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第20話 自作自演

オレがジャックフロストの存在を再び世に広げようと決意し、それに対する行動を行った数日後の朝。

我が家のリビングにあるソファーに座り、テレビでニュースをチェックすると・・・

「『今日未明、今回も地面が凍るという事件が相次いで起こっています。これは、今年の春に起こった事件なのですが、しばらく月日が経ってこの事件は起こらなくなり、終わったかのように思えましたが・・・』」

ニュースキャスターが資料に目を通しながら、オレの事を言っている。何だか、犯罪者っぽい気持ちになったのだが、気のせいだろう。

「『この夏、再び事件が起こりました。実際、この映像のように、凍っているのです』」

画面はとある県のとある町並みの風景なのだが、夏なのに地面が凍ったいるのだ。

「『夏なのに絶対におかしいと、この事件を人の犯行であると断定した警察本部は、犯人をジャックフロストと名付け、捜査しているそうです』」

オレは思い通りの結果に微笑みを浮かべる。こんなに大騒ぎになったのにも関わらず、犯人像は全くの不明。

「フッ。面白い」

オレの目はキラキラと光る。このジャックフロスト事件の犯人はオレとオレが分かっているのに、純粋に楽しんでいるのだ。この自作自演の事件の真相を皆で打ち明かすのだ。

「受けて立とう、ジャックフロスト」

オレはテレビの電源を消し、学校へ行く準備にとりかかるのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

放課後。

ようやくエアコンの調子が良くなって、文化部のエアコンは作動するようになった。オレは、早速エアコンの電源を入れ、涼しい風を部屋に送らせる事に成功した。

「うぉ~、涼しい」

オレは思わず感動の声を出してしまう。暑苦しい部室とは、しばらくおさらばだ。

「『直斗ぉ、嬉しそうだねぇ』」

我がオカルト研究部の幽霊部員であるレイはオレを真後ろから抱きしめてきた。オレは幽霊に触られると、寒気がしてしまう。

「・・寒くなるからやめてくれ・・・」

「『むぅー・・・』」

オレの願いは割と聞いてくれるレイは頬を膨らませて、オレから離れてくれた。

「『・・・!そうだ!アグニと同じようにぬいぐるみに憑依しよう!そしたら・・・でへへ~』」

レイはよからぬ事を思いついたのだが、オレは反論してやる事にした。

「ぬいぐるみと、じゃれる男子、か・・・見た目は面白いが、オレは絶対にやらないぞ」

「『むぅ・・・ああ言えばこう言う・・』」

レイは再び不貞腐れた表情を浮かべていたのだが、子供かとツッコミたい気持ちを抑え、まだ姿を見せない篠崎楓と新妻薫。二人は掃除当番やその他雑用を押しつけられ、この部室には居ないのだ。

「しばらくは依頼を受けないで置こうか、レイ。悪霊退治は、チビのレイ達に任せておこう」

「『うん、そうだね。一週間に一回は憑依して、小さい私をたくさん出して補充しないとね。一応、念の為に』」

「ああ、ドラゴンの話によると、悪霊を出している犯人がまだいるらしいからな(※第11話参照)」

レイと作戦会議をしていると、部室の扉が開き、篠崎楓と新妻薫が現れた。部室は閉じきっていて、しかも防音なので、聞き耳を立ててもオレ達の作戦は聞こえないと確信したのでオレは慌てる素振りはしない。

だが、レイは、あたふたと慌てていた。目は挙動不審で、汗を流していた・・・幽霊なのにな。

「?どうしたの?」

「何かあったんですか?」

篠崎楓と新妻薫は首を傾げ、レイの仕草に疑問を抱いている。オレはそれを見かねて、話をすり替える事にしたのだ。

「それよりも、今朝のニュースは見たか?」

「・・!そうだよ!直斗くん!ジャックフロストだよ!」

「ええ、そうです!また現れたそうですね!」

二人の目はランランと光り、オレの顔面に顔を近づけるまで近寄る二人・・・暑苦しいし、恥ずかしいぞ・・・

「ああ、そうだな。そのジャックフロストの情報が増えて、色々と調査出来るな」

「うん!」

「はい!」

二人は満面の笑みを浮かべ、その顔を向けるのだが・・・少しばかり照れてしまうオレ。いや、それよりもだ・・・

「それを踏まえ、ジャックフロストが再出現する前まで調査していた事を、各自発表して欲しいんだ」

照れ隠しの為、本題に移る必要性があったので、ジャックフロストに視点を置かせる事に成功した。その根拠は、二人は難しい表情を浮かべ、席に座っていて、オレの顔を見て分析する余裕はなかったからだ。

「まずは、楓から発表してくれ」

「うん、分かった。ちょっと待っててね」

まずは二人の情報を出してから色んな策を考え、その策を労じる事にしたのだ。なんでめんどくさい事を、なんて思う人がいるかもしれないが、オレにとっては非常に面白い事なのだ。自分で自分を調べさせる面白さを他の人に味あわせたい程だ。

「えっと、ネットや新聞で調べた事なんだけど、ジャックフロストは今年の春から出現したって書いてあるよね」

「ああ、そうだな。今朝のニュースでも言ってたな」

「でも、出現してから二ヶ月ぐらいで居なくなって、二ヵ月後の今ぐらいに再出現したって」

「ほう・・・」

篠崎楓の言葉に思わず感心してしまった。ドラゴンのペット化で証拠隠滅していて(※第11話参照)もうそんなに経ったのか・・・時が流れるのが早く感じてしまう。充実した毎日だからなのか、もしそうならば、オレの高校生活はバラ色だ。

「でね?思ったんだけど、この『二ヶ月』に何か意味があるんじゃないかな~?なんて思ってて・・・でも、何も分かんなかったんだ」

特に意味が無かったんだが、偶然そうなっただけなんだ。でも、そのネタは使えるかもしれないので、頭に叩き込む。

「あとは・・・ジャックフロストと名乗る人物がたくさん現れて、本物と偽物との区別が分かるような記事や情報が無くて・・・だから、これで私の話は終わり」

「なるほどな・・・次、薫」

「はい、分かりました」

新妻薫は自分の学生鞄を漁り、ノートを取り出し、それに目を通していた。

「今回の事件は異常なんです」

「ほう?どう異常だったんだ?」

「・・・まずは、春の事件から遡りましょう。春の事件では、ある地域からジャックフロスト事件が発生したのです」

それはそうだ。事件は現場で起きているんじゃない、どこかで絶対に何かが起きているのが事件なのだ。

「楓さんの言う通り、そのある地域から日本全国各に渡り、ジャックフロストと名乗る人物が増え、氷を撒き散らしたりしてしました」

新妻薫の言いたい事が分かったような気がするが、それはあえて言わないでおこう。

一方、レイやドラゴンはというと・・・一緒に仲良く眠っていた。それはそっとしておこう。

「そして、ジャックフロスト事件は、ある地域以外はジャックフロストと名乗って事件を起こしていたのですが、ほとぼりが冷めて、日本全国にジャックフロストと名乗る人は居なかったそうです」

新妻薫の説明にピンときた。その『ある地域』から発祥し、しかもその『ある地域』から事件が終わってしまったという事。つまり、犯人がいるならば、その『ある地域』周辺にいる筈だ。

「・・・直斗くんは気づいたようですが、その『ある地域』周辺にジャックフロストは居た、という事になります」

オレの考えに感づいた新妻薫。流石は探偵の娘だ。頭が良いし、状況を判断出来る。

「では、本題です。今回の事件は、日本各地で同時に起こってしまった、という事です」

オレは眉をピクリと動かし、新妻薫の説明に耳を傾かせる。新妻薫の推理が聞けるような気がして、楽しみになってしまうオレが居るのだ。

「ジャックフロストが単独犯なのか複数犯なのかは今のところ分かりませんが、春のジャックフロスト事件と今回のジャックフロスト事件の現象が全く同じなのです」

それはそうだ。犯人は同一人物で、しかもオレなのだから。

「地面が凍り、氷が散りばめられ、たまに建物や車の一部等が凍っていたそうですが、確実に春に起こったジャックフロスト事件を起こした犯人と今回のジャックフロスト事件を起こした犯人は同一人物でしょう」

「・・・なるほどな、面白い推理だ」

オレは微笑みを浮かべ、今の状況を猛烈に楽しんでいた。人の迷惑になっているが、たかだかその辺りを凍らせているだけなので犯罪ではないだろう。

「それに、ジャックフロスト事件は日本にしか発生していないそうです。犯人の狙いは分かりませんし、地面や建物等をどんな方法で凍らせているのかも謎なんですが・・」

新妻薫はノートを机に置き、長く喋ったから喉が渇いたのか茶を啜り、ほっと一息つく。

「とにかく私には、ジャックフロストがこう言っているのではないのか?と推測してしまうんです・・・『いつでもどこでも凍らせる事が出来る。自分の正体を暴けるものなら暴いてみろ』・・と」

「その推測なら、春から今までジャックフロストが活動しなかった理由はなんだ?」

「・・・多分ですが、楓さんが言った『二ヶ月』の活動休止に何か理由があったんです。証拠はありませんが・・・根拠はあります」

新妻薫の推理に思わず心の中で納得してしまう。多少ある推理力の持ち主で、ここまで断言されるとは思いもしなかった。

「以上で、私の話は終了です。次、直斗くんお願いします」

今度はオレが話す番なのだが、ぶっちゃけ話す情報は全く無い。故に、適当に且つウソっぽい事を真実のように見せかける必要があるのだ。オレはレイとドラゴンと共に何らかの活動をした事になっているから、何かを言わないと、サボって遊んでいたという疑惑を浮上・・・という事になる。

「レイやドラゴンに頼んで日本全国に飛び回らせ、情報収集を行わせたのだが・・タイミングよくジャックフロスト事件を目撃したそうだ」

「「ええ!?」」

オレの発言に耳を疑う二人。それもそうだろう、調査に行った直後そんな事件に遭遇するのかと言いたい気分も分かる。だが、オレはその状況だからこそ推論が立てやすいのだ。

「ジャックフロスト事件の犯人らしき人物を発見していないが、地面や建物の一部等が、みるみる凍っていたそうだ。そこで、オレはこう推論をする。幽霊や悪霊が近づいたら凍らせるという警戒してくる他の幽霊や悪霊、それに準ずる者が居るのではないか?と。それに、姿を見なかったと言ったから、どこかに隠れていたんだろうな」

「その存在がジャックフロスト・・なんですか?」

「まだ分からんが、おそらくそうだろう」

オレは幽霊や悪霊にジャックフロスト役として推論を立てていくつもりだ。

「霊感があってもどこかに隠れている幽霊が見えないんだ。故に、レイやドラゴンに犯人像を聞いても何も分からないんだろう。実際にオレも隠れている幽霊はさすがに見えない」

オレのこの説明で後からレイやドラゴンに聞きたがるのは、まず無いだろう。何故なら、隠れて見えなかったからだ。それなのに、どんな犯人なのかとは聞かないだろう。うむ、完璧だ。

「まだまだ調べる必要性があるな・・・」

オレ達はジャックフロスト事件を調べると意気込み、本日の部活動は終了したのであった。

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