表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最後の戦場シリーズ

馬鹿な子供に救いの祈りを

急に思い立ったので書いた。

ちなみにこの「少年」とは以前投稿した「異なる世界の空の下」の主人公、リクセル・フォーマットのことだったりします。



 「殺してやろうか」と、其の男は言った。


 「殺されてやろうか」と、俺は笑った。


 男はそんな答えを返した少年を一つ殴って「この死にたがりが」と怒鳴った。


 でもその少年は、俺は其れを哀しいとは思わなかった。否、思えなかったのだ。

 ただ、漠然と自分の為に男が怒っているのは解った。其の気持ちはきっと有難い事なのだろう。ただ、なんとなくそう思うだけで、それでも少年は痛いとも、自分が悪いとも感じれなかった。感情は既に凍りついている。

 ただ今の自分は怠惰に息を吸い、食物を摂取し、己が身を保っているに過ぎない。


 「バカヤロウ」


 大きなネコみたいな顔をくしゃくしゃにして、男は辛そうに眼を細め、眉根を寄せた。

 其れを不思議そうに見る少年の眼差しが痛いなと、男は思った。


 「何故そんな顔をする」


 「お前が馬鹿だからだ」


 そしてぐしゃぐしゃと少年の黒い髪を掻き混ぜた。


 「そうか、俺は馬鹿か」


 淡々と呟く唇。灰色の目には諦めに似た何かが浮かんでいた。


 「ああ、大馬鹿だ」


 いつか、気付く日がくればいいのに。

 お前は生きていてもいいのだと。

 祈るような気持ちで男はそれだけを願った。


                     了

ご覧頂き有難うございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ