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Chapter8 武具収束術技 (2)

 次の日、武器屋のおっさんの試合観戦のため、ノムと2人で闘技場に来ました。

 観客席、東門側の最前席。

 着席し、周囲を見渡し。

 私は思った。

 闘技場のランクと、観客の数が、おおよそ比例している、と。

 現状、私が出場するランクよりも、観客数が多い。


「うーん、上位のランクだけあって観客が多いね。

 でも、ノムはおっさんが見に来いって言ったの、断ると思ってたけどね。

 何か思うところがあったりするの?」


 『ノムとおっさん恋人説』検証に向け、探りを開始する。

 名探偵エレナ、爆誕の瞬間である。


「今日は単に武器屋のおっさんを見に来たわけじゃないの」


「あれ?

 負けるとこを見るんじゃ?」


「あれは嘘。

 エレナに魔術を教えるのにちょうどよかったから」


「どういうこと?」


「今日は、武具収束術技(ぶぐしゅうそくじゅつぎ)について教える」


 話がうまく脳内で(つな)がらず。

 釈然としないまま授業が開始される。

 昨日、酒場で聞いた『武具収束術技』の話のようだ。


「もう一回説明したほうがいいよね」


「はい。

 正直、全く覚えてないです」


 よかった。

 『昨日話したからいいよね』とか言われたら、どうしようかと思ったよ。


「じゃあ最初から。

 武具収束術技とは、武器攻撃と魔法攻撃を組み合わせた攻撃で、物理と魔法、両方の特性を持つ。

 武器に魔力を定着させたり、武器攻撃と魔法攻撃を同時に行ったり。

 アイデア次第で、他者との差別化を図れる。

 ・・・でも」


「でも?」


「私は杖しか使えないから教えづらい。

 杖の武具収束術技もあるにはあるけど、私は使わない。

 でも、エレナは杖以外の武器も使えるから、武具収束術技が使えれば、一気に戦力アップする。

 だから今日、武具収束術技がどんなものか見に来た。

 武器屋のおっさんの戦い方が過去と同じなら、間違いなく武具収束術技を使う。

 おっさんが使う武具収束術技をエレナに見せたかったのが、今日、ここに来た理由」


 なるほど、納得。

 ノムとおっさんが付き合ってたり、ノムが加虐嗜好なわけではないようだ。

 ちょっと安心。

 なような、名探偵エレナ御役御免で残念なような。

 そんな2つの感情が行ったり来たりしているうちに、挑戦者入場が場内アナウンスされた。 


「始まるみたいだよ」


 ノムの見つめる先、南の入場門から、赤黒い斧を持った金髪の男が登場した。

 武器屋のおっさんだ。

 武器は長戦斧(ちょうせんぷ)か。

 しかも、店の高いやつ。

 って、武器屋だから当たり前か。


 程なくして相手モンスターが北の入場門から登場。

 相手はよく見る獣人モンスター、コボルト。

 ではあるが。

 灰色のコボルトは初めて見る。

 今回、おっさんが挑戦する闘技場ランクはB3。

 現在の私のランクI(アイ)の11段階上のランク。

 現時点の私では撃破するのは到底無理。

 試合開始前、観客席からの観察でさえそのような考えに至る。

 それ程に、相手は強い。


「はじめ!!」


 試合開始のアナウンス。

 と同時に、おっさんが相手モンスターに向かって全速力で距離を詰める。

 一気に決着をつけるつもりだ。


「エレナ、ここからよく見てて」


 ノムからの指示で、さらに集中力を高める。

 すると、おっさんの持つ長戦斧に魔力が集まっていることを感知できた。


「おお!

 斧が炎に包まれていく!」


 魔力を感知した次の瞬間、斧の先端から炎が発現。

 斧にまとわりつくようにして、その絶対量を増加させていった。

 相手の間合いに入ったのと同時に、魔力収束が完了。

 そして炎に覆われた長戦斧を、相手に向けて振り下した。


<<ドーーーーーーーン!!!!>>


 爆音と衝撃。

 巻き上げられた塵で詳細を確認できなくても、相手のコボルドの敗北を予測できる。


「今のが、斧と炎の武具収束術技、『強化火炎撃』。

 斧に炎を定着させ、物理攻撃と同時に定着させた魔力を一気に解放する。

 単にバースト系の魔術を使うより、断然高威力」


 ノムの説明が終わると同時に、試合終了がアナウンスされる。

 本当に、1撃で相手を沈めてしまった。

 正直、おっさんのこと、かなり舐めてました。

 謝罪の意味を込めて少し褒めておこう。


「おー勝った!

 すごい!

 武器屋のおっさん強いね」


「武器がいいだけ」


「さらっとひどいね」






*****






<<ドーーーーーーーン!!!!>>




 ・・・




 本日、何度も聞いた爆発音。

 そして試合終了のアナウンス。


 第2戦、第3戦と順調に勝ち進んだ武器屋のおっさんは、第5戦。

 相手モンスター『レッサーデーモン』の放つ強烈な炎術をまともに喰らい。

 完全に動かなくなった。


「負けちゃったね・・・」


「やっぱり弱かった。

 派手なだけ」


 体の所々から黒煙を上げるおっさんが、闘技場のスタッフに運ばれていく。


 ・・・


 ありゃぁ、死んだな。

 なんか、嫌なものを見た。

 お願いだから安らかに成仏してほしい。


 おっさんの死。

 これを無駄にしてはいけない。

 ここから学ぶべきことは多々ある。

 何故おっさんがこんな結末になってしまったか、改めて考えてみよう。


 まずは3戦目まで。

 必殺の強化火炎撃で、問題なく勝ち進んだように見えた。

 しかし、後々考えると、ここまでで魔力を無駄に使いすぎていた。

 相手モンスターとおっさんの力量差、おっさんの魔力回復力の低さを考えると、ここまでは魔力を温存しておくべきであったと思う。


 次に第4戦。

 相手はレイス系モンスター、緑色のローブをまとい、風術を操る死霊、『メイジ』。

 おっさんは、この相手と非常に相性が悪かった。

 相手の使う風術(エリアルウィンド)、それ単発ではおっさんの高い防御力からしてあまり脅威にはならない。

 しかし、おっさんはこれをいいことに、魔術防御をおろそかにしてしまった。

 メイジはおっさんとの距離を取りながらジワジワと攻撃をヒットさせ、一方おっさんの粗い攻撃はなかなかクリーンヒットしない。

 結果的にこの一戦で、体力、魔力ともに大きく削られてしまった。

 とてつもなく失礼な話だが、おっさんよりもメイジの方が知力が高いんじゃないかとすら思ったよ。


 最後に第5戦。

 相手は炎の魔法とするどい爪による物理攻撃を兼ね備える凶悪なモンスター、『レッサーデーモン』。

 私が知る中で、最も畏怖すべき種族に属するモンスターだ。

 魔力の尽きたおっさんの斧攻撃を易々とかわしながら、立て続けに炎術を直撃させていった。


 ここまでを総括すると。

 おっさんは、魔術師に弱い。

 特に、相手の攻撃をかわしながら、間合いを広く取って攻撃できる、敏捷性の高い魔術師にめっぽう弱い。

 それはまさに、私が最も得意とする戦闘スタイルだ。

 よし。

 これでおっさんが化けて出ても、問題なく撃退できる。


 脳内で一通りの幽霊対策が構築できたところで、私達は闘技場を後にした。


 それにしても。

 おっさんが致命傷となる爆撃を受けたとき、ノムがニヤニヤしているように見えたけど。

 気のせいだよね。






*****

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