俺、ビルで迷子になりました
ビルの中は小綺麗としており、秀人の未知の仕事に対する不安感は少し薄れてきていた。
ただ、少し気になったのはビルの中に人がほとんどいないくらいのものだった。
「ようこそおこしくださいました。
本日はどのような御用で。」
快活な男の声がする。
声の主の方をみると、そこには40歳半ばくらいの中年の男がいた。
「あっ、バイト受けに来たものです。」
不意をつかれた秀人は、少しおどろいたが、すぐに体勢を立て直し、丁寧に返答する。
「そうでございましたか。それでは、23階へいらしてください。
そうすると、面接会場になります。」
えらく説明口調である。
少し妙な感じがしたが、あまり気にせずに、とりあえず、秀人はエレベーターに乗り込んだ。
「それでは、いってらっしゃいませ」
男はそう言ってどこかに去って行った。
「ふう、緊張したぁ〜」
秀人は今、エレベーター内にいた。
しかし、このエレベーターは15階までしか行かないらしく、とりあえずは、15階でおりて、23階を目指すことにした。
「いやぁ、しかし、高いなぁ」
そんな小学生のような感想を漏らしていると、いつの間にかエレベーターは15階についていた。
「はぁ、こっからは階段使うか。
かなりめんどくさいが、仕方ない。」
そう思って階段を探す。
しかし、なぜか階段は見つからなかった。
「この階無駄に広いなぁ。
マジで階段どこなの...」
知らないビルで一人きり。
しかも人気がない。
秀人の不安はかなり大きくなっていた。
15分くらい探したが、見つからない。
もう階段なんて諦めようか。
そう思って秀人はその辺にあった椅子に腰をかける。するとー
「中村様。こちらにございます。」
さきほどの男が目の前に立っていた。
秀人は少々不気味さを覚えたが、それよりも人がいたことに対する安堵の方が大きかった。
「ありがとうございます。」
そう言って秀人は立ち上がると、男について行った。
そこにはエレベーターがあった。
「さあ、中村様こちらのエレベーターになります。」
またさっきのようなエレベーターだ。
「ありがとうございます。」
そう軽く秀人は男に礼を告げた。
しかし、中に入って彼は言葉を失った。
なんと、そのエレベーターのボタンは、15階、16階、そして血で塗りつぶされていて見えないボタンしかなかったのだ。
秀人は不安と恐怖、そしてあまりの衝撃から、その場で気絶してしまった。
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