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最終話

時は流れ、秋。

夏の暑さよりも断然涼しいほうなのだが、近ごろ地球温暖化という環境に良くない事が起こっているので、まだ暑く感じてしまう。

だが、それはそれとして、文化祭が近づいてきたのだ。全校生徒は大変忙しそうになんだかんだしている。もちろん、オレのクラスもだ。

「おらおらーっ、働けー」

「文化祭が始まるまでまだ時間はあるが、今の内に働けー」

「あっ、材料が足りない・・・買い物しなきゃーっ」

オレのクラスは喫茶店をやるらしく、部屋の飾りつけの準備や喫茶店のメニュー選び等が重なり忙しそうにしている。しかし、ただの喫茶店ではないのだ。

「神谷くん、動かないで」

オレはクラスの女子に動くなと命じられ、オレはその命令通りに行動する。女子はメジャーを手にして、オレの腕の長さや胴回り等を図っている。オレ達がやるのは・・・執事喫茶店だ。

「・・・何故オレなんだ?」

何故かオレが執事役に任命され、その他男子も数人任命された。仲間が居てくれるのはありがたい話なのだが、オレである必要はないはずだ。

「神谷くんに似合いそうだから」

「・・・オレがか?執事服に?」

執事と言えば、我が主をおもてなしする職業の人ではないか?と思うオレなのだが、それが似合いそうと言われると、ある疑問を抱かざるを得ないのだ。

オレってそんなに人につくせそうに見えるのか?と・・・実際、幽霊の悩みを解決したりするのだが、多分その体験を長くしたおかげでそう見えたのだろう。

「そ、それに・・・(か、カッコイイから・・・ブツブツ」

「なんだって?」

「・・!なんでもない!」

女子は頬に朱を浮かべ、そっぽを向いてしまうが・・・なんだ?風邪なのか?あまり無理すると倒れてしまうじゃないか?

「クスッ。直斗くんはモテますね」

オレと女子のやりとりを見ていた新妻薫は微笑みながらオレに近づいてくる。

「は?オレがモテる?そんな訳あるか。人生にモテ期が三回しか来ないらしいが、オレが赤ん坊から小学校に上がる前ぐらいにそのモテ期を三度使ったらしいので、オレがモテる事はもう無いだろう」

「・・・本気で言っていますか?それ」

新妻薫は怒った表情でオレを睨む。こ、怖い・・・

「そうだよ!直斗くん!」

篠崎楓はオレ達の会話を聞いたのか、頬を膨らませて、プンスカプンと怒っていたのだが・・・みんな、怒りっぽいのだろうか?牛乳やヨーグルト等の乳製品を摂取してから、カルシウムを補ってくれよ・・・

「・・・オレが女子にモテようが、そうではないかはどうでもいいだろう」

「よくありません!」

「そうだよ!」

再び怒る二人・・・一体何なんだよ・・・

「・・・だったら、オレにどうしろと・・・執事になって、おもてなししろと言うのか?お嬢様」

「・・!お、お嬢様なんて、そ、そんなっ!」

「な、直斗くんっ、は、恥ずかしいよっ」

今度は二人は顔を真っ赤にして身体をくねらせ、オレを上目遣いで見るのだが・・・熱があるのか?女子は病気になりがちだな・・どうも。

「『チッ。ガキが!ご主人様のご主人様になる事なんて、オイラが許さん!』」

今度は篠崎楓の鞄にぶら下がっているぬいぐるみがオレを罵倒。だから、どうしろと言うのだ・・・それと、ドラゴンよ・・・執事の意味が分かるのか?さすが長生きとされている伝説の生き物だ。

「ちょっと神谷くん!執事は敬語なのよ!敬語の練習もしなさい!」

オレの身体を採寸している女子はオレを叱った。何故、オレはこうも怒られやすいのだろう。オレが何か怒らせる事をしたのだろうか?無自覚だ。

「へぇへぇ、分かりやした、お嬢様」

オレは必要最低限の敬語を使ってやった。

「・・・神谷くん、敬語は苦手なの?」

「・・・ああ、何だか自分が自分でなくなるような気がしてな」

オレは敬語が苦手・・・いや、嫌なのだ。自分から壁を作っているような気がして、目上の人間以外には敬語を話せないでいたのだ。

年上の人間や教師等の目上の人物に対しては、少々使える方なのだが、何故か言いたくないと心の中のオレが叫んでいるんだ。

「直斗くんに苦手な事があったんだ・・・ふふふっ。もっと直斗の事を知りたいな」

「クスッ。全く、同感です。楓さん」

オレの苦手を知って笑っている篠崎楓と新妻薫。このやろう、面白がっているな?

「・・・それに執事って、かっこいいヤツがするイメージがあるだろう?オレには不向きだと思うんだがな」

「へ?なんで?直斗くん」

オレの発言にキョトンとした表情で首を傾げている篠崎楓。本当に分かっていないのか?コイツ・・・

「オレが、今まで自分の事を本当にかっこいいとは思っていないからだ。思っていたら、ナルシストになるからな」

オレはかっこ良くない。顔だって普通だし、スタイルも普通だし、成績は・・学年トップなのだが、それだけが唯一の良い点なのだ。他の部分は至って普通なのだ。

「・・・謙遜は良くないと思いますが、自信過剰も良くないと思いますよ。私は・・・直斗くんの事を・・・かっこいいと・・・!なんでもありません!」

新妻薫はブツブツと喋って、顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。一体何なんだ?

「・・・まぁ、執事をやるのが面白そうだからやるけどな」

「・・・ふふっ。いつもそうだね、直斗くん」

「何がだ?楓」

篠崎楓も顔を赤くしてオレと喋っている・・・しかし、何故女子のみんなはオレと喋る際、熱っぽくなるのだろうか?その理由を聞きたいが、何故か聞き出せないのは何故だろうか?自分で自分が考えている事が分からなくなっている。

「だって、何をやるにしても、『面白そうだから』ってイキイキしているもん。まるで、子供みたいだよ?直斗くんは」

「フッ。褒めているのか知らないが、オレをガキ扱いとは・・・どこかの誰かさんみたいだな」

オレは微笑みながら篠崎楓の学生鞄にぶら下がっているぬいぐるみに向かってイヤミを言うかのように、喋ったのだが、ドラゴンはいつものように『チッ』と舌打ちをしてそっぽを向いてしまう。

「クスッ。どんな事でもやる気を出せる事は、大変いい事ですよ?直斗くん」

「・・・褒めてくれてありがとう、とでも言われたいのか?薫」

「クスクス。気持ちだけで充分ですよ?直斗くん」

新妻薫は満面の笑みでオレと雑談するのだが、どうやら心の距離は短くなってオレと新妻薫は『友達』になれたと再確認してしまう。オレは友人作りの才能があるのだろうか?

一方、男子諸君はというと・・・

「ぐぬぬ・・・神谷だけ・・・なんで神谷だけ!」

「神に祈ろう。リア充を爆発してくれと・・」

「3次元より2次元がいい。2次元はウソをつかない!ぶひぃ」

殺意を込めた目でオレを睨んでいたのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後。

いつものようにオレはオカルト研究部に直行。篠崎楓や新妻薫もオレと同行し、オカルト研究部の活動をしてくれるというのだ。部員だから当たり前な話なのだが、それにしたって二人はいつもニコニコと笑みを浮かべていたのだ。そんなに楽しみだったのか?このオカルト研究部が・・・

「『直斗~ぉ』」

レイはオレの真正面から満面の笑顔で抱きつき、頬ずりをしてくる。いつものスキンシップなのだが、寒気がしてしまう。

「・・・全く、お前は何も変わらんな」

「『うんっ!私、直斗が好きって言う気持ちは変わんないよっ!でへへ~』」

「でへへ~、じゃねぇよ・・・」

オレは呆れた。何故、人懐っこい幽霊にじゃれらなければならないだろう・・・そんなもん、何の因果か知らないが、面白いのでそっとしておくのが関の山だ。

「こ、こら、レイっ。適当な場所に座ろう?直斗くん」

篠崎楓はムッとした表情を浮かべ、オレの腕を掴み、ずんずんと前に進むのだが・・・ギュッと握りしめられているので、少しばかり痛い。

「・・・やれやれ」

仕方なく無抵抗なまま、部室のど真ん中に配置されているイスに座る事にした。

「さて、ジャックフロスト事件をまとめようか・・・」

「うんっ!」「はいっ!」

オレはこのオカルト研究部に入れてよかった。レイの成仏はまだまだ出来そうにもないが、その件に関しては文化祭が終了した直後に行動しようではないかーーー『オカルト研究部に幽霊部員がいる!』完ーー

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