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恋紬のフィラメント  作者: 如月雨水
糸遊結びて
4/42

理解したくない 1

ノリと勢いでやったら確実に失速します。現に、失速しました。

ので、これからの更新はスローペースになります。亀更新にならないよう気をつけますが、更新は遅くなります。

お気に入り登録してくださった方、眼を通してくださる方、申し訳ありませんがご了承ください。

シャワーを浴びた後、制服に着替えるために部屋に戻った。

その時の秒針、7時ジャスト。

学校にはまだ余裕で間に合うからと、私はのんびりと通学の準備をして、いつも通りにリビングに向かっただけなのに・・・・・・何故ですか、神様。私のことが嫌いなんですね。私も神様なんて嫌いだよ、馬鹿っ!

「おはよう、冬歌」

ああ・・・どうして、柏木が我が家のリビングにいる。そして何故、至極当然な顔で朝食を食べているの。ふらりと、身体がよろめいた。

あ・・・そう言えば、今日から柏木の両親の出勤時間が早くなるから、朝食を一緒にって、母さんが言ってた、よう、な。

何てことだ。――無情すぎて、笑えもしない。

「お、おは・・・よ」

挨拶をしたが柏木と同じ空間にいることに耐えかね、兄さんの姿を探せば、シンプルなエプロンを身につけた探し人がキッチンから姿を現した。私が昨日の朝食と夕食当番だから、今日は確かに兄さんが食事当番だ。とすれば、学校から帰ったら風呂掃除をしなければならないのか。

軽く現実逃避を試みるも、見事に失敗。

くっ・・・、存在感がありすぎる幼馴染が憎くて堪らない。

「ほら、冬歌。お前もさっさと食べろよ」

わぁ、テーブルに並べられるこんがり焼けた食パンとハムエッグ、サラダ。兄さんが持ってきてくれたオレンジジュースは何とも朝に相応しく美味しそうだ。

・・・食欲は、柏木を見た瞬間に一気に失せたけど。

「あの後、何で連絡返してくれなかったんだ?」

「電源切ってたから気付かなかったんだよ」

「気づいた後も無視ってか?」

「別に、いつもあんまり返してないじゃん」

素っ気なく言葉を返せば、柏木が頬杖をついて私を見上げる。

「ふぅん」

「何か文句でもあるの?」

「俺を突き飛ばしておきながら謝罪の言葉もない、随分と酷い幼馴染に文句はあるな」

「うぐっ」

「痛かったなぁ・・・」

「それは・・・・・・その、ごめん」

確かにあれは私が悪かった。

なので素直に謝れば、にやにやと意地の悪い顔をして・・・。

「ああ、倒れた本棚も落ちた本も、俺と伏見先生が直したから気にするなよ」

だから嫌いなのよ、柏木は! 図書委員として私が誇りを持っていることを逆手に、何でこう・・・厭味ったらしいっ。

や、でも原因は私だから強く出れない。忌々しく柏木を睨めば、実に愉快だと言いたげに私を見ていた。くっ、そんな顔すら絵になるなんて憎たらしい。

兄さん・・・この男は本当に、私のことが好きなの? 正直、信じられない。

やっぱりあれは、性質の悪い冗談だったんだ。

だとしたら幼い頃の約束なんて無効だし、効果なんてないから、夢のことも忘れよう。それがいい、そうしよう。

「まぁ、とは言え冬歌は気にするだろうから・・・って、おい」

あ、そうだ。

司書である伏見ふしみ先生には今日、しっかりと謝ろう。誠心誠意、謝罪しよう。

優しい、と言うかヘタレで押しに弱い伏見先生のことだ。困ったように笑いながら許してくれるだろう。たぶん、胃を押さえながら・・・。

伏見先生、柏木のことが苦手だからなー。短時間とは言え、同じ空間どころか力を合わせての作業は苦行だっただろう。胃薬でも買っていこうかな。

「俺の話、聞いてないだろ冬歌」

「っひ! なななな、なん、何で耳元で喋るのよ馬鹿っ!!」

「冬歌に反応がないから、だな。ああでも・・・耳を押さえて、真っ赤になって可愛いな。からかいがいがあるよ、本当」

「この・・・っ」

震える手を握り締め、拳を柏木に向かって振り降ろそうとした瞬間、兄さんから制止の声がかけられた。止めないで、兄さん!

私はこの男を殴らないと気が済まないどころか、腹の虫が治まらないの!

「じゃれあうのはいいけど、そろそろメシを食わないと学校に遅れるぞ」

「もう行くからいらない」

「そう言うと思ったから、これでも食いながら行け。朝食抜くのは身体に悪いからな」

と言って、卵サンドが乗った皿を突き出された。何時の間に作ったと言うよりも、予想していたのかこの状況を・・・。だったら少しは助けてよ。妹よりお隣さんに味方するの?

複雑な感情を抱きつつ、けれど食べ物に罪はないと手を伸ばした。

一口かじった卵サンドは、砂糖が大量に投入されていて何とも・・・・・・美味しくない。

「・・・兄さん、甘すぎるよ」

「そうか?」

料理の成功率が極端に低い兄さんは、どうやら今回は砂糖を大量に投入してしまったようだ。とすれば、あのテーブルに並べられた料理にも当然ながら砂糖が入っており・・・。よく、完食出来たね柏木。称賛ものだよ。

兄さんは首を傾げながら、特に気にしていない素振りで椅子に座った。

「食べられるなら問題ないだろう」

砂糖味の料理を苦もなく食す兄さんの味覚は、確実におかしい。そう言えば・・・ゲテモノ好きでも無類の甘党でもないけど、食べられれば別に何でもいいって男だったね兄さん。

いや、それ以前に料理の成功率が低すぎるのが駄目なんだ。どうして作っている最中に、砂糖を入れてることに気づかない。ワザと失敗しているとしか思えないんだけど。兄さんに呆れた眼を向け、視線を卵サンドへ移した。

「・・・」

無言で一口しか食べていない卵サンドを皿に戻し、テーブルに置いた。ごめん、甘い物が苦手な私にはコレは天敵だ。吐くほど甘いし、口の中が気持ち悪い。

「ホットミルクは飲めるのに、これは食べられないってか?」

「だってこれ、甘さが違いすぎるの! そんな不機嫌な顔で睨んでも、無理なモノは無理だから。食べられないからねっ」

これを食べたら確実に、体調を壊す。その自信が私にはある。

「しつこいぞ、雷歌。そのしつこさを恋人にも向ければ、浮気されることもないのにな」

「家族にはしつこく、恋人にはそっけなくが俺だから」

誇らしげに言うことだろうか、それは。

柏木も呆れて溜息をついている。やれやれと言ったように首を横に振って、肩を竦めた。

「ほら、冬歌。行くぞ」

「ちょ、私の鞄を勝手にもたないでよ。返して!」

「じゃあな、雷歌。今度は甘くない飯を頼む」

「運次第だね」

サラダを食べながら、兄さんは朗らかに笑う。いや、努力しようよ。

そして柏木。

いい加減に私の鞄を返して。あ、こら。鞄を持ち上げないでよ! 身長差から、ジャンプしないと届かないんだけど。ああもう、腹たつ!

「兎みたいだな・・・冬歌。そんな一生懸命だから、祀くんに遊ばれるのに。いや、可愛いから苛めたいのか。ひねくれてるよ、祀くん」

「なにか言ったか?」

「何も」

鞄を取り返そうと必死な私には兄さんが何を言ったか解らないが、柏木が胡散臭いほどに輝かしい笑みを兄さんに向けている所を見るに、何か余計なことを言ったのだろう。下手をしたら、怒りに触れるような・・・。

兄さんが顔をそむけて、誤魔化すように咳払いしたからこの予想は当たっているのだろう。心なしか、顔色が悪いよ。まったく、何を言ったのやら。

視線を彷徨わせていた兄さんが、ふいに思い出したように私を見た。

「そうだ、冬歌。近所のスーパーが安売りの日だから、肉じゃがの材料とあとは適当に何か買ってきて」

「兄さんが行けばいいじゃない。どうせ家にいるんだから」

「用事がない限り、俺は家に引きこもっていたいんだ。仕事の催促もきちゃったし」

「この引きこもり小説家め」

「褒め言葉だ、ありがとう。じゃ、よろしく」

何がじゃ、よろしくだ。まったくもう。肩を竦めた私は、柏木から鞄を奪取することを諦めた。溜息を吐きながら廊下出れば、玄関前に立つ柏木が楽しげに笑う声がする。

何がそんなに面白いのかと睨みつけて、瞬いた。

慈しむような柔らかい眼差しを私に向けていたから・・・。

こんな柏木を、私は久しぶりに見た。最後に見たのは、小学校を卒業する時だっただろうか? あの時、どうして柏木は笑ったんだっけ?

ふいに脳裏をよぎる、桜の花弁。

真新しい中学校の制服――ブレザー服を着た、私と柏木の姿がノイズ混じりに蘇った。

何かを言って、笑う柏木のその表情が私は―――――。

「行くぞ、冬歌」

「・・・・・・うん」

靴を履いて、玄関の扉を開ける柏木の後を追いかける。

家を出て、通い慣れた住宅街を歩く。通学路であるこの場所に、ちらほらと学生が見えた。が、面白いことに鷲ヶ丘高校の制服を着た人間は誰もいない。

妙なこともあるんだなー。首を傾げつつも、深く考えずに私はそう言えばと柏木を見上げた。

「鞄、いい加減に返してくれない?」

「ああ、ほら」

さもあっさりと、返してくれる。

私のさっきまでの努力って一体・・・。疑問を抱くほどに、簡単に鞄を私に手渡した柏木に首を傾げた。何がしたいんだ、この男。

「ほっぺ触るの、止めてくれない?」

本当、何がしたいんだろう・・・。

「柔らかいな」

「硬かったら怖いでしょうが」

「それもそうだが、俺が言いたいのはそう言うことじゃなくて」

どんな言葉だろうが、私には関係ない。

「どうでもいいよ、面倒くさい」

「・・・その面倒くさいって口癖、いい加減に直したらどうだ? 言動だけの面倒くさいって、何だか滑稽だぞ」

「ほっといてくれない?」

意識していない限り、癖は自然と出るんだから仕方ないでしょう。まったく。

肩を竦め、私は頬を撫でる柏木の右手を払った。ぱしりと良い音がしましたよ。憮然と、不服そうな顔をする柏木が口を開いたが、私はそれを綺麗に無視して背を向けた。

はずなのに、だ。

「か、柏木!」

「顔真っ赤」

「い、いいいいいいいいい今、な、なん、なんでっ」

ほっぺにチュー?!

え、何で、どうして。てかいきなり、しかも公道で何をしてくれちゃったんだこの男は。そう言うのは恋人にやりなさい! 断じて、幼馴染である私にはするなっ。

はっ、誰かと言うより柏木に恋する乙女に見られたりしたら・・・。

『西城さん、ちょっといいかしら』

から始まる、呼び出しの危機。そして始まる、恋する乙女の悪意ある言葉攻め。

ああ、私は何も悪くないのに、都合よくかかったフィルターによって私のせいにされるんだろうな。今のほっぺチュー事件も私が無理矢理、柏木に強請ったとか思われるんだろうな・・・。違うのに、現実はまったく違うのに・・・無情すぎる。

舌戦で負けるつもりはないが、恋する乙女に真実を言っても伝わらないのが現状。

実体験したからこそ、起こりうる未来に胃が痛む。

「縁を切ろうか、柏木」

「唐突に何? てか、昨日も言ったけど却下だって」

「私の平穏な未来のために、全ての縁を切って他人になろう。胃薬とお友達は流石に嫌だよ、私」

「は?」

きょとんとした顔の柏木はかなりのレアだが、それをマジマジと観賞する余裕は私にはない。警戒するように周囲を見渡して・・・・・・・・・安堵した。

視界に映ったのは電柱に止まるカラスと、真横を通り過ぎたキジトラ猫だけ。

人の姿はなかった。むしろ不気味なほどに、周りに誰もいない。

何これ、怖い。――が、恋する乙女の方が私は怖い。

「縁を切るなら、京都にいい場所があるわよ」

「っゆ、悠乃(ゆうの)?」

「はぁい、おはよう冬歌」

私の三人しかいない女友達の一人、佐伯(さいき)悠乃は勝気な眼を悪戯に細めて私と柏木を交互に見つめた。鞄を持っていない左手で口元を隠し、切れ長美人(クールビューティ―)と男子に言わせる容姿を裏切って品なく笑う。

「むふふふふ・・・。なになに、痴話喧嘩? ああ、素晴らしき幼馴染と言う関係。恋愛にしろ友情にしろ、ゲームの王道で最高の関係よね。友情だとけして裏切らず、離れずでこれが男同士だと腐ったモノを連想できるしそれもまた・・・。ああでもでも、すれ違いから気付く恋心とか美味しいのよね。報われない恋もまた、良し。幼馴染の恋を見護り、時に支えて自分の恋心を消すって言うのも・・・素敵なのよ」

恍惚とした表情をする悠乃に、私は苦笑した。

流石、ゲームをこよなく愛する人間だ。特に――恋愛系をだが。

「何処から見てたの」

「柏木君が冬歌に鞄を返す所から」

「ほぼ最初からなのね」

誰も目撃者がいないって、安心したのに。早合点だったか。

でも現場を押さえたのが悠乃でよかった。これが恋する乙女だと思うと・・・胃が痛い。ついでに頭も痛い。さらに言えば身体もって・・・ちょっと!

「圧し掛かってこないでよ、重い!」

「俺を無視する冬歌が悪い」

「だからって何で・・・っ」

「幼馴染に対する嫉妬、これも王道よね・・・。ちょっとしたことで不機嫌になって、相手の注意を自分に向けるために起こす些細な行動。現実で見たら萎える、と思ったけど・・・」

にやにやと締りのない顔で悠乃が笑う。

「良いわ。凄く、良いわ・・・」

うっとりと心酔するような表情を浮かべる悠乃に、私は引いた。ゲーム好きもここまで来ると末期だ。中毒者なんて言葉じゃ足りない。

霧生(きりゅう)君、写真はばっちりよね!」

「え?」

「当たり前のことを聞くなよ、佐伯。俺の腕は最早、プロ級だぜ?」

住宅と住宅の隙間から一眼レンズカメラを持って現れた、もやしのように身体が細い眼鏡の・・・・・・おい、霧生(あきら)。胡散臭い笑顔を浮かべながら、ポケットから呑気に飴を取り出して食べるな。舐めるな。噛み砕くな。

盗撮しないでよ、犯罪予備軍! って、そうじゃなくて・・・。

「写真って、何を撮ったのよ!」

「柏木が西城のほっぺにキスした所。あと、抱きついている所」

「・・・それ撮って、どうするつもり」

まさかとは思うけど、学校新聞に載せないよね?

新聞部で「ネタがない!」とここ最近、騒いでいたからありえないと言えないのが悲しい。間違ってもそんな新聞、恋する乙女が見たら阿鼻叫喚。確実に私の胃が荒れる。今から、胃薬とお友達かぁ・・・。

そんな未来、絶対に嫌だ。

「当然、売るよ。そうだな・・・一枚三百円でどうだ、柏木?」

「珍しく良い仕事をしたな、昶。ネガごと買おう」

「売った!」

「売らないでよ!」

私の背後から重みがなくなったと思ったら、何時の間に霧生の傍にいたのさ柏木! いや、それ以前にそんな写真をネガごと買うって・・・・・・何に使うつもりよ。

肖像権の侵害だよ、犯罪行為だよ。訴えて・・・いや、柏木との舌戦で勝てた試しがないから負ける。がくりと、肩を落とした。諦めるしか、ないのかな・・・ふっ。

「俺が現像して、ネガを柏木に渡そうか?」

「ああ、そうだな。昶、解ってると思うが」

「はいはい、お前相手に誤魔化したりちょろまかしたりしないよ。俺だって、命がおしいからな。・・・てか、入院は流石にもう勘弁」

一年の時、確かに入院したね。全治一カ月の打撲で。

柏木と何があったか知りたくないけど、敵に回したわりにそれだけですんでよかったよね。むしろ、骨折じゃないことが奇跡かもしれない。柏木が手加減したか、霧生が頑丈だったのか・・・って、それはどうでもいいことか。

止めていた足を動かし、学校へ向かう。

これ以上、変なことで頭を使いたくない。息を吐き出して、背後で未だ現実(リアル)仮想(ゲーム)の世界に思いをはせる悠乃の声が聞こえる。やたらと幼馴染と言う関係に興味と言うか、関心を寄せる友人の思考が理解できない。

どうして、幼馴染だから恋をしないといけないのか。

何故、幼馴染だから好きにならないといけないのか。

私は理解したくない。

柏木と幼馴染だからと言って、私は柏木に恋をしない。好きだと言っても、家族愛に似た好きで異性に向ける好きではない。――間違っても、LikeがLoveには変わらない。

もしも、なんてよく言われるけど私から言わせてもらえば「ありえない」だ。IFを考えるだけで寒気がする。

ああ、やだやだ。鳥肌がたつ。

ぶるりと身体を振わせて、両腕をさする。

「そうそう、冬歌」

飛ばしていた思考を戻したのか、悠乃が私の隣に並び立つ。

ちらりと背後を見れば、柏木と霧生が談笑しながら後ろを歩いている。会話の内容はとりとめはないが、どうやら先程の写真のことではないようだ。

「縁を切りたいって言ってたけど、本気なの?」

「本気だよ。私は本気で、柏木と縁を切りたいの。このままじゃ、平穏無事な人生を歩めない気がしてね」

肩を竦めて告げた私の右腕を、悠乃が強く握った。

「本気なら、尚更よく考えないと駄目よ」

「悠乃・・・?」

「縁を切ったらもう、戻せない。どんなに願っても、望んでも、切れてしまったモノを元に戻すことは難しい。ねぇ、よく考えて」

冬歌が本当に願うことって、何――――――?

意味が、解らない。

悠乃の言葉が、上手くのみこめなくて言葉が詰まった。

私が叶えたいことは、柏木と縁を切って赤の他人になること。柏木と知り合いでなければ、私は普通に女友達を増やせただろうし、恋人も作れるから。

「考えて、悩んで、それでも縁を切るのが最善ならそうすればいい。けど、ふとした思い付きならやめて。後悔するわよ」

悠乃の言葉に、何も言えない。

否定も、肯定も。

やけに真剣な悠乃の眼が私を射抜く。掴まれた右腕が痛い。

「よく考えて、冬歌」

どうして悠乃がそんなことを言うのか、理解したくなかった。

だから私は。

「考えるだけね」

それだけしか、口にできなかった。


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