小話(黒沢視点)
黒沢君にカッコよさはもとめていないです。
戸村が「だるいから」と言って、保健室に行ったのは昼休み前。今は放課後だ。
本当に体がだるいのか、気分的にだるいからなのかはどうでもいいが、寝すぎだ。
荷物を持って、戸村を起こしに保健室へ来たら扉から女の子が出てきた。
よけると思っていた相手は、そのままぶつかって尻もちをついてしまった。
シャツの襟もとは緩めてあり、リボンもしていない。
顔は、真っ赤に染まっていて髪も乱れていた。
自分にぶつかってこけてしまったのだから、助け起こさなければ。
頭ではそう思っていても、俺の視線はある一点からはずせず、動けなかった。
「ご、ごめんなさい、すみません」
ハッと気付いた時には、そう言って女の子はあわてて立つと走り去ってしまった。
俺がどこを見ていたか、気付かれたからか?
俺はこけてしまった拍子に、見え隠れする彼女の足元を見ていた。
色は、白だった。
一瞬 目の前をあの白がちらちらとよぎったが、今は戸村を起こそうと保健室に入った。
戸村はすでにベットから出ていた。なんだかずいぶんとすっきりした顔をしている。
「ずっと寝てたのか?」
「いや、ちょっとした運動をしてた。」
そう言ってにやりと笑う。
ちょっとした運動・・・さっきの女の子の様子を思い出し、ふたりがここで何をしていたのかに気づく。
「お前場所を考えろよ」
「わかったよ、そんなにおこることか?」
「当たり前だ」
相手も相手だ、いくら誘われたからといって、こんなところでするべきじゃない。
全然反省していない戸村の様子を見て、相手の女の子にも注意するべきかもしれない。
確か保健室の利用者は用紙に記入しないといけなかったはずだ。
そう思って、用紙を見ると今日は戸村を合わせて2名しか利用者はいなかったようだ。
1-3 鈴木 要
きっと、あの子だろう。そう思ってさっきの女の子を思い浮かべる。
自分がでかいせいもあるが、ずいぶん小さい子だったように思う。
体も華奢で、きっと軽く持ち上げられるだろう。顔もなんだか幼い感じで・・・。
でも、意外に胸はあったよな。ぶつかったとき、なんだか柔らかかったし。
目の前にまたあの白がちらちらとよぎった。
そんなことを考えていると、強い視線を感じた。
隣で戸村が俺を不審そうに目を眇めてみていた。
「おまえってむっつりすけべだよな、今やらしいこと考えてただろ」
「・・・べつに。」
「お前の場合、表情には出てないけど、空気がピンクになるんだよ」
「・・・」
「スケベなくせして、奥手だし。女の子は柔らかくて気持ちいいのに」
そんな会話のせいで、彼女 鈴木要と話すとき自分相手に乱れるさまを想像してしまい、挙動不審になってしまった。
その後、鈴木より呼び出された際の黒沢の態度が
「不気味で怖かった」
と言われ、かなり落ち込むことになるのを彼はまだ知らない。
でも、本当はもっとすごい想像してるんだろうなぁ。
力及ばず。