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第16話 新入部員が増加する?!

「私、やっぱりオカルト研究部に入りたいです!」

推理ショー(※第15話参照)から二日が経ったある日、新妻薫から入部希望の旨を聞いたオレと篠崎楓は、驚愕の表情を浮かべるしかなかったのだ。

篠崎楓同様、霊感を与え、レイやドラゴンの存在を打ち明けるか否かを考える時間なんて貰えず、断る理由も思いつかない。

「とりあえず、部室でその話を聞こう」

「は、はいっ。ありがとうございます!」

オレは新妻薫を篠崎楓と共に、オカルト研究部の部室へと向かい、部室の扉を開き、レイの姿を目撃するオレと篠崎楓。

「さあ、適当に座ってくれ」

「はいっ」

新妻薫は笑みをオレに向け、イスに座りニコニコと満面の笑みを浮かべる新妻薫。

「『が、ガキ。今日も霊感を与えないのか?』」

篠崎楓の学生鞄にぶら下がっている真紅の竜のぬいぐるみがオレに語りかけるが、新妻薫に聞こえないように小声で『ああ』と答え、オレや篠崎楓も適当に座って新妻薫の入部希望の話を聞く事にした。

「さて、入部希望の動機を言ってくれると助かるのだが・・・」

「えっ?!そんな事が必要だったんですか?!」

オレの言葉に驚いた表情を浮かべ、焦ってしまう新妻薫。確かに、入部したいといえば入部できるのは当たり前なのだが、このオカルト研究部はかなり特殊な部なのだ。簡単に承諾出来る筈は無いのだ。

「ああ、篠崎もちゃんと言ってくれたんだ。な?篠崎」

オレは篠崎楓の目を見て、ちゃんと話を合わせろとアイコンタクトを送った。篠崎楓は、オレの言いたい事が分かったのか、コクリと頭を頷ける。

「うん、確かに言ってたわ」

「そ、そうなんですか・・・分かりました、私も言いますね」

新妻薫は、緊張したのか、目を閉じて深呼吸していた。そして、心の準備が出来たのか目を開け、真剣な表情を浮かべた。

「私、友達が出来て、その友達と一緒の部活に居られたならな、なんていう動機ではなく、言い過ぎだとは思いますが、一身上の都合で入部を希望したいんです」

「ほう?その一身上の都合は言えるのか?」

「はい、言えます。この前、言いましたよね?私の親が探偵をやっている事を(※第14話参照)」

「ああ、そうだったな」

「そしてその親は、この世を騒がせたジャックフロストの事件に興味を抱きました」

「へぇ・・・」

そのジャックフロストはオレなのでしたと言ったらどうなるのだろうか?警察に通報か?とにかく、新妻薫の話を聞き続けようではないか。

「で、色々と調査した結果、とある理由でこの街付近に私達家族は遠い街から引っ越しました。だから私はこの学校に転校してきた、という事です」

「そうなんだ・・・親の仕事の都合で転校してきたんだ」

篠崎楓は、相槌を打ち、ちゃんと話を聞いているのだが、新妻薫の話では部活に入部する動機が無いのではないか?

「それで、私もジャックフロストの事を調べたいと親にお願いしたら了承してくれて、私なりに調べてはいるんですが・・・一人では無理な気がして・・・」

「それで、ジャックフロストを調べているというオレ達の話を聞いたから、ちょうどいいと思って一緒に調べたいと・・・」

「はい、そうなりますね」

確かに言い過ぎではあるが、一身上の都合がある新妻薫。親の仕事を手伝いたいと思う娘の頼みで、親はそれを了承した事となれば、新妻薫はちゃんとした事件を解決しようとしている・・・

「なるほどな・・・では、質問していいか?」

だから、オレは新妻薫を入部させるか否かをテストしようではないか。

「はい、どうぞ」

「幽霊は信じるか?」

幽霊というオカルト的存在を信じ、更にその存在を受け止められるか否かだ。

「・・・ハッキリ言いますが、信じていません。でも、神谷くんが、このオカルト研究部に入部しているという事がどこか引っかかるんですよ」

「ほう?幽霊みたいなこの世に居る筈も無い存在を、肯定しているオレがおかしいとでも?」

「い、いいえ、おかしくはありません。ただ・・・私、神谷くんが幽霊を信じているという事を想像出来ません」

新妻薫はオレの性格や立ち振る舞いで幽霊を信じているとは思っていない様子だ。それもそうだろう、独り言を聞かれないように、細心の注意を払ってレイに話していたからだ。

「『な、直斗っ!ま、まさか、その人に霊感を与える気なの?!』」

レイはこれから起こるであろう出来事を容易に想像出来て、切羽詰まった表情を浮かべ、オレに語りかけるが・・・オレはそれを微笑んで、そうだと伝えるかのようにレイを見る。

「なら、証拠を見せたら、信じてくれるか?」

「「?!!」」

オレの発言に驚愕の表情を見せる篠崎楓と新妻薫。篠崎楓は、バラすの?!と言いたそうな顔で驚いているが、新妻薫は、幽霊が居るなんて、ありえない、と言いたそうな顔で驚いているのを見て、面白さを感じ、微笑んでしまうオレ。解釈が違えど、同じ表情で驚く人間が面白い。

「・・・と、いう事で、レイ。頼む」

「?!れ、レイって何ですか?!もしかして、幽霊の事ですか?!」

オレはレイの方向を向いて新妻薫に霊感を与えろと命じる。新妻薫には、誰も居ないのに誰かと話しているオレの景色しか見えないだろう。

「『わ、分かったよ・・・むむむ、でぃやーっ!』」

レイは両手を新妻薫に向けて、何らかの力を送り、新妻薫に霊感を与える事に成功したのだ・・・

「だ、だ、誰ですか?その人・・・って、その人って、いつから居ましたっけ?白装束を着ていますけど、この学校の生徒ではありませんよね・・・」

新妻薫はレイが見えるようになり、ワナワナと身体を震わせ、目をカッと見開き、レイの存在をよく見つめた。

「『あ、あの、私、レイという者で・・』」

「・・!キャアァァァ!」

レイは自己紹介しようとしたのだが、新妻薫はレイを幽霊と認識してしまい、恐怖で耳を抑え、床にしゃがみ込んだ。

「だ、大丈夫だから!幽霊だけど、大丈夫だから!」

恐怖を感じている新妻薫を放っておけない篠崎楓は、新妻薫の背をさすり、新妻薫を落ち着かせようとするのだが・・・

「こっ、怖いっ!ヒック・・・ヒック・・・うえぇぇぇ」

恐怖で涙が止まらない新妻薫。

「『お、おい、大丈夫か?』」

それを見かねたドラゴンは新妻薫に話しかけた。

「『こ、怖いのか?』」

「ば、バカ野郎!何をっ!」

この状況は非常にマズい。何故なら、幽霊が見えるようになり、しかもぬいぐるみが喋りだしたのだから、オレはドラゴンを抱きかかえ、口を塞いでやった。

チラリ、と新妻薫の顔を見たら、キョトンとしている表情を浮かべていた。泣き止んだ事はいいのだが、思考回路がショートしたのだろうか?気持ちは分からんでもないが・・・

「あ、あの、そのぬいぐるみを貸してくれませんか?」

ギクリ。新妻薫は、オレが持っているぬいぐるみに興味を持ち、貸してくれと懇願するのだが、渡さない理由は思いつかないし、喋ったのを新妻薫は耳にしたのだから、渡すしかないのだ。

「・・・ほれ」

「・・・ありがとうございます」

新妻薫は、真紅の竜のぬいぐるみをマジマジと見つめていた。そして・・・

「な、何か喋ってください」

ぬいぐるみに向かって喋れと命じてしまう。普通ならありえない命令なのだが、このぬいぐるみは普通ではないのだ。ドラゴンの魂が入っている為、喋る搭載付きのぬいぐるみとなってしまったのだ。

「『オ、オイラ、ご主人様のペットで、名前はアグニ。よ、よろしく』」

「・・・ちゃんと会話になっている。しかも、このぬいぐるみには、機械が埋め込まれていない・・・なんでなの・・・?」

新妻薫は手に持っているぬいぐるみを隅々まで見て、推理しているが・・・推理中だと敬語じゃないんだな、とオレは新妻薫の事を分析していたのだ。

「『オ、オイラ、元は悪霊で、ご主人様のお願いでこのぬいぐるみに入ったんだ。だから、喋れるぬいぐるみになったんだ』」

「な、なるほど・・・よく分かりませんが、分かりました・・・」

新妻薫は一通りドラゴンの存在を確かめて、そのドラゴンを持ったまま俯いてしまう。そして、思わぬ行動を目にしてしまうのだ!

「・・・か」

「『?』」

新妻薫の言葉に首を傾げてしまうドラゴン。オレと篠崎楓とレイも首を傾げ、何事かと見守る。

「かわいー!!!!」

新妻薫はドラゴンに頬ずりしてしまう。

「『うわぁーっ!』」

それを猛烈に嫌がるドラゴン。新妻薫のスキンシップから何とか逃げ、篠崎楓の手元に飛び込んで身体を震わせる。

「『ご、ご主人様ーっ!』」

「よしよし、アグニ。怖かったね」

篠崎楓はドラゴンを抱き、頭を撫でてドラゴンを落ち着かせ、ドラゴンはだらしない顔でご主人と戯れる事に幸せを感じて、自分の世界へトリップしてしまう。

「か、楓さんっ!その子、少しだけ貸してください!」

だが、興奮気味の新妻薫は篠崎楓が持っているぬいぐるみを奪い取って、再び頬ずりしてしまう。

「かわいー!!!」

「『うわぁー!た、助けてーっ!ご主人様ー!』」

新妻薫は喋るぬいぐるみに興味があるのか、無邪気な笑みでドラゴンを頬ずりするのだが・・・レイを見たから、現実逃避をしているのではないかと思うのだが、そっとしておこう。

「・・・とりあえず、一件落着だな」

「『そ、そうみたいだね・・・直斗』」

新妻薫は無邪気な笑みを浮かべ、ドラゴンを頬ずり。ドラゴンは猛烈に嫌がり、篠崎楓に助けを求めるが、篠崎楓はそれを微笑ましい表情を浮かべ、助けずに見守っていた。

「私、やっぱりこの部に入りたいですー!だって、喋るぬいぐるみと喋りたいですもーん!」

「お、おう。よろしくな・・・」

新妻薫は吹っ切れて無邪気な笑みを浮かべ、入部する事を決意したのだ。

また、一人部員が増えた事でこのオカルト研究部が賑やかになると想像するだけでも、自然と笑みを浮かべてしまう。部活は皆で楽しむものだからな・・・

この瞬間を、今という時間を、精一杯楽しもうではないか。

だから、皆に一言伝えよう。今の気持ちを最大限に込めて・・・

「・・・面白っ」

「『面白がるなーっ!ガキーっ!』」

ドラゴンの叫び声が部室に響いた。オカルト研究部の賑やかさを表現するかのように、なーーー。

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