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どっきり

「せ、先輩・・・」


口から出た自分の声が、思いのほか震えていたことに驚き言葉が続かない。

そもそも、この状況について説明したいが私自身良く分からないのでどうすることも出来ない。

必死に言葉を紡ごうと考えるが、頭の中が高速で空転中だ。


状況に対応できず、佐々木弟(推測)に抱きしめられている私のところへ、先輩はずんずんと近づいてくる。

その間先輩は無言、無表情だ。

いつもは眉間にあるしわも、今は無い。顔の筋肉に力が入っていないせいか、普段より今の方が怖くない。こういってはなんだけど普通だ。

以前見たときの様にあわてるでもなく、戸村先輩に対して見せた憤怒の表情もしていない。

落ち着いている様子の先輩を見たら、今まで空転していた頭がやっと歯車が合い回りだすのが分かった。

そう、この男の子は寝ていて、私の腕力では引き離せないこの男の子を先輩なら運べるだろう。

戸村先輩を殴ってしまったことから、案外手が出るのが早いと思っていた先輩だが、さすがに年下の寝ている男の子を殴ったりはしないよね。

目が合った瞬間は、問答無用でこの男の子を殴るかと思ってしまったが、見る限り先輩は冷静そのものだ。

先輩が私たちがいるソファーの前まで来たころ、遅れて佐々木が部屋に入ってきた。


「あれ?ヒロきてたのか?そんなところでなにっ・・・!?」

喋っている途中でソファーに居る私たちが見えたとたん言葉が途切れた。

香恋ちゃんはでかい二人の男に阻まれて全く見えないが、おにーちゃん?と呼びかける声だけは聞こえる。


佐々木に気を取られていた私は気付いた時には、抱きしめる腕から解放されていた。


「ちょっ!まてまてまて!!」


ほっとする間もなく、あわてた佐々木の声が部屋に響いた。


見上げると振りかざした腕を佐々木に必死に抑えられた先輩が目の前に居た。


「おい!お前も止めろ!!」

佐々木がこちらに向かって叫んだ。

あわててソファーから立ちあがり、まだ寝こけている男の子をつかんでいる先輩の腕に抱きつく。


「せっ先輩!暴力はダメですよ!暴力は!!」


「・・・」

無言のまま先輩に見下ろされ、思わず腕に力が入った。

しばらくすると先輩は男の子をつかんでいた手を離す。


その場にいた寝ている男の子と先輩以外が、ふぅっと安堵のため息をついた。


根がまじめな先輩だから、こういった状況を見たら怒るかと思ったけど、案外冷静なんだ。

なんて思った私のばか。

この人はあれだ。普段の表情怖いけど、本当に怒ったときは無表情になっちゃうんだ。

どんなドッキリだよ。



ほんと、眉間にしわを寄せていない先輩に見つめられて無駄にドキドキしてしまったじゃないか。





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