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新政権発足

「右の結果、衆議院規則第18条第2項により、本院において多田道雄君を内閣総理大臣に指名することに決しました。」


 国会では進歩党・新自由党により進歩党党首の多田が総理大臣に任命された。両党の首脳からなる組閣委員会は順調に協議を進め、新政権の官房長官となった進歩党幹事長の辻により、閣僚名簿が発表された。新自由党代表の藤川は副総理として遇され、民間からは帝都大学の松本教授が経済財政再建担当相で入閣し、耳目を集めた。また、山下選対委員長は財務省出身者であることを買われ、財務相に、三国パートナーシップを進める外相には岡島議員、厚労相兼少子化担当相には女性で一番総理に近い人物と評される片岡議員がそれぞれ任ぜられた。

 その日のうちに認証式を済ませ、多田進新連立政権は正式に発足したのだった。


多田新総理の所信表明演説を控え、政界はこの若い総理が何をどのように演説するのかに注目していた。

マスメディアも街角の声や評論家の意見を交えながら、この内閣がどのような性格かを論じていたが、総じて好意的なものであったといえる。マスメディアはこれまでも財政再建の早期着手を訴えてきたこともあり、それに取り組むと明言して勝利した進歩党の政策が実現できるのかどうか、もはや論点はその点に移っていた。


「...我が国は早期に財政再建に取り組み、少子化を食い止めねば、未来はありません。与党、そして野党の皆さん。また、全国民の皆様に訴えたい。どうか財政再建の取り組みにご理解をいただき、また、少子化対策に重点を置くことをご承知いただきたい。財政再建なくして経済成長はありえません。まずは、社会保障費をゼロベースで見直し、しかるべき後に税制の抜本的改革も行います...」


大方の予想通り、財政再建、社会保障の見直し、税制の改革を訴えた所信表明演説に意外感はなく、多田内閣の方向性はこれまでの進歩党の主張に沿ったものと捉えられた。新自由党代表の藤川副総理は、内心で自党の内部で不満が出るだろうと所信表明を聞きながら思いを巡らせていた。

「多田内閣が勢いのあるうちはいい。だが、一旦落ち目になった時に自分にどれだけ自党を抑えられるだろうか。新自由党の内部には人民戦線に未だ近い考えを持っているものも多い。その勢力は社会保障の見直しに猛反発をするだろう。その時、多田内閣はどうなるのだろうか…」

藤川の懸念をよそに、議場は多田の演説に対する与党の拍手で覆われていたのであった。

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