第15話 オレに推理力がある!
前回の問題の(※第14話参照)答え。
cは次のように推理した。
まず、自分のリボンが赤であると仮定する。
するとbとcが見えるaは、すなわちbと赤とを見ている事となる。
ところが、赤は全部で2つしかない。
だから、もしbが赤ならば、当然aは自分の色が白だと気付く筈だ。
ところが、aは「分からない」と答えている。
したがってbは赤ではない。
一方bは、cが赤であるのを見ているわけだから、aがbとcを見て「分からない」と答えれば、ただちに自分が白だと気付く筈である。
ところが、そのbがaの「分からない」と言う言葉を聞きながら、しかも自分の色が「分からない」と答えている。
これは、bが赤色のリボンを見ていない事を意味する。
したがって、初めにcが自分のリボンの色を赤であると仮定した事自体が違っていたと考えざるを得ない。
つまり、cのリボンの色は白である。
cはこうして、自分の色が白であると結論出来たのだ。
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「ーーーという事だ。分かったか?」
オレは難解な問題を丁寧に新妻薫に説明してあげたのだが・・・
「なるほどです、分かりました・・・」
非常に落ち込んだ様子でガッカリと肩を落とす新妻薫。それを見て、ちょっと難しすぎたかもしれないと、罪悪感を感じてしまうオレ・・・これで、自分に自信がつかなくなったらどうなるんだろう?全てオレの責任だ。
「私も問題出していいですか!!」
だが、その罪悪感を感じなくても済んだ。新妻薫は目をキラキラと輝かせ、無邪気な笑みさえも浮かべていた。
「あ、ああ。別にいいが・・・どんな問題だ?」
「えっ?!え、えーと・・・う~ん・・・ちょっと待っててくださいね?」
オレは新妻薫の挑戦状を快く受け、新妻薫の問題を解く事にしたのだが・・・ここは探偵クラブではないぞ?と言いたくなったのだが、その言葉を胸の中にしまっておいた。
「う~ん・・・う~ん・・・」
新妻薫は部室の中をウロウロして問題を考えているのだが、先程の問題よりも難しい問題を考え、オレを負けさせたいという願望が目に見えていたが・・・そっとしておく事にした。
篠崎楓と雑談して問題を出してくる新妻薫を待つ事、数分後の事だった。
ピンポンパンポーンという校内放送が始まるという合図がスピーカーから流れ、何事かと身構えるオレ。何も悪い事をしていないのに、ひょっとしたら呼ばれるのではないかと心配になるのはオレだけなのだろうか?
「『昨日ーーデパートで買い物した心当たりがある生徒は、至急職員室教頭先生のところまで来なさい』」
それだけを伝え、放送は終了した。ちなみに、オレや篠崎楓、新妻薫はその日、デパートに行っていないと証言したので、教頭のところには行かなくてもいいのだ。
「・・・そうだ!この問題です!」
何かを閃いた新妻薫。何が何だか分からないんだが・・・
「さっきの放送聞きましたよね?さっきの放送で神谷くんの推理力や発想力を試してもいいですか?」
なるほど、そう来たかと笑みを浮かべるオレ。だが・・・
「えっ?!む、無理じゃないの?こんなの何も分かる訳ないよ」
何故か反論する篠崎楓。お前が答えるべき返答じゃないぞ。
「・・・フッ。面白い、受けて立とう」
オレは笑みを浮かべ、先程の校内放送を思い出し、その文章をノートに綴る。
『昨日、デパートで買い物した心当たりがある生徒は、至急職員室教頭先生のところまで来なさい』
「・・・こんなところか」
オレは不敵な笑みを浮かべ、自分が書いた文章を読む。
「・・・さて、推理しようではないか」
「み、神谷くん?何だか、楽しそうですよね・・・」
「ああ、こんな気持ちになるのは、久方ぶりだぞ?新妻」
オレの不敵の笑みに呆れた表情を浮かべる新妻薫。こんなに面白そうな体験を何故楽しもうとしないのだ?新妻薫よ。
「でも、何が分かるの?この文章で・・・」
篠崎楓もオレの書いたメモを眺めるが、理解出来ないという表情を浮かべていた。
「フッ。それを、これから紐解いておこう。では、この文章で分かる事と言えばなんだと思う?新妻よ」
「・・・十中八九、ウチの学校の生徒が何かの事件を起こしたのか、巻き込まれたのか・・でしょうね」
「ああ、そうだな。とりあえず、放送で呼ばれた生徒を仮に『生徒X』と名付けよう」
オレはノートに記されている『生徒』の付近に『生徒X』と書いた。篠崎楓と新妻薫はその様子を覗き込むように見つめてくる。一方、レイとドラゴンはというと・・・
「『わぁ~い。蝶だ~』」
「『すぅ・・・すぅ・・・』」
蚊帳の外だ。
閑話休題。
「それと、もう一つこの文章からある事が分かるんだ。それが何か分かるか?新妻」
「さぁ・・・あっ、さては、こうやって私から情報を言わせて、なんだかんだで推理を私に任せていますよね!」
「ちげぇよ・・・」
新妻薫の言いがかりに思わず即答してしまうオレ。
「あ、あの神谷くん。私、その事分かるかも・・・」
篠崎楓は、おずおずとした表情を浮かべ、挙手している。オレは、言ってみろと篠崎楓に命ずる。
「ウチの学校の校内放送って、普通は二回言うよ?でも今回は、一回だけだよね」
「あっ!私の元いた学校も普通は二回言います!」
篠崎楓は割と頭が回る方なのか、オレが言いたい事が分かったようだ。新妻薫はその意見に乗っかり、証言をオレに伝えるが・・・ピョンピョンと弾むように飛びながら発言しないでくれ。
「その通りだ。緊急時は腹が立っているか焦っているかのどちらかで、そうなると放送で1回しか言わない方が多いだろうからな」
「「おお~・・・」」
オレの推理に篠崎楓と新妻薫が驚嘆の声をあげる。恥ずかしいが、とにかく推理を続ける事にした。
「そして、事件を起こしたのか、或いは、事件に巻き込まれたのかが、この学校の生徒だと分かったのかも何故だか分かるか?これが分かれば、そのどちらかの事件が起こったのか分かるぞ?新妻」
新妻薫はアゴに手を添え、考えるポーズをしたのだが・・・それが癖だろうがオレにとっては、構いはしない。だから、オレはヒントをあげる事にしたのだ。
「『生徒X』が被害者だったらの場合で考えると、すぐに分かるぞ」
「え?えーと、もしも『生徒X』が被害者であるとして、加害者がこの学校に居るとしたなら『生徒X』を呼び出して犯人捜しするのは当たり前かも知れないけど・・・『生徒X』は加害者である・・・そうですね、『生徒Y』と仮定しましょう。その『生徒Y』の事は知らない事になりますよね」
「その通り。もしも、その加害者がウチの生徒の『生徒Y』としても、学年ごとにネクタイの色が分かりきっているのに(第2話参照)、何故学年の事を言わなかったんだろうって思ってね」
「み、神谷くん。だったら、その加害者が他の人で、その人を捕まえて『生徒X』に確認させる為、見せるとしたなら・・・あっ」
篠崎楓もオレ達の推理に手を貸している事に驚いているが、ノリノリだな、篠崎楓よ。さすが、オレが惚れた女の子だな・・・おっと、ノロケている訳じゃないが、男子に聞かれると、どんな事をされるか想像出来ない。
閑話休題。
「篠崎が気づいた通りなのか知らないが、何故その『生徒X』を呼び出さない?『生徒X』が事件に巻き込まれた際、名前を名乗らなかったのは何故だ?」
「うん、確かに変だよね。何か事情があるとは思えないし・・・」
「え、ええ。名乗らない理由なんて、ありませんですしね」
篠崎楓と新妻薫は確かめ合うように相談しつつ確認する。オレは、またも不敵な笑みを浮かべ、ノートにこう記した。
『生徒Xは何らかの犯罪を犯した』
「「お、お~・・・」」
再び篠崎楓と新妻薫は覗き込むようにオレのノートを見つめるが・・・近いぞ?二人共・・・距離が5センチもないじゃないか。だが、今はそんな事を思っているヒマはない。今は集中することにした。
「そして、その犯罪を何をやったのかを推理しよう。まずはだな・・・」
「えっ?!そこも?!」
「す、スゴイですっ。私のお父さんよりもスゴイですっ!」
オレの推理劇に興奮気味の二人。無邪気な笑みを浮かべ、二人はオレに顔を近づけるのだが・・・美人二人にこんな接近されたのは初めてなので、恥ずかしい思いをして、そっぽを向いてしまう。
「と、とにかく、デパートで犯罪といえば・・・何を思いつく?」
オレはとっさにフォローした。二人はオレから離れ、視線をあちらこちらへと向け、考えているらしいので、今のオレの表情が見えていない。今のオレの顔は、多分赤いだろう。しばらくしたら落ち着くがな。
「万引きとか?誰かの鞄とかを盗ったとか?」
「それもありますね。それから、営業妨害ですかねぇ~・・・」
二人は色んな犯罪を次々と言い放すが・・・肝心な犯罪名は言えていない。本当に分かってないらしいが、顔を通常に戻す時間をかせぐには最適な方法だろう。
「誰かを暴行したとか?」
「う~ん・・・どれもピンと来ないような気がしますね。神谷くんは、何を思いついたのでしょう?」
二人はオレを見つめ、首を傾げてオレの真意が分からないらしい。その時、オレは丁度、顔の状態が通常になったので一安心した。
「・・・肝心なところを見逃しているな。篠崎に、新妻よ」
「「へ?」」
二人は息を揃えて首を傾げ、オレを見つめてくるが、そんな仕草は止めろ・・・また照れてしまうだろうが・・・とは口が裂けても言えないし、顔にも出せない。
「ちゃんと書いてあるよな?『買い物した』とな・・・今挙げた事件の後で、そんな事をする犯人なんて、居る訳ないだろう。すぐに取り押さえられ、逮捕もされ、こんな放送なんて流れる事も無いだろう?」
「「た、確かにっ!」」
だんだん息が合うようになってきた二人。女子だからなのか、同じ気持ちになってしまうのだろうか?男であるオレにそれが分かる日は・・・一生無いだろう。
「ただ、万引きが一番怪しいのだが、デパートには会計を済ませていない商品を外に持ち出したら、ブザーが鳴る仕組みがあるんだ。故に、その犯行をやっても、すぐにバレてしまい、連行されるだろうし、『生徒X』の正体もバレるだろうからな」
「「お、お~・・・」」
三度、驚嘆の声をあげる二人。一方、レイとドラゴンは仲良く寝息を立てているが、幽霊が寝る所を見るのは初めてなので、新鮮だが、オレはそっとしておいた。
閑話休題。
オレは今までの情報を頭に叩き込み、推理を組み立て・・・やっと真実が見えたのだ。
「そして、これらの情報で導かれる犯行は・・・恐喝だ」
「「?!!」」
オレの答えに驚愕の表情を浮かべる二人。恐喝とは、相手を脅して金やその他物品等を盗る事なのだが、あまり釈然としない新妻薫は思わず、反論を交わしてしまう。
「あ、あの!そ、それこそ、早く逃げたい気分なんじゃ・・・」
そう。確かに、新妻薫の言う通り、犯罪を犯した人間はすぐに逃げる。だが、あえて逃げない犯人も居るのだ。
「奪った金には相手の指紋が残っている・・・と考えたとするならば?」
触れた物には誰かの指紋がつくのだ。そして、その指紋で誰が犯人なのかも、分かるようになってきた日本の科学力や技術力、その他もろもろ。
「!そ、そっか!だから、そのお金で買い物をして、お金をどこかのレジに入れ、証拠を隠滅しようとしていたんですね!」
「そういう事だ。衣類や布で指紋を拭くとしても、その繊維が証拠となるかもしれないと自分が絶対に犯人と断定されないように恐れていたとも考え、犯人はその行動をとった・・・と推測出来る」
「「おーっ!!」」
二人は無邪気な笑みを浮かび、またもオレの顔に顔を近づく二人・・・その距離はわずか3センチ。近すぎるだろう!オレは再びそっぽを向いて、二人に申し訳無い気持ちを込め、口を開く。
「・・・近いから、少し離れてくれ・・・」
「「ご、ごめんなさいっ」」
二人は顔を赤くしながら、モジモジと身体を動かしているのだが、一体どうしたというのだろうか?女の気持ちが未だに分からないオレなのであったーーー。
後日談。
推理ショーを篠崎楓と新妻薫に披露した翌日・・・朝から緊急集会が行われ、体育館に集まる全校生徒。
校長が話があると代表して全校生徒の前に立ち、マイクを口元へ近づけた。
「『え~・・・ごほん。一昨日、--デパートで、中学生三人に恐喝してお金を奪い、そのお金でデパートの商品を数品買って出て行ったという犯罪を、この学校の生徒が行ってしまいました・・・つきましては・・・』」
・・・・・・どうやら、オレの推理が当たってしまったようだ・・・
驚きすぎて、思考回路がショートしてしまったオレが行ったリアクションは
「・・・フッ」
笑うしかなかったのであったーーー。




