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Chapter6【魔術補足】魔導距離

「今日は数学を教える」


「えー、なんで?!

 魔術関係ないじゃんか!」


「魔術により引き起こされる物理現象を数理モデル化することは、魔術を理解する上で重要。

 数学から、逃げるな、なの」


「うーん、自信ないなー」


「最初は簡単なとこからやるから」


「1+1=2、とかから?」


「微分から」


「聞いたことないって」


「2次方程式の解の公式は?」


「ない」


「連立方程式は?」


「ない」


「方程式は?」


「ない」


「掛け算九九は?」


「ある!

 わかる、それはわかる」


「むぅ、算数から・・・。

 うーん、時間かかりそうだから、今日はやっぱりやめるの。

 時間をみつけて、少しづつ教えていくから。

 でも、とりあえず、『魔力収束と距離の関係』の話だけやっておく」


「ふぁーい」


「魔力を収束するポイントまでの距離が自分から離れていればいるほどに、収束時に必要な魔力量は多くなる」


「威力固定で、距離が2倍なら、必要魔力2倍。

 消費魔力固定で、距離が2倍なら、威力半分、ってことだよね」


「残念無念」


「違うの?」


「消費魔力と威力の関係は2倍2倍関係、つまり比例関係。

 まあ、厳密には、収束限界の話とか、収束抵抗の話とか、いろいろあるんだけど。

 基本、比例。

 一方、距離と消費魔力の関係は、比例関係ではない。

 距離が2倍になると、必要魔力はだいたい4倍になるイメージ。

 『(必要魔力)=(距離)の2乗』の関係。

 2次関数。

 でも、たぶん、ほんとはもっと複雑」


「つまり、『距離が増えると、必要魔力は急激に増える』、ってことだよね」


「その解釈で正しい、基本は。

 でも、2つの例外がある。

 1つは相手術師に関して。

 相手の術師の体内に魔力を収束できないよね、基本は」


「そりゃぁ、そんなこと、できたら怖いよ。

 ・・・。

 ってか最後に付けた、『基本は』、ってなんだよ!

 できる人もいんのかいな?」


「自分と相手の魔力の差がとてつもなくかけ離れていれば可能」


「つまり『私vsノム』なら可能だと」


「私程度じゃ全然不可能。

 エレナの体は封魔術で守られているから、その中に魔力を収束しようとしてもはじかれる。

 魔力は収束地点から突飛的に湧いて出てきているわけじゃなくて、私の、攻撃者の体から収束地点に向けて魔力が送られているわけだから」


「なるほど」


「また、相手術者に近い空間上では、本来の距離以上の魔力が必要になる。

 物理的な距離が同じなのに、相手術者近傍は、魔力的な距離が遠くなる。

 このことを、『魔導距離が大きい』という言い方をしたりする」


「魔導距離・・・。

 厳密には『長さ』じゃぁないよね」


「さよう、なの。

 厳密には、『魔力の量』だけど、距離っていう、便宜上。

 魔導距離が近いところに収束したほうが、効率がいい」


「つまり、私が魔法を使う場合、魔力を収束する場所は、私の体に近ければ近いほうがいいと」


「そう。

 実はその話が2つ目の話になるんだけど。

 魔導距離の原点は術者の体になる。

 腕、頭、足も原点。

 もちろん原点だからと言って、自分の体の中で収束を行うっていうのは無理、基本的には」


「いや、そりゃ。

 やったら死んじゃうし」


「腕をのばして収束を行えば、指先が原点になるから、その分、相手近いところに原点を持ってくることができる」


「ほうほう」


「ただし、この話には例外がある。

 それは武器を持っている場合」


「杖の先が原点になる、みたいな」


「半分正解。

 武器がすごく良いものだったらそう言えるかもしれない。

 でも安物の武器だと、そこまでの性能は出ない。

 魔導距離が原点よりも大きくなるの。

 武器の性能の1つとして、『どれだけ魔導距離を縮めることができるか』、というものがある。

 高価な武器のほうが効率良く魔法を使用できる。

 まあ武器の性能っていうのは魔導距離だけでは測れないんだけど」


「うーん・・・。

 収束位置が自分に近いほうが魔力効率がいいけど、自分から遠いほうが相手の不意をつけたり、遠距離攻撃可能だったり。

 どっちを重視するか・・・みたいな」


「私の意見としては、エレナは中距離を重視するのがいいと思う。

 魔術も武器も使えるし。

 足も速いから、中距離から一気に攻めることもできる」


「うーん、そっかなー。

 じゃあ早速闘技場へ行って、鍛錬を」


「駄目、やっぱり今から数学教えるから」


「えー」






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