第18話 デート計画実行!
時は流れ、土曜日。つまりは、依頼主が依頼したデートの真似事をしなければならない日なのだ。
オレは身支度を整え、財布やハンカチ、ティッシュ、絆創膏等、必要最低限のモノをポッケに詰め込み、我が家を出ようとしたのだが・・・
「お兄ちゃん、どこに行くの?」
我が妹の唯に出くわした。しかも、すぐにオレの腕にしがみつくように抱き着き、微笑みを浮かばせていた。
「あ、ああ。友達と約束していてだな・・・」
オレは真実を語る事はしない。何故なら、これからデートをすると言ったなら、100パーセント着いて来ると言ってくる可能性が目に見えていたからなのだ。
「私も着いて来ていい?お兄ちゃん。私、お兄ちゃんと遊びたい」
しかし、どんな事があっても着いて来るのがオレの妹である。朝、新聞を取る為、玄関先のポスターまで行く時さえも、着いて来るのがオレの妹である。更には、家の中で移動する時も、腕に抱き着いて一緒に歩くという行為もやってのけるのがオレの妹であるのだ。
「・・・はぁ、少し待ってやるから、着替えて来い」
「わぁい!待っててね!お兄ちゃん!」
追い返そうとどんな手段を用いようとも、絶対に着いて来るのが目に見えていたので、仕方なく妹のお供を許してやったのだ。
三分後、以前オレとデートした(※第4話参照)服装で身を包み、オレの目の前に登場。
「ほら、行くぞ。もう、皆が待っているぐらいの時間だ」
「わぁ~い!」
無邪気な笑顔を浮かべ、大はしゃぎになる我が妹、唯。オレの腕に抱き着く唯を、ひっぱるように前へ前へ向かうオレなのであった。
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時刻、八時五十五分。
唯のジャマが入らなければ、もう少し早く着けたのだが、やっとの事で集合場所に到着したオレと唯。
未だにオレの腕に抱き着く唯を放っておき、集合場所である、とあるバス停へと歩を進めると、すでにオレ以外のメンバーが到着していた。
「待たせたな、皆」
言いだしっぺのオレが一番遅いのを気にして、皆に謝ってしまう。
「う、ううんっ!私だって、今さっき、来たところなんだから!」
完全にデート仕様の衣装に身を包みこんでいる篠崎楓。長袖のピンク色のシャツを着ていて、黒いヒラヒラしたミニスカートという衣装だ。手にはバスケットを持っていて、その中には真紅の竜のぬいぐるみがひょっこりと現れていて、しっかりとぬいぐるみの振りをしていた。
「わ、私も、楓さんと同じタイミングに来ましたから!」
新妻薫は・・・なんというか、ボーイッシュの格好だ。ノースリーブの黒いYシャツに赤いネクタイ。白いショートパンツを身に纏っているのだ。
「『直斗~ぉ!私も、依頼主さんも来てるよ~』」
レイと依頼主は白装束。死んでいるからか、衣装を変える事が出来ないのだろう。
「お、お兄ちゃん・・・ゆ、幽霊が・・・ヒック」
唯は霊感があり、レイや依頼主の姿はハッキリ見えているらしいが、声までは聞こえないらしい。そして、幽霊が苦手な為、目に涙を溜め、怖がってしまう。
「唯・・・オレが付いている。もしもの時には、オレが退治してやるさ」
「ほ、ホントだよ?お兄ちゃん」
唯は腕を抱きしめる力を少し増やして、ぎゅうぎゅう抱きしめていた。ちょっと痛いが、唯の為ならばこのくらい痛い内には入らないのだ。
「と、ところで、そ、その子、誰?」
「わ、私も気になっていますが・・・とても神谷くんに懐いていますね」
オレの腕に抱きついている唯の存在に疑問を持った篠崎楓と新妻薫。オレから紹介しようとしたのだが・・・
「わ、私、唯!お兄ちゃんの彼女なの!はぅ、言っちゃった・・・恥ずかしいっ」
唯があらぬ誤解を生じさせるように自分で自己紹介をした。っていうか、彼女になった覚えがないのだが・・・
「「・・・」」
篠崎楓と新妻薫は目に涙を浮かばせていた。十中八九、唯の彼女発言に心が傷ついたのだろう・・・篠崎は分かるのだが、何故、新妻薫も泣くのか、分からないオレなのであった。
「・・・聞いての通り、オレの妹の神谷唯は、極度のブラコンなんだ・・・」
「・・!な、なんだ!ぶ、ブラコンなんだ!ほっ」
「・・!よ、良かったです!・・・本当に・・・」
オレはフォローして、誤解を解いてやった。篠崎楓は胸を撫で下ろしてほっとした表情を浮かべるのだが、新妻薫も似たようなリアクションをしてしまう・・・なんで、新妻薫も・・・?いや、それよりもだ、今回の任務を果たそうではないか。
「よし、今回は、皆とデートする。依頼主さん、オレに憑依してくれ」
「『は、はいっ』」
依頼主はオレの身体に憑依し、これで楽しさや経験等を共有する事が出来たのだ。
「お、お兄ちゃん!だ、大丈夫?!」
幽霊がオレに憑依した事を心配した唯はオレの腕を抱きしめたまま、オレの身体を揺さぶる。別に、なにも悪い事はないのだから、微笑みを浮かべ、その笑みを唯に見せる。
「ああ、大丈夫だ、唯。心配かけて、ごめんな?」
「はぅっ」
唯は顔を真っ赤にさせて固まってしまった。その様子を見ていた、篠崎楓と新妻薫、レイはというと・・・頬を膨らませ、オレを睨んでいた。こ、怖い・・・。
「よし、行くぞ。デートにさ」
オレ達はバスに乗り、ある目的地へと向かっていくのであった。
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場所は、とある動物園。
キリンや像や熊等々、たくさんの動物が見れる場所だ。何故、この動物園をデート場所にしたかというと、女子の気持ちを最優先に考えたのだ。
女子の多くは動物好きなのだろう、と勝手に想像してしまったのだが・・・
「かわいー!パンダだー!」
「キャー!カワウソかわいいですー!」
「あっ、レッサーパンダだー!かわいー!」
「ビーバーだ!あははっ、変な顔ですねっ!」
「『ご、ご主人様・・・もしかして、オイラ可愛くないの?ガウゥ・・・』」
「えっ?!嫌だなぁ、アグニの方が一番可愛いよ。ね?薫さん」
「ええ、そうですねっ!嫉妬しているアグニさんも可愛いですーっ!」
「『うわぁーっ!だから頬ずりするなー!』」
見事に大絶賛だ。篠崎楓と新妻薫は無邪気な笑みを浮かべ、動物を見ていたのだ。
「お兄ちゃん、キリンだよーっ」
「ああ、キリンだな」
「『直斗っ!カバだよ!』」
「ああ、カバだな」
オレや唯やレイも純粋に動物園を楽しみ、たくさんの動物を見回って、楽しんだのだ。オレに憑依している依頼主も何だか嬉しいとオレに訴えかけていたのだ。良かったな、依頼主さんよ。
「お、お兄ちゃん。ま、また、幽霊がいる・・・こ、怖いよぉ」
唯は再び怖がってしまい、オレの身体を抱きしめて、レイを指差す。
「『アレ?その子、霊感がありますね。幽霊と話す程は無いんですけど・・・そりゃっ!』」
レイは両手を唯に向けて、何らかの力を与えるのだが・・・まさか、霊感を更に与えたのか?
「『私の声、聞こえますかー?』」
「?!!ひぅぅぅ」
レイが唯に更に霊感を与えたようで、唯が幽霊と話す程の霊感を身につけてしまったのだ。レイの声により、盛大にビビり、オレの背に隠れ、ブルブルと身体を震わせる。お前は子犬か・・・
「『私、直斗の事が好きなんです』」
「?!!」
レイの言葉に驚愕の表情を浮かべる唯。身体の震えが止まって、レイの存在をしっかりと見つめる唯。この様子を見て、オレはレイが今やろうとしている事が分かってしまった。まさか、レイは唯の幽霊苦手を克服させようと、霊感を与えたんだろうか?と・・・
「『あなたは、直斗の事を・・・ううん、お兄ちゃんの事が好きなんでしょ?』」
レイの問いかけに頷く唯。重度のブラコンなので、当たり前の回答だ。
「『だから、私達は恋のライバルよ。私、死んじゃっていて、直斗が好きになる訳ないと思うけど・・・絶対に諦めないから』」
「・・!わ、私も、諦めない・・・絶対に諦めたくないって思っているよっ」
唯はオレの背を抱きしめた。絶対に誰にもお兄ちゃんを渡すものかと気持ちを込めて、レイを睨んでいた。唯にとっては、お兄ちゃんはオレ一人だけなのだから・・・
「『・・・えへへっ。恋のライバルの前に、友達になってくれないかな?私の名前はレイ。よろしくね』」
「うんっ!私、唯!よろしくね!レイ!」
レイのおかげで唯の幽霊苦手を克服した。オレは微笑みを浮かべ、レイを直視して感謝する事にした。
「ありがとう、レイ。唯と友達になってくれて」
「『はぅっ!い、いいよっ、そんな事っ!直斗の妹だし、仲良くなりたいな、なんて思ってて・・・』」
レイは顔を真っ赤にさせ、そっぽを向いてしまう。
「・・・フッ。そういう事にしておくさ・・・行くぞ、レイ、唯」
「『「うん!」』」
俺達は未だに、はしゃいでいる篠崎楓と新妻薫の元へ近寄り、更に動物園を楽しむ事としていったのであったーーー。
後日談
依頼主の女の子とデートしてあわよくばキスしたいという依頼は、デートのみの依頼は完了したのだが、キスは不可能と断定し、依頼主はそれは仕方ないと吹っ切れてくれて、あの世に帰ってくれたのだ。
レイや新妻薫、それに一緒にオレと帰りたがるワガママな唯を、何とか先に帰らせ、オレと篠崎楓は二人っきりとなった。
この二人っきりの状況はオレが望んだ状況であり、ドラゴンにはレイとオカルト研究部に居てくれとオレは篠崎の名前を借りて頼んだから、篠崎楓のバスケットの中にいるぬいぐるみの中にはドラゴンの魂は入っておらず、ただのぬいぐるみと化したのだ。
「あ、あの、何か用があるって言ってたけど、何かな?」
「篠崎・・・まだ、依頼の途中だっただろ?」
「・・?デートの依頼でしょ?それだったら、もう・・・あ」
「・・・だろ?まだ終わっていないんだ」
オレは任務を途中で放り出したくないのだ・・・というのは建前で・・・本当は・・・
「・・・目を瞑ってくれ」
「・・・」
本当は・・・キスに興味を持ったのは一番、オレなのかもしれない・・・
「ちゅ」
でも、今はそんな事はどうでもいい。
「・・・好きだ。楓(、)」
「・・!私も好きです・・・直斗(、、)くん」
ただ、恋人とキスしたかっただけに過ぎなかったのだから・・・
でも、そのキスで踏ん切りがついた。ずっと、篠崎楓を守るという気持ちも、好きでいたい気持ちも、そしてこれからも、篠崎楓の事を・・・
「楓、帰るぞ」
「う、うんっ!」
楓と呼ぶ事としようではないかと、決意したのであったーーー。




