馬鹿な子供に救いの祈りを
急に思い立ったので書いた。
ちなみにこの「少年」とは以前投稿した「異なる世界の空の下」の主人公、リクセル・フォーマットのことだったりします。
「殺してやろうか」と、其の男は言った。
「殺されてやろうか」と、俺は笑った。
男はそんな答えを返した少年を一つ殴って「この死にたがりが」と怒鳴った。
でもその少年は、俺は其れを哀しいとは思わなかった。否、思えなかったのだ。
ただ、漠然と自分の為に男が怒っているのは解った。其の気持ちはきっと有難い事なのだろう。ただ、なんとなくそう思うだけで、それでも少年は痛いとも、自分が悪いとも感じれなかった。感情は既に凍りついている。
ただ今の自分は怠惰に息を吸い、食物を摂取し、己が身を保っているに過ぎない。
「バカヤロウ」
大きなネコみたいな顔をくしゃくしゃにして、男は辛そうに眼を細め、眉根を寄せた。
其れを不思議そうに見る少年の眼差しが痛いなと、男は思った。
「何故そんな顔をする」
「お前が馬鹿だからだ」
そしてぐしゃぐしゃと少年の黒い髪を掻き混ぜた。
「そうか、俺は馬鹿か」
淡々と呟く唇。灰色の目には諦めに似た何かが浮かんでいた。
「ああ、大馬鹿だ」
いつか、気付く日がくればいいのに。
お前は生きていてもいいのだと。
祈るような気持ちで男はそれだけを願った。
了
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