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第9話 悪霊にも種類がある!

「参ったな・・・マジで、どう見ても、アレだな・・・」

オレは悪霊退治の為、我が校の運動場に居るとされている悪霊を退治しようと、運動場に赴き、いざ、ソイツが目の前に現れると、正直言おう。小便チビりそう。

何故なら、ソイツの姿がこの世のモノとは思えない存在だからだ。幽霊だから、当たり前の表現だろうが、ハッキリ言って、幽霊なんてソイツと比べたら可愛いものだ。

ソイツは・・・伝説の生き物だからだ。

トカゲに似た、或いはヘビに似た強く恐ろしい伝説の生物で、鋭い爪と牙を持ち、多くは翼を備え、空を飛ぶとされるという・・・

まるで・・・いや、ドラゴンそのものだ。今、そのドラゴンがオレの目の前に現れたのだ。

体長二十メートルはくだらないだろうデカい巨体。真紅の固そうな肌。ヘビのような鋭い目。全てを噛み砕けるようなデカい牙。全てを裂けるような鋭い爪。大きくて堅そうな尻尾。鼻から火がチョロっと出て、コイツは火を扱うのだろうと簡単に思えるドラゴンだ。

「・・・でっっけぇぇぇなぁ」

オレはソイツを下から上へと眺め、その姿を目に焼き尽くす。一生に一度も会えないだろう、伝説の生き物に興味津々なオレ。

「『ギャャャオ!!』」

そのオレに気づいたドラゴンは大きな口を広げ、咆哮。その威力は地震が起こったのか?と疑いたくなる程に地面が揺れ、学校に窓が割れるというポルターガイスト現象を起こしてしまったのだ。そのおかげで学校に残っていた者達はパニックになっていた。

これ以上の被害を起こしたくないので、素早く退治する事にしたオレは、両手を天高く上げ、ドラゴンへ向ける。

「降り注げ、猛吹雪ブリザード

この技は最終奥義である。名前の通り、猛吹雪が天から降り注ぎ、その雪に触れた悪霊はたちまち凍り、すぐに砕け散るのだ。もちろん、霊感が無い人にも雪が見えてしまうのが欠点だ。

「『ギャャャオ!』」

ドラゴンはオレの近くへ近寄るが、雪に触れた。そして、たちまち凍る・・かと思いきや、凍らないのだ。

「な!!?」

驚きを隠せないオレ。それもその筈、いきなり切り札を出したのに、全く効かなかったのだ。

「くっ!もっと、降れ!」

オレは冷気を最大限の力で操り、猛吹雪を振らせるが・・・ある異変に気づいた。

ジュゥ・・ジュゥ・・なんという事か、雪はヤツの体温で溶けていたのだ。故に、凍らないという事になるが・・・

「・・・フッ。天敵現れたな・・どうしたらいいだろう?」

オレは笑うしかない。諦めるしかなかったのであったーー。

ーーーーーーーーーーーー

一方、篠崎楓は・・

篠崎楓は外に出て、運動場の全部が見渡せて、しかも神谷直斗には見つからない場所へ隠れ、一部始終を見てしまった。

「・・・やっぱり、雪を操っている。神谷くんがジャックフロストだったんだ・・・」

篠崎楓は何とも言えない表情を浮かべつつ、運動場にいる神谷直斗の様子を伺っている。

「『・・これから、どうします?』」

今回の悪霊退治を頼んだ依頼主の幽霊は、神谷直斗の様子を伺いつつ、これからの事を聞きたがっていた。

「・・・どうする事も出来ないよ。私には戦う力が無いし、勇気も無いし・・・」

篠崎楓は冷気を操って悪霊を倒そうとしている姿を見つめている。非日常的出来事が今、目の前で行われているのだ。まるで漫画や小説のような出来事が自分の目で確かめられて、心が苦しくなっている。何故自分には戦う力が無いんだろう?守る力が無いんだろう?と・・・

「・・あっ!!神谷くん!!」

神谷直斗は冷気を操り、様々な技を繰り広げたのだが、火を操るドラゴンには勝てず、ドラゴンの大きくて、堅い尻尾で左腕と左腹を直撃され、うずくまってしまった。

「み、み、神谷くん!」

そんな神谷直斗の様子を見て思わず、走り出したのであったーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ち、ちくしょう・・・」

オレはドラゴンの尻尾攻撃に成す術も無く、モロに直撃をくらい、地面に倒れた。ダメージをもらったのは初めてで痛い思いをしたのも多分これで初めてかもしれない。ドラゴンの攻撃により、左腕と肋骨数本は折れた・・・痛い、痛い、痛い。

「『ギャャャオ!』」

ドラゴンは大きな口を開き、顔を天に向け、口から火を溜めている。どうやら、トドメを刺すようだ。

「・・フッ。焼くなり煮るなり、好きにしろ、ってね」

オレは生きるのを諦め、笑みを浮かべ、目を閉じた。どうせ死ぬなら、笑って死んだ方がいいだろうし・・・すまねぇな、篠崎楓・・・レイ・・・そして、我が愛しの妹・・唯よ。

ドラゴンは大きく息を吸いながら、火を溜め、その火を放出・・するかと思いきや

「や、や、やめてぇー!!!」

両手を広げ、ドラゴンの攻撃を阻止しようとする篠崎楓の姿が現れ、一時中断。って、篠崎楓!?な、何故ここに居るんだ!

「ばっ、バカ野郎っ。早く逃げろっ、死ぬぞっ」

オレは初めて女子を罵倒した。だが、今はそんな状況ではない。

「い、い、イヤだっ!絶対にイヤだっ!うぅぅ・・・」

篠崎楓は号泣しながら自分より何十倍もの体長があるドラゴンの前に立っている。篠崎楓よ・・オレは根性がある女は好きだ。しかし、そんな女を殺させたくは無い。

「ダメだっ、早く逃げろっ。今ならまだ間に合う!」

「い、イヤだっ!」

泣きながら強情を張っている。こうなれば、レイを憑依させて、無理やりにでもどこかへ行かせるか?おい!レイ!聞いているか!?返事しろ!

オレの心の叫びは、届かなかった。どうやら、レイはドラゴンの攻撃で気絶していた。

「チッ、万事休す・・か」

ドラゴンは火を放出するからか、顔をこちらへと向けた。ここまでか・・と思いきや

「・・・火を放出しない・・?だと?」

火を口に溜めたままピクリと動かないでいた。そして、いつの間にか現れた篠崎楓の存在に気づき、篠崎楓に近づき、顔を篠崎楓の近くに寄せ、鼻で匂いを嗅いでいた。

篠崎楓は恐怖のあまり、身体をガタガタ震わせ、涙を大量に流してしまう。

匂いを嗅ぎ終えたのか、ドラゴンは篠崎楓の姿をじっと見つめる。

オレがここで攻撃を仕掛けると警戒して篠崎楓に危害が及ぶ可能性があるので、オレはそっと見守っていた。もちろん、いつでも攻撃が出来る準備をしてな。

「うぅぅっ・・ヒック・・グスッ」

篠崎楓は恐怖で泣いてしまっているが、何も仕掛けない。いや、仕掛けられないでいた。恐怖で身体が動かないであろう。

しばらく、ドラゴンが篠崎楓を見つめていると、ドラゴンにとんでもない異変が起きたのだ。

「『か、か、可愛い』」

喋った。ドラゴンが喋ったのだ。喋ったのは気のせいだろうか?うむ、気のせいだろう。

「『お、お、オイラを、ぺ、ペットにしてくれても、い、いいぞ』」

「・・・・・・・」

絶句。言葉も出ないとはこの事だろう。ドラゴンが喋ったから、当然だ。

「・・・・へ?」

今の現状をようやく理解し、言葉を喋れるようになった篠崎楓。だが、頭が混乱しているようだ。

「『な、な、何度も言わせるなよ・・・だ、だから、お、オイラをペットにしてくれても、い、いいぞ、って言ったんだよ・・・』」

ドラゴンは頬に朱を染めて左手の指と右手の指を合わせつつ、目線をチラチラと篠崎楓に向ける。ひょっとして、コイツ・・・

「・・ペットにして欲しいって事か?この篠崎の・・」

オレの質問にドラゴンはコクリと頷く。やはりか、やはりコイツ、マゾだ!

「・・・神谷くんを傷つけたから、イヤ」

「『ガーン!』」

ドラゴンは頬に両手を添え、絶望的な悲しみの表情を見せるのだが・・リアクション古いな。さすがは伝説の生き物、年季が入っているな。

「『じゃ、じゃあ、コイツのケガを治したら、いい?』」

ドラゴンはオレを指差す。コイツとは何だ!コイツとは!

「で、出来るの?そんな事・・・」

篠崎楓は眉を八の字にして、首を傾げる。

「『ま、任せておけ!お、オイラには、ケガを癒す能力があるんだ!』」

篠崎楓の首を傾げる仕草に翻弄されたドラゴンは謎の力で、オレの身体に触れ、傷を癒す。

「・・ん?お~?治ったーっ」

オレは立ち上がり、ジャンプしたり、走ったりして傷の治りを確かめるが、本当に傷を癒しやがった!このドラゴンすげぇ!

「『それで!?それで!?お、オイラを、ぺ、ペットにしてくれる!?』」

ドラゴンは興奮気味で鼻から火を出しながら鼻息を出している。コノヤロウ、ご褒美で蹴りか何かを期待しているな?マゾだから。

「・・・神谷くんに謝って。ケガさせてごめんなさいって」

「『わ、分かった!そこのガキ!ケガさせてごめんなさい!』」

ドラゴンの適当な謝り方にイラついてしまうオレ。ドラゴンは長生きとされているから、ドラゴンにとっては人間はガキだろうが、だからと言って、ガキ呼ばれされる筋合いは無い。

「『はい、済ませたよっ!で?で?ぺ、ペットにしてくれる?!ねぇ、ねぇ』」

ドラゴンは興奮気味で篠崎楓の肩を軽く掴み、軽く揺らす。

「・・・それと、あの建物はちゃんと直せる?」

篠崎楓よ・・・意外としっかりしているな・・・篠崎楓は学校を指差し、学校を元に戻せと命じるとは・・・いや、そのままにしておくのも大騒ぎになるのでその意見には賛成だ。

「『わ、分かった!あの建物も直すよ!ま、待っててね』」

ドラゴンはドシドシと大きな足音を出しながら、校舎へと向かう。どうやら、ドラゴンは生き物だろうが、建物だろうが、傷がついたモノを癒す能力があるみたいだ。コイツは使えるぞ!

「篠崎、アイツをペットにしろ」

「ええ!?む、無理だよぅ!」

篠崎楓にドラゴンをペットにしろと頼むが、否定。ドラゴンは学校を直すのに一苦労してして、オレ達の話は聞こえていない。

「大丈夫、アイツは悪霊だが、いいヤツだ。見たろ?オレを助けてくれた事をさ」

「う、うん。で、でも・・・」

篠崎楓はまだドラゴンの存在を受け止めきれないらしい。

「それに、ドラゴンをペットにしているなんて、篠崎くらいしか居ないじゃん。面白すぎるだろ?」

「ま、まぁね・・ドラゴンなんて、空想上の生き物だしね」

ドラゴンのペット化に、心を惹かれる篠崎楓。よし、もう一息だ。

「・・この事は、オレと篠崎の二人っきりの秘密な?・・あ、ついでにレイもいるがな」

「ふ、ふ、ふふ、二人っきりの秘密ぅ?!!」

篠崎楓は顔を真っ赤に染め、目を見開き、手を口元に添え、顔の表情を読み取れないようにした。しかも、バフンッという音と共に顔から湯気が出てしまったのだ。

「ぇ、ぇ、えっと・・・そ、そ、それなら、いいかも・・・」

篠崎楓は俯きながら身体をもじもじさせ、ドラゴンのペット化に賛成の意を表した。これにて、オレ達オカルト研究部の部員が一人増え、これから起こるであろう面白い出来事に期待しつつ、ニヤつくオレなのであったーー。

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