、軽装だろうと、重装備だろうと、裸だろうと、全身鎧だろうと。
そこまで大きな差はない」
「いや、それは言い過ぎなんじゃない。
それに、私が闘技場で戦う相手は物理攻撃を使うけどね」
「もちろん、鎧のことを全否定しているわけではない。
鎧は、ここから西のいくつかの国で、非常にポピュラーだし。
鎧の下にメインアクセサリを装備すれば、物理、魔法両方の防御効果が得られる。
さらには、鎧自体が魔法防御効果を持つような、軽く美しい装飾鎧なども存在する」
「おー!!
なら、それがいいんだけど!
買いに行こう!」
「ただし、信じられないほどに高価」
「まあ、そうだろうね」
「それ以前に、そんじょそこらには売ってない」
「ですよね」
「・・・。
そもそも、エレナに鎧はあまり合わない。
鎧は、基本的には重く、その分、動きが鈍くなる。
エレナの長所である敏捷性が損なわれる。
物理攻撃は、基本は近距離攻撃。
でも、武器と組み合わせるエレナの魔法攻撃は、近距離でなくても、それなりの威力がある。
だから相手が鎧装備で魔法を使わない戦士タイプの場合、間合いをある程度とって、その間合いを詰められない様に戦えば、無傷で勝てる」
「そんな、簡単に言うけどさ・・・」
「逆に遠距離戦だと、現状のエレナの魔力だと、攻撃力が足りずに押し負ける」
「うぬー・・・。
まあ、言うとおりですけども」
「ちなみに。
メインアクセサリとは別に、補助的な魔術効果を期待して装備する装具を、サブアクセサリとか、補助魔導装具と呼ぶ。
これは、腕輪や指輪であることが多い」
「・・・で。
結局、防具、どうしようか?
胸当てだけか、肩当てもいるか・・・。
ガントレットも必要?
思い切って、全身鎧とか」
「適当でいいよ」
「私の命を守る物なので、真面目に考えてもらっていいですか!」
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