第13話 ベタベタな転校生フラグには夢がある!
ナンパされていた女の子を助け、数日が経ったある日。
オレが在籍しているクラスに転校生が来ると担任から知らされ、早くも興奮するクラスメイト達。
「男かな!?女かな!?」
「早く来てくれないかな!?」
「可愛い女の子がいいなぁ、ボクとしては・・・ドゥフフフ」
教室の中で、クラスメイトはワイワイと騒いでいた。
「神谷くん、楽しみだね」
篠崎楓もその内の一人だ。篠崎楓は、微笑みをオレに向けた・・・が、顔を赤くしてそっぽを向いた。オレ達は恋人関係になったのはいいが、慣れない。だから、呼び名も相変わらず、名字で呼び合っているのだ。
「クラスに馴染めればいいが・・・」
オレはこれから来るであろう、転校生の心配をする。もしも、イケメンの男だったら、絶対に男子から嫌われるだろう。オレのクラスは・・・特に男子は、女に飢えた猛獣しか居ないので、モテそうな男が天敵なのだ。逆に、美少女でも、同じような事が言えるだろう・・・男子は、その美少女を囲い、あらぬ行動をしでかすかもしれないと・・・
「・・・転校生がイジメられそうになったら、助けてあげよう。篠崎も手伝ってくれるか?」
「うんっ!わ、私、神谷くんの役に立てる事なら何でもするよ!だ、だって、わ、私、神谷くんの、か、か、かかかか、彼女だから・・・はぅっ」
篠崎楓はオレと共に転校生を守る決意をするのだが、顔が真っ赤にさせ、頭からボフンと湯気が出て、思考回路がショートしてしまった。
その事を見かねた、今は篠崎楓の鞄にぶら下がっているドラゴンの魂が入った真紅の竜のぬいぐるみはというと・・・
「『ガキ!ご主人様に、何をしやがった!返答次第で、お前を骨ごと燃やすぞ!』」
ジタバタ動いて、怒り奮闘なご様子。もちろん声は、オレと篠崎楓にしか聞こえない。
「だ、だ、ダメっ。そんな事したら、怒るよっ。それと、あんまり動かないでっ」
篠崎楓はぬいぐるみに向かって小声で叱る。傍から見たら、ぬいぐるみに話しかけるファンシーな乙女だろう・・・う~む、面白い。
「『ガウゥ・・・』」
ぬいぐるみは動かなくなった。ご主人とペットの間に上下関係が酷くなったのが非常に面白い光景なのだが、オレはそっとしておく事にした。やはり、篠崎楓は怖い。ドラゴンをビビりさせるのだ。こんな事が出来る女は篠崎楓ただ一人だろう。
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しばらく、転校生を待ち続け、ようやく一時間目の授業が始まる前の時間になり、教室の扉が開き、オレのクラスの担任が姿を現し、担任は扉を閉めた。
「おはようございます」
担任は挨拶し、オレ達も挨拶を交わし、担任はしばらく雑談。クラスメイトは転校生の紹介を、今か今かと待ち侘びていた。
「ーーーという事で、このクラスに転校生が来る。どうぞ~」
担任のやる気の無い声は転校生の耳に入ったのか、教室のクラスメイト全員は一斉に教室の扉を見た。すると、扉が開かれ、転校生の姿が現れようとする。
「お、お、おおおおー!」
クラスメイトのオレ以外の男子全員は立ち上がり、万歳をして喜びを身体で精一杯表現していた。だから、オレには転校生の姿が見えなかった。
「ええい、座らんか!」
担任は男子に説教。だが、興奮している男子には聞こえていないらしく、立ったままで居た。
「こ、怖いです。皆さん、落ち着いてください」
転校生らしき人物が声を出し、クラスメイトを落ち着かせる。だが、どこかで聞き覚えのある声だったような気がした。しかし、転校生といえば、どこか遠くの地域からやって来るだろうから、それは無いだろう。
ーーオレはそう思う事にした。
「・・・」
男子は座って、ようやくオレも転校生の姿を見れるようになった。だが、その姿に見え覚えがあったのだ。
ーーま、まさか、アイツは!?
「私は、新妻薫です。よろしくお願いします」
転校生は女の子。メルティショートと呼ばれる髪型でッシュベースにした顔の周りが、小顔に導き、その顔は美形。スタイルは細いし、身長が低いからか、可愛さを猛烈に感じるだろう魅惑が出ている。
ーーあ、あの時に、助けた女の子?!(※第12話参照)
転校生は淡々と自己紹介し、クラス全員の顔を確かめる為に、辺りを見渡し・・・オレを発見。
「・・!あ、あ、あなたは!あ、あの時の!」
ーー・・・転校生にフラグが立ってしまった・・・・
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転校生の紹介が終わった直後の授業が終わり、休み時間。
転校生の周りに早速、人が集まっていた。だが、その転校生は、それらを無視して、オレの元へと近寄ってきた。
「あ、あの!お久しぶりです!覚えていますよね!」
目をランランと輝かせる転校生。チラリと篠崎楓を見たら、首を傾げ、知っているのか?と言いたそうな顔をしていた。
「あ、ああ・・・あの時の女の子と同一人物だったら、の話だが・・・どうも、そうらしいな」
「はい!その女の子と同一人物です!私が証明します!」
転校生は無邪気な笑みを浮かべ、オレを見つめていた。
「ねぇ、神谷くん。その人、誰?」
テンションが高い転校生を見た篠崎楓は首を傾げ、転校生とオレとの関係を知りたいご様子なのだが・・・何故か恐怖を覚えたのは気のせいだろうか?
「ああ、この人は・・・---」
オレは篠崎楓に、この前起こった出来事を包み隠さず、もちろんレイの事は言わずに説明した。転校生はコクリコクリと頷いて、オレの説明に真実だという事を肯定し、証明してくれた。
「うふふっ。誰に対しても、優しいんだね。神谷くんって」
ようやく優しい篠崎楓に戻った篠崎楓。その顔には笑みを浮かべ、オレの話に納得したようだ。
「そ、それで、お願いがあるんですが・・・」
転校生は、顔を少しだけ赤くし、身体をもじもじとさせ、オレのお願いがあるというのだが・・・オレに可能な事なら何でもするつもりだから、心の準備を済ませ、転校生の願いを聞く。
「わ、私と友達になってください。ほら、転校して来たばかりですし・・・」
その願いなら容易い。オレは微笑み、頭を頷ける。
「ああ、分かった」
「・・!ありがとうございます!」
転校生・・・いや、友達になったから新妻薫と言おう。新妻薫は無邪気な笑みを浮かべ、オレと友達になれた事を嬉しがっている。
「あと、篠崎もよろしくな」
「はいっ、分かりました!よろしくお願いします、篠崎さん」
「あ、は、はいっ。こちらこそ、よろしくね」
転校初日から一気に二人も友達が出来た事が嬉しい新妻薫は、更に笑みを浮かた。オレ達に心を開いて、オレ達を歓迎していくように・・・
「改めて、自己紹介をします。私は、新妻薫です。よろしくお願いします」
「オレは、神谷直斗。こちらこそ、よろしく」
「私は、篠崎楓。よろしくね、新妻さん」
オレ達は自己紹介し、親睦を深めるのであったが・・・
「おのれーっ!神谷ーっ!」
「爆発しろ!今すぐ、爆発しろ!はい、ドカン!」
「い、い、いいなぁ、ハーレム状態だ~・・ドゥフフフ」
男子による憎しみの視線を浴びるオレなのであったーーー。
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放課後。
「私、この辺りに引っ越してから転校して来たばかりですし、しばらく荷造りを解くのを手伝わないといけませんので、帰ります」
新妻薫と別れ、オレと篠崎楓はオカルト研究部の部室へと向かい、到着。
「・・・はぁ、とんでもねぇ体験だ・・・」
オレは学生鞄を長机の上に放り投げ、イスに座り、身体を机に預け、疲れを癒す。
「『どうしたの?直斗。何だか疲れているね』」
レイはオレの様子を見て、心配してくれる。だが、心配しているからといって、オレの腕にいちいち抱き着くのはどうだろう?人の彼女の前でやたらとベタベタしないで欲しい。
「・・・まぁな」
篠崎楓は、いちゃいちゃしているオレ達を見て、睨む。こ、怖い・・・とは口が裂けても言えない。しかし、嫉妬しているのではないか?と思い、篠崎楓に向かって手招きし、オレの手招きに気付いた篠崎楓は、首を傾げ、オレに近寄った。
ーー今だ。
オレの脳裏にある命令がくだされた。オレの身体は、その命令通りに動いた。
「・・!!」
オレは、立ち上がって、篠崎楓を抱きしめた。立ち上がりの動作でイスは倒れたが、関係無い。抱きしめてしまったのだ。篠崎楓の身体を、己の腕で回し、抱きしめたのだ。
「すまんな、こんな事しか出来ないが、許してくれ」
篠崎楓を抱きしめてしまったので、顔は見れない。だが、オレは強く抱きしめるしかない。強く抱きしめたら折れてしまうのではないか?と思える程、細くて小さい身体を。
「『が、ガキ!よくも、オイラのご主人様を!』」
「『お、落ち着いて!いいから、落ち着いて!』」
暴れるぬいぐるみをレイが落ち着かせているのは、オレ達の眼中に無い。オレは、篠崎楓を抱きしめて落ち着かせるしかないのだ。
「ぅ、ぅ、うんっ。ゆ、ゆ、許してあげる・・・」
篠崎楓は、オレの身体に腕を回し、抱きついてしまう。
ーーああ、温かい。柔らかい。癒される。
女の子独特のいい匂いに、頭がおかしくなりそうだ。
ーー妹の唯とは、何かが根本的に違う。
妹である唯を、妹のワガママで仕方無く、よく抱きしめるが・・・
ーードラゴンとの戦い(※第9話参照)で、『好き』という感情が芽生えた
全然、抱き心地が違う。ずっと、オレの傍に居させたい。この気持ちが、胸いっぱいに広がっている。
ーーだが、理由なんてどうでもいい。『好き』になった理由なんてな・・・
だから・・・今だけ・・・ほんの数分だけでもいい。少しだけ、この気持ちに対する行動を・・・
ーーオレは・・・篠崎楓を・・・『好き』になった・・・ただ、それだけ。
この抱きしめるという行為を・・・許して欲しい。そして、これからも、傍に居たいから・・・
ーーだからこそ・・・伝えよう。
だからこそ・・・伝えよう。
ーー『好き』だ。
「好きだ」
ーー伝えた。想いを、伝える事が出来た。
オレは、篠崎楓に告白した。もちろん、愛の告白を・・・気持ちにウソをつかずに・・・
篠崎楓は、まだオレに抱きついていた。顔を見せないようにしている。オレも今の顔を見られたくない。今のオレの顔は真っ赤だ。こんな所を見られると、ダサいと言われるだろう。
「ゎ、私も好きっ」
篠崎楓は、ハッキリと、伝えた。オレに伝える事が出来た。
オレ達は、告白し、めでたく、両想いとなったのであったーーー。




