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Chapter8 武具収束術技 (3)

 次の日、ノムに武器屋に連れてこられたわけですが・・・


「死霊になっても武器屋ってできるんですね」


「死んでねぇよ」


 何事もなかったように、金髪の男がそこにいた。

 それどころか。

 昨日受けたはずの爆撃による傷も見当たらない。


「昨日の時点では、遠目から見ててもダメっぽかったですけど」


「俺は回復能力には()けてるからな。

 あのくらいの攻撃じゃ殺せないな」


 うまく言葉で言い表せない不安感を感じる。

 その不安感を払拭したくて、私は少し離れたところで商品の杖を眺めているノムに近づき、声をかけた。


「ノム、すごい!

 おっさん生きてた。

 やっぱ強いのかな?」


「闘技場のスタッフの治癒術がすごいだけ。

 弱い」


 端的な言葉でばっさりと切り捨てた。

 しかし今の発言で、いろいろな線が繋がり不安感が払拭される。

 闘技場には治療専門のスタッフがいる。

 私も、大きな怪我ではなかったが、戦闘後に手当てをしてもらったことがある。

 しかしそのスタッフが、あの致死レベルの惨状に対応できるとまでは知らなかった。

 闘技場にこれからも通う身として、とてつもなく頼もしい。

 まあ。

 もちろんお世話にならないのがベスト、ではあるのだが。


 一通り納得いった。

 わからないのは、あともう1点。


「そういえば、今日はなんで武器屋に来たの?」


「昨日の武具収束術技の使い方をおっさんに聞いてきて。

 私が教えるより、わかりやすいと思う」


 なるほど。

 おっさんが心配で様子を見に来たわけではないらしい。

 おそらくノムは、昨日の時点でおっさんが死んでいないことを知っていたのだろう。

 だから、特に心配はしていなかったのだろう。

 そういうことにしておく。


「おっさん、じゃなくてイモルタだ」


「おお!

 おっさんいたの?」


「イモルタだっての」


 いつの間にか、おっさんに背後を取られていた。

 ちょっとびっくり。

 まだまだ、修行が足りない。


 この武器屋のおっさんは、『イモルタ』という名前らしい。

 ちなみに武器屋の店員でなく、武器屋の店主らしいです。

 ノム(いわ)く。


「イモルタさん」


「呼び捨てでいい」


「おっさん」


「お前はおっさんのままでいい」


 ノムはあくまで名前で呼ぶ気はないらしい。


「で、昨日の術技について聞きたいんだって。

 まあお前らは御得意様だし、仕方ねーかな」


 しゃべりたいんだなー。

 でも実際、すごく有難(ありがた)かったりする。

 イモルタの戦術にはヒビがある。

 がしかし、あの強化火炎撃の威力は本物だ。

 是非とも、私も使えるようになりたい。

 教えて教えてオーラ全開でイモルタを見つめる。


「昨日俺が使った術技は、炎と斧の武具収束術技の『強化火炎撃』だ。

 斧に炎術による炎をまとわせて、攻撃点で爆発させる。

 俺のように、斧と炎術が得意なやつにとって、最重要な技だ。

 ちなみに、1つ下のレベルの火炎撃、上のレベルのフレアストライクという術技がある」


「フレアストライク、って名前がかっこいいっすね。

 やっぱり威力も強いんですか?」


「俺は使えないが」


 別に使えないからどうこう思うわけでもないのだが。

 なんとなく次の言葉が浮かばず、イモルタを見つめてしまう。

 しかし彼は、『使えないんかい!』と私が思っていると捉えたようだ。

 ・・・。

 まあ。

 少し思ったけど。


「難しいんだよ。

 そいつは武具収束術技の1つ上のレベルの技能である、『武具収束奥義(ぶぐしゅうそくおうぎ)』って呼ばれるもんで、高い魔術的な素養が必要なんだ」


 知らない言葉が出て来たが、私にはまだ早いことだけは瞬時に理解できた。

 私よりも数段強いイモルタが習得できていないものを、私が習得できるとは思えない。


「まあ、おまえが斧を武器にするんなら、火炎撃から始めることになるな。

 そこから、徐々に強い技を覚ていく」


「槍の術技とか、大剣の術技とかもあるんすか?」


「もちろんある。

 ちなみに、お前。

 3点収束は使えるか?」


「はい!

 まさに一昨日(おととい)使えるようになったんですよ!」


 あまりにもタイムリーな内容だったので、少し興奮する。

 習得訓練での苦労話とか聞いて欲しい。


「一昨日か!?

 あー、でも一回使えればあとは楽だし、すぐに慣れるか。

 でも習得は結構梃子摺(てこず)っただろ!

 俺は1年半かかったぞ」


 ・・・。

 やっぱり、この話題を広げるのはやめよう。

 話題を変えるべく思考を開始しようとすると、すぐにイモルタが説明の続きを始めた。


「3点収束を応用すると、術技を強化できるんだ」


 の?

 よくわからんのでよくわからん顔をしていると、イモルタが一から説明してくれる。


 まずは、例えば火炎撃の発動に関してだが、武器の攻撃部、剣の刃に魔力が集まるように念じて魔力を流す。

 ただ単純に魔力を流すだけだと、それは魔力を捨ててんのと同じ。

 実際は、武器の中に魔力を引き寄せる、引力源となるコアが作られてるんだと。

 これは、空間中に魔力のコアを作る場合と同じだな。

 火炎撃は、基本的に武具中のある1点、特に宝珠のようなコアが付いている武器だとその部分になるが、この部分にコアがあることをイメージし、その場所に向けて体内から魔力を流す。

 ちなみにこのとき、剣から魔力が漏れないように、剣の外側から圧力を掛けるようイメージするといい。

 ある程度魔力が集まっているな、と感じたら、ここから、炎に変換してやればいい。

 これで、炎が剣の刀身にまとわり付く。

 最後、攻撃のタイミングで放出動作を行えば、さらに威力アップだ。

 こんな感じでー、火炎撃くらいなら実現できると」


「ほぇ~」


 当初の想定以上に真面目かつ有用な話であることに途中で気づき、急いで鞄に入っていたペンと魔導学のノ-トを取り出してメモを取る。


「そして、強化火炎撃。

 この場合は、武器の刃の中にコアを3つ作るようにイメージするんだ」


「コアを3つ?」


「おおよそは3点収束のときと同じだな。

 3つコアを作って、それぞれに向けて魔力を流す。

 ただ、3つのコアの合成は不要だ。

 厳密には、『やろうとはしたが、できているのかできてないのかよくわからん』という感じだが。

 とにかく、コアが多いほうが威力が格段に上がる。

 しかし、3点収束ができる程度の魔力的な素養がないと、武具中に複数点のコアを作るのは難しい、んだと」


「うーん・・・

 わかったけど納得できないというか。

 私に、できるかどうか不安というか」


「実際にやって体得するしかないさ。

 理論的なことを完全に理解しようったっても無理な話だ。

 多少不思議でも、そうなるもんはそうなるんだよ」


 『実際にやって体得するしかない』に強い共感を示す。

 思考の材料となる経験が不足している。

 まず実際にやってみて、その後もう一度改めて説明を聞きたい。

 幸いなことに、武具店に来ればいつでも話を聞けそうな雰囲気だ。

 武器も買っているし、一応お客様でもある。


「ちなみに」


 その言葉で正面のイモルタを見つめると、ちょうど目が合い、2人して少し驚く。

 その時点で声の主がノムであることに気づいた。

 私とイモルタがノムの方向を向くと、補足説明が開始される。


「空間中の球収束のときと異なり、武具収束でのコアは、自由に武器内を動き回っている」


「そうなのか?」


 イモルタが少し驚いた表情で確認する。


「コア、そしてコアに収束される魔力も、武器の内部を動き回る。

 これを浮動点収束という。

 ちなみに3点収束のように、『コアが3つだと効率が良い』ということはない。

 3点収束に慣れているから、3点がやりやすいというのはあるけど。

 3点コアを作ったつもりでも、実際は2点だったり、4点だったりすることもあるらしい」


「ノム、詳しすぎ」


「まあ、理屈はいいとして。

 お前が今使えそうな術技を列挙しておいてやる。

 好きな武器、好きな属性からやってみるといい」


 私の持つ魔導学のノートを見つめながら、そう提案してくれる。

 得意属性雷術の武具収束術技があることを願いつつ、私はノートを手渡した。






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