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Chapter9 多属性合成魔術 (1)

「なにやってんの?」


「うおぅ!!!

 ノムいたのか!?」


 私の背後、彼女のボソボソボイスが聞こえる程の至近距離から突然声をかけられた。

 全く気づかなかったぞ。

 武具収束術技の鍛錬にのめり込んでいたこともあるだろうが。

 モンスターが出現する可能性があるこの場所で、私だって気を緩めていたわけではないのに。

 改めて、彼女の気配を消す技能(オーラセーブ)のレベルの高さを思い知らされる。

 ノムがアサシンなら、私死んでたね、今頃。

 もういっそ、アサシンに転職したほうがいいんじゃないの。

 

「いやーさー。

 自分オリジナルの必殺技を作れないかなって思ってさ」


 このように考えたのには、複数の理由がある。


(1)武器ローテーションにより現在使用中の刀と、私の得意属性である雷術を組み合わせた術技が、イモルタピックアップの術技一覧の中にはなかったこと


(2)イモルタピックアップの術技は汎用的なものであるので、対戦相手の意表を付くためには、より斬新な技のほうが良いのでは、と考えたので


(3)自分で考えたほうが、より自分の能力にあった技になるのでは、と考えたので


(4)イモルタピックアップの術技の習得に、若干飽き始めていたので、気分転換に


(5)オリジナル必殺技って、なんかかっこいいので


 最終的な意思決定に際し、どの理由が支配的であったかは割愛しますね。


「オリジナルとかまだ早いって。

 イモルタのピックアップした術技。

 それはただ適当に選んだり、イモルタだけが使う技というわけじゃない。

 彼が選んだのは、昔から多くの人が使用し、洗練されながら受け継がれてきたもの。

 数ある術技の中で、基礎となるものなの。

 まずは基本から。

 変なオリジナルは、その後」


「まあ、ですよね」


 『変』かどうかはさておき。

 ノムの言わんとすることはよくわかる。

 実際にオリジナル技の開発をやってみたことで、それを否応無く体感させられた。

 まず、装備中の刀は安物で、武具への魔力の収束が非常にやりにくい。

 『剣は魔法と相性が悪い』とはこのことを言うのだ。

 さらに、刀と雷術の相性もあまり良くない気がする。

 だからこそ、イモルタピックアップの中には、『雷術×刀』の術技がなかったのだろう。


 素直にイモルタ先生の提案に従おう。

 あと、宿から槍か斧を取ってこよう。

 刀、難しいです。


 私が必殺技開発を諦めたことを察したようで、ノムはそれ以上この件には触れず、武具収束の補足情報の説明を始めた。


「ちなみに、武具収束術技だけど。

 武器によって相性のいい属性があるの。

 杖は炎と風。

 刀は風と魔導術。

 斧は炎と雷。

 大剣は炎と風。

 槍は雷と封魔術、そして神聖術」


「神聖術?」


「神聖術は、光属性と封魔属性の合成術」


「合成術?」


 知らん単語が立て続けに出てきたんですけど。


「実は、今回のステップで合成術の習得を目指すの。

 これを覚えれば、一気に戦術の幅が広がるから。

 でもその分、習得は難しいから。

 覚悟して」


 逆に、『習得は楽勝』と言われたほうが驚くよ。

 難しいのが当たり前で、なんかどうでもよくなってきたかもしれません。






*****






「『合成術』。

 正式には、『多属性合成魔術』」

 名前のとおり、複数の属性の魔力を『合成』して実現する」


「複数属性を合成、って、どんな感じで?」


「3点収束の3つのコアを、別々の属性で作って合わせる」


「うわっ!

 そんなことできるの!?

 ・・・。

 っていうか、危なくない?」


「危ない。

 最初は」


 ノムが言う『危ない』は、『下手すれば死ぬ』程度のニュアンスで受け取るべきであろう。

 同属性の合成でもアレほどのコア間の反発が発生するのに、これが別属性になったと考えると、反発力増加は必至。

 さらに属性が異なると、3点のコアのバランスが崩れてしまいそうだ。

 怖いなー。

 怖いなー。


「多属性のコアが重ね合わされてできる魔力球は、各属性それぞれの性質を持つの。

 しかも、元の属性以上の性質を持つこともある」


「合成術って、例えばどんなものがあるの?」


「最もポピュラーな多属性合成魔術は、『炎炎風(えんえんふう)三点収束バーストストーム』」


「炎炎風?

 コアが『炎・炎・風』ってこと・・・だよね」


「その通り。

 3つのコアのうち、2つを炎属性、1つを風属性で生成する。

 炎の攻撃威力と風の広範囲性が合わさった、非常に高性能で使い勝手の良い優良な魔術。

 一度に複数の敵を相手にする場合に、その真価を発揮する」


「『炎・風・風』じゃだめなの?」


「『風風炎』の場合は、ヒートウェイブという別の魔術になる。

 バーストストームよりも広範囲だけど威力が落ちる」


「へー」


「一般的に、ヒートウェイブよりもバーストストームのほうが習得しやすい、と言われている。

 だから、最初はバーストストーム習得を目指す。

 これに向けて、まずは炎と風の属性をもっと強化してきて」


「合成術って、バーストストーム以外にもいろいろあるの?」


「合成術は属性の単純な組み合わせの数よりも多く存在する。

 同じ属性同士でも、収束法を変えて、多種多様な合成術を実現できる」


「うんうん」


「バーストストームの次に有名なのが、光・炎・雷の合成術の『ブラスター』。

 3点収束のコアを、光・炎・雷で作り収束。

 できあがった魔力球は、3属性が混ざり合った強力なエネルギー体になる。

 欠点は、魔力消費が非常に多く、効率が悪いこと。

 あと、失敗すると危ない。

 ものすごく危ない」


「さようですか」


 『ものすごく危ない』の言葉の裏側に、『絶対に勝手にやるなよ』という念押しのようなものを感じる。

 得意の雷術が含まれる分、バーストストームよりもブラスターのほうが楽かな、と思った瞬間に釘を刺される形となった。

 暗示的ご忠告、ありがとうございます。

 絶対にやりません。


「ブラスターから先に練習してみてもいいけど」


 ほんのりと笑みを浮かべ、ノムはそんなことを口走った。

 言葉の裏の読み方を間違えたらしい。

 正解は、『ものすごく危ない。けどエレナが爆発するのも面白いかも』でした。






*****

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