震える身体
気がついた時には、ソファーに押し倒されていた。
身の危険を感じても、すでに遅い。
予想外の出来事に、必死でもがくがこれまた体格差のせいかびくともしない。
そうこうしているうちに、するりと体に腕が回され抱きしめられる。
「ちょっ!?は、離して!!」
状況の悪化に叫ぶが腕の力は緩まず、うなじに息がかかった。
首筋に鼻先をこすりつけるように押し付けられ、大きく息を吸う音がした。
「ぃいにおい・・・」
ひぃいいいいいいっ
ぞわわわと震えが体に走り、声にならない悲鳴がのどの奥でひゅっと鳴った。
体が硬直する。
ジワリと目に涙が浮かんでくる。
「ど、退いてよ!」
一生懸命相手の腕から体を離そうともがくが、上にのしかかるように覆いかぶさっている相手をどうすることも出来ない。
一刻も早くこの腕の中から出たい想いでもがく。
「変態!離して!!」
声が普段の自分からは想像できないほど震えて悲鳴に近い。
泣きだしそうなのを理性で必死に抑え、もがいていたら違和感に気づく。
「嫌だって、ば・・・ん?」
すぅすぅと首筋にかかる一定のリズムを刻む息。
抱きしめてから、一切動かなくなった腕。
私にのしかかった力を抜いた体。
寝てる?
というより、熟睡してる?
そのことに気付いた時だった。
すごい勢いで扉が開いた。
驚いて出入り口を見るとはぁはぁと息を切らした黒沢先輩が立っていた。
目が合った瞬間、先輩の目が見開かれる。
ま、またこのパターンですか!?