我慢できない、とめられない、たってられない
「黒沢、今からお前におもしろい話きかせる。」
戸村君はそういうと、私に視線を向けた。
「昨日、保健室にいたのって鈴木さん?」
昨日の保健室での出来事を思い出して、顔に熱がこもる。
「・・・はい。」
「黒沢にぶつかったのも鈴木さんだよね?」
「はい。」
「どうして保健室にいたのか、教えてくれる?」
「・・・」
言いたくない。お弁当に夢中でボールを顔面キャッチしたなんて。
「恥ずかしくて、言えません。」
戸村君は私の返答を聞いて、ぎょっとしている。
「戸村、お前最低だな」
それはそれは低い声が響いた。そっと黒沢先輩をうかがうと、昨日見た形相が再び視界に入った。
ひゃー、すごい怒ってる。
でも、どうやら怒りの対象は戸村君のようだ。
戸村君は、あわてて走り出した。それより、黒沢先輩は速かった。先輩のこぶしが戸村君の脇腹に吸い込まれていく。
ああ、あれはしばらく息できないだろうな。先輩も、一応手加減したみたいだけれど。
戸村君は、その場でしゃがみこんでいた。
悶絶。その一言に尽きる。
「あの・・・先輩暴力は」
目の前で繰り広げられた暴力に、思いっきりびびりつつ止めに入る。
「足、止めるためだ。話はおわってない。」
いやいや、しばらく話せないと思うんですけど。
そう声に出そうかどうか迷っている間に、戸村君がばたりと倒れてしまった。
「とりあえず、保健室に運びましょうか、先輩。」
「・・・」
なんとも言えない空気が先輩と私の間に流れた。
先輩が放ったのはリバーブロー。別名肝臓打ち、ってまんま。ものすごく痛いらしい。